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- 新興国株式市場で際立つ高配当戦略の優位性
・過去の新興国株式市場では「高配当利回り」銘柄群が良好な実績を示した
・新興国の高配当利回り株式は、市場の下落時に底堅さを発揮してきた
■ 新興国株式市場でのリターン獲得のカギとなる「高配当利回り」
新興国株式は、2001年以降の長期の実績において先進国株式を上回る水準で推移してきました。また、新興国株式の中でも、配当利回りが高く、継続的な配当の支払い実績に着目した銘柄群(高配当利回り株式注1)が、新興国株式市場全体(新興国株式)のリターンを上回りました(図表1)。
企業利益の一部を株主に還元する「配当」を継続的に支払うことが可能な企業は、一般的には、利益成長が安定的であり、財務状況がより健全であると考えられます。
局面によっては、利益成長率の高さなどの異なる特性を持つ銘柄群のパフォーマンスが優位となることもありますが、長期的には、配当の裏付けとなる利益成長が安定的な銘柄への投資が新興国株式市場でリターンを獲得するうえでは良好な実績を示してきたといえます。
注1 当資料では、新興国の高配当利回り株式を「高配当利回り株式」とします。
■ 新興国の高配当利回り株式は、市場の下落時に底堅さを発揮してきた
前述のとおり、2001年以降の新興国の高配当利回り株式のリターンは新興国株式を大きく上回りました。この背景の一つには、市場の下落時に下落率が抑制される傾向があったというパフォーマンス特性が考えられます。図表2は、高配当利回り株式の、新興国株式に対する追随率を示したものです。これは、新興国株式が上昇/下落したそれぞれの場面において、高配当利回り株式がどのぐらい上昇/下落したかを示すものです。この数値が100%を超えれば、新興国株式が上昇/下落した場面において、高配当利回り株式の上昇率/下落率が新興国株式を上回る傾向があったことを意味します。2001年以降の高配当利回り株式の追随率は、新興国株式の上昇時が97%、下落時が88%でした。これは、高配当利回り株式は新興国株式が上昇する場面において、若干下回るリターンを獲得する傾向があったことを示します。一方で、新興国株式が下落する場面においては、下落率が相対的に大きく抑制される傾向があり、リターンの「下方硬直性」があったことが示されました。また、最大下落率の比較においても、市場の下落局面における高配当利回り株式の相対的な優位性が示されました。
■ 新興国の高配当利回りに着目した投資で新興国経済の成長による恩恵を享受
配当の水準に加え、市場の下落時に下落率が抑制されるというパフォーマンス特性などから、高配当利回り株式を構成する銘柄には公益事業や生活必需品に関する銘柄などの業績が安定している一方で成長率は緩やかな銘柄が多いと思われるかもしれません。しかし、新興国の高配当利回り株式のセクター構成比率(図表4)を見ると、実際には金融セクターのほか情報技術セクターの比率が高いことがわかります。
金融セクターについては、そのうちの多くを銀行株が占めています。新興国の銀行株は、新興国の経済成長率の高さや中間所得層の拡大などが利益成長の追い風になると考えられます。特に労働人口が増加している新興国や、金融包摂注2が進行途上の国では銀行業務の拡大余地が大きいため、相対的に高い成長率が期待されます。先進国の銀行株との比較では、今後4年間の一株当たり純利益(EPS)の成長率(年率)において、新興国の銀行株が上回ると予想されています(図表5参照)。
情報技術セクターについても、人工知能(AI)の普及などに伴う高い業績成長と、継続的な配当の実施を両立してきた半導体銘柄などが含まれています。
このように、高配当利回りに着目した新興国株式への投資は、新興国経済の成長による恩恵を享受しつつ、中長期的に安定的なパフォーマンスを獲得するための手段といえるのではないでしょうか。
注2 金融包摂:貧困や難民など社会的な理由によって金融サービスへのアクセスが困難な人々に預金や送金、融資などの基本的なサービスの利用機会を広げる取組み。
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