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金価格の急落と今後の展望
2026/03/30

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概要

金価格は年初に過去最高値を更新しましたが、3月に入り急落しました。足元では短期的な市場要因が金価格の重しとなっているものの、長期的には地政学的リスクの高まりや世界経済情勢の変化を背景に、金の魅力は今後も続くと考えられます。



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最近の価格調整

金価格は2025年に過去最高となる年間65%のリターンを記録した後、2026年3月下旬の1週間で約11%下落しました。この下落率は、2008年の金融危機、ドットコムバブル崩壊、新型コロナウイルスのパンデミック時に見られたどの週次下落率をも上回る水準です。直近で同様の大幅な下落が見られたのは1983年であり、その背景にはインフレ抑制を目的とした米連邦準備制度理事会(FRB)による積極的な金融引き締めサイクルがありました。


金価格の200日移動平均線からの乖離率(%)

出所:Pictet Wealth Management, Bloomberg,、2026年3月24日時点

売り圧力の背景

売り圧力の背景として、景気循環的な要因は以下の3点です。第一に、中東のエネルギー価格ショックにもかかわらず、米国経済が堅調であると見なされたことから、米ドルが上昇しました。エネルギー価格の高騰は世界中の消費者に明らかに影響を与えますが、米国はエネルギーの純輸出国であるため、米国の貿易収支には悪影響を及ぼしません。こうした動きに加え、米ドルに対するショートポジションの積み上がりも相まって、イラン戦争の勃発以降、米ドルはG10諸国のすべての通貨に対してアウトパフォームしています。

第二に、金融政策に対する期待の見直しが重要な役割を果たしています。イラン情勢を巡る緊張の高まりにより原油価格が急騰し、インフレ懸念が生じています。これを受けて、多くの中央銀行当局者がよりタカ派的な姿勢を示しています。

第三の要因は、流動性要因による売り圧力です。最近の売り圧力は、過度に積み上がったロングポジションの強制的な清算によって一段と強まりました。これは、新興国市場、米国以外の株式および貴金属への投資を通じて表われている「ドル離れ」の動きにおいて、特に顕著です。資産クラスを横断したデレバレッジ、ボラティリティの上昇、流動性への懸念も、売り圧力を強める要因となっています。さらに、中東の中央銀行や政府系ファンドが流動性を確保するため、保有する金を売却せざるを得なくなる可能性があるとの見方もあります。これらの機関にとって、金は通常、戦略的資産配分において比較的高い割合を占めています。



長期的な見通しは依然として堅調

最近の混乱にもかかわらず、金の長期的な見通しは依然として堅調です。政策面や地政学的な不確実性は解消されておらず、むしろ高まっています。米国のリーダーシップや財政の持続可能性に対する懸念から、投資家や中央銀行は引き続き米ドルに代わる手段を模索しており、脱ドル化は今なお戦略的な目標となっています。

要約すると、金は特に不確実性が高まる局面において、依然として信頼性の高い価値の保存手段として機能し続けています。最近の価格下落は、市場環境や需給動向の変化を反映したものですが、金の長期的な重要性自体は、引き続き世界情勢や経済動向の影響を強く受けています。今後、地政学的緊張が緩和されれば、原油価格や金利見通しに変化が生じる可能性があります。一方で、経済情勢が悪化した場合には、中央銀行が金融・財政面での安定を維持するため、追加的な政策調整を行う可能性も考えられます。


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