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中長期的な金の役割を捉える視点が重要な局面
2026/04/23

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概要

・金への投資需要の背景にある、中長期的かつ構造的な要因は変わらない
・資産保全のための分散投資を念頭に、中長期的な視点で金投資を行うことが重要



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有事における金価格の下落と、その背景

2026年2月末以降の米国・イスラエルとイランの軍事衝突を受けた中東情勢の緊迫化(以下、イラン戦争)は、金融市場全体に大きな変動をもたらしました。一般的に「有事の際には安全資産として金に資金が流入する」との見方が市場で意識されていたものの、実際には金価格は一時的に大きく下落しました。この背景には、イラン戦争を受けた金融市場の反応が、必ずしも「リスク回避=金買い」一辺倒ではなかったことがあります。イラン戦争により原油価格が急騰すると、まず意識されたのはインフレが再加速する可能性でした。これにより、市場では米国の利下げ期待が急速に後退し、米国の短期金利が上昇するとともに、米ドルも主要通貨に対して上昇する展開となりました。金は実質金利の上昇局面や米ドル高局面では下押し圧力を受けやすい資産であることから、有事の際の資金の逃避先としての金への資金流入が本格化する前に、インフレ高進や金融引き締めに対する警戒が先行したことで、金価格にとって逆風となる環境が短期的に強まったと考えられます。さらに、金価格は2026年年初来で上昇基調を辿り、過熱感が高まっていたとみられることも価格下落を増幅させた要因であると考えられます。その結果、本来であれば地政学リスクの高まりという金にとって追い風となり得る事象が、今回は金利・為替要因を通じて金価格の下落につながるという動きが生じました。



■  情勢変化の先に意識される「次の局面」

もっとも、過去に原油価格が急激かつ大幅に上昇した場面では、金融市場において、その後の米国の景気後退が意識される局面を迎える傾向がありました。足元においても、原油高がもたらす影響はインフレ懸念にとどまらず、実体経済への下押しや財政への負担拡大といったリスクへと波及する可能性があるとみられます。景気減速の可能性が高まった場合、米連邦準備制度理事会(FRB)は景気支援を目的として緩和的な金融政策を維持することが想定され、米国の実質金利の低下や米ドルの下落といった環境変化につながる可能性があります。足元の金融市場では、このようなインフレ懸念の次に訪れる景気・財政不安を徐々に織り込む局面に移行しつつあると考えられます。

■  金を支える構造的な要因は変わらない

金価格の中長期的な上昇を支える要因については大きな変化はありません。まず、構造的な米ドルの下落トレンドは変化していないといえます。トランプ米政権下における予測不可能な米国の通商政策に対する不信感や、拡張的な財政に対する懸念などを背景とした「脱米ドル」の動きには大きな変化はなく、イラン戦争を受けた「有事の米ドル買い」とみられる動きはこれまでのところ一時的にとどまっています。

また、現物の金を裏付けとする投資商品への資金はイラン戦争を機に流出超となったものの、4月以降は流入超に転じており、金への投資需要には底堅さがみられます。金融緩和を通じた通貨供給量の増加やインフレの再燃に伴う通貨価値の下落リスクが高まる中、希少性の高い実物資産である金の資産価値保全の手段としての需要は健在であり、米国の実質金利が高止まりする環境下においても、戦略的に金に資産配分を行う動きは継続していると考えられます。



■  中長期的な金の役割を捉える局面

イラン戦争を受けて、金を取り巻く環境には短期的に大きな変動が生じました。イラン戦争の動向については依然として不確実性が高く、世界的なエネルギー供給に対する深刻な影響が懸念されることなどから、インフレ懸念を通じた金融引き締め懸念が一段と強まることで、金価格がさらに下落する可能性もあります。しかし、金価格の上昇を支えてきた構造的な要因は不変であるといえます。今後、景気減速懸念や財政拡張に伴う通貨価値の下落リスクに対する意識が強まることにより、資産価値を保全する手段として金に対する需要が高まるものと考えられます。短期的な値動きに左右される局面だからこそ、中長期的な金の役割を捉える視点が重要であるといえます。


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