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米国・イラン停戦合意を受けた市場見通しと投資戦略
2026/04/09

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概要

米国とイランの停戦合意(4月8日発表)を受けた、ピクテ・アセット・マネジメント インベストメント・ストラテジー・チームによる市場見通しと今後の投資戦略に関する考え方をご紹介します。



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今回の停戦合意は包括的ではあるものの、その内容にはなお一定の曖昧さが残っています。ただし当社では、本合意は維持され、中東地域における恒久的な緊張緩和へとつながる可能性が高いと考えています。ここには、通行料制度の導入を伴う可能性はあるものの、ホルムズ海峡の全面再開が含まれます。

合意を最適なものと見なさない国々、主にイスラエルおよびサウジアラビアによる妨害行為や、言動面での緊張再燃など、短期的な混乱は想定されます。ただし、全面戦争へと再発展する可能性は低く、無視はできないものの、おおよそ30%程度にとどまるとみています。現時点では、米国・イラン双方が一定の成果を主張し得る状況にあると考えられます。


マクロ環境と金融市場への影響

当社の基本シナリオでは、ホルムズ海峡の開放状態が維持される限り、米国とイランの交渉結果がどのような形であれ、市場にとっては概ねポジティブに作用するとみています。この場合、原油価格は1バレル当たり80米ドル程度まで低下すると予想されますが、これはイラン戦争前の水準と比べてなお10~20米ドルの地政学的プレミアムを織り込んだ水準です。

世界経済の成長やインフレ率への影響は、一時的かつ限定的にとどまる見通しです。今後数カ月間に公表される3月・4月分のマクロ経済指標は、市場では構造的なトレンドを示すものではなく、一時的な「ノイズ」として受け止められる可能性が高いと考えられます。

金利見通しについては、イラン戦争前の水準をわずかに上回る水準で落ち着くと予想しています。年内の金融政策については、米連邦準備制度理事会(FRB)による1回の利下げ、欧州中央銀行(ECB)は政策金利の据え置きとの見方を維持しており、短期的には債券価格の下支え要因になるとみています。


市場の見通しとリスク要因

市場の安堵感を背景としたラリーは継続するとみられますが、その上昇余地は、過去の大きな市場ショック後の回復局面と比べると限定的です。現在の12カ月先予想PER(株価収益率)は約20倍と高水準にあり、米国企業のEPS(1株当たり利益)についても、今後2年間で約20%成長という、きわめて楽観的な前提が織り込まれています。また、株式・債券市場ともに、過去の類似局面と比べて売られ過ぎの水準にはありません。

過去の亊例としては、2008年10月13日の米国政府による金融機関救済策の発表、2020年3月24日の新型コロナウイルス対応としてのFRBによる無制限量的緩和、2022年11月10日の米国コアCPI(消費者物価指数)伸び率の鈍化とインフレのピークアウト、さらに2025年4月9日の米国による関税措置の一時停止などが挙げられます。

年後半にかけては、AI技術革新を巡る不透明感や米国の中間選挙も、重要なリスク要因として意識されるとみられます。

もっとも、過去の事例では、経済に持続的なダメージが生じない限り、安堵感による相場上昇は想定以上に長期化する傾向がありました。特に強気相場においては、こうしたラリーが勢いを伴って進行し、市場から距離を置き続けることが難しくなる場合もあります。


市場急反発後の投資対応と基本的な考え方

大幅な下落局面を経て市場が急反発した場合の対応について、当社では次の4つのアプローチに整理しています。①トレンド転換が持続的であることを確認できるまでは様子見とする、②反転局面では、それまで下落していた銘柄が上昇に転じることが多いため、下落率の大きかった銘柄に投資する、③下落前のポジションに戻す、④下落局面で導入したヘッジを解消する。

戦略的には、②と③を組み合わせることを選好します。


今後の投資戦略と注目ポイント

株式・債券を50%ずつ保有するグローバル・バランス型ポートフォリオが、1日で2.5%上昇するなど、歴史的な急騰直後にあることを踏まえると、直ちに市場へ再参入する必要性は高くありません。ただし、交渉決裂と軍事衝突の再開を想定しない限り、これまでの防御的なスタンスを維持する合理性は低下していると考えられます。

今後は、市場全体の方向性よりも、資産間・銘柄間の相対的な価格動向がより重要になるとみています。特に株式市場では、セクター間および地域間の選別が鍵となるでしょう。

イラン戦争前の価格トレンドからの乖離をボラティリティ調整後のベースで分析すると、鉱業、生活必需品、資本財、ユーロ圏株式、ドイツ株(特にMDAX)に相対的な上昇余地が認められます。米国小型株も、紛争期間中に相対的な底堅さを示しており、注目に値します。

新興国株式では、原油の純輸入国であるインドが、絶対的な観点からもラテンアメリカとの相対的な観点からも、魅力的な投資機会を提供すると考えています。一方で、地政学的緊張の緩和局面では、中国株式の投資妙味は薄れており、3月中旬以降もアンダーパフォームが続いています。

米ドルについては、イラン戦争開始以降、約3%の「ベアマーケット・ラリー」を演じましたが、循環的かつ構造的な下落トレンドが再開すると予想しています。英国およびユーロ圏と比べて金利見通しの下方修正余地が限定的であることから、日本円およびスイスフランが相対的に恩恵を受けやすい通貨とみています。



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