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米国離れが進む
2025/06/19

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概要

米国の政策は投資家の目を米国以外の国へ向けさせており、資産配分の見直しが進むかもしれません。



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トランプ政権による関税問題や貿易相手国への強硬な姿勢により、投資家は、米国への投資に不安を抱きつつあります。トランプ大統領の極端な政策が一部覆されたとしても、この不安感は引き続き残るかもしれません。

米国の政策が最終的にどのような形をとるにせよ、現在の一極集中的な経済・金融システムの分断が進み、そのためBRICSを筆頭とする新興国の経済規模が拡大し、新興国は影響力を強めていくものと考えます。

新興国を含めた多様な資産を持つ投資家にとって、この変化は少なくとも2つの重要な意味を持ちます。まず、米国第一主義とBRICS諸国の存在感の高まりは、米国以外の資産への投資需要を後押しすると思われます。次に、資産配分を見直す際に、プライベート・アセットを活用することも考えられていくでしょう。このプロセスが簡単に進むとは思いませんが、新興国市場のインフラを強化することにつながると期待されます。

貿易の再編

米国が貿易赤字の削減を目指す政策を進めれば、経常収支の赤字額は減少するかもしれせんが、同時に資本収支の黒字額も減少するでしょう。その結果、米国以外で保有されている米ドルが、米国資産へ再投資される額が減少する可能性があります。

米国の貿易抑制的な政策は、貿易の地域化に拍車をかけるでしょう。これによりBRICS諸国間での貿易が活発化し、貿易黒字や赤字が拡大、それに伴って資本収支の赤字と黒字も発生します。その結果、BRICS諸国の経常収支黒字のうち、これまで以上に多くの資金がBRICS地域内に再投資されることになるでしょう。このように域内で資産への需要が増えることは、BRICSの金融市場を活性化させる重要な要因になると期待されます。

上場株式と未公開株式

世界貿易の地域化は、同時に世界資本の地域化も引き起こしています。現在、世界の上場株式と未公開株式の約70%を米国市場が占めています。しかし、米国の資本収支の黒字額が縮小すれば、投資家は資産配分を見直し、米ドル建て資産から別の資産への移動を進めることでしょう。

投資対象地域を見直し資産の再配分を行うことは、上場株式の場合、それほど難しいものではありません。しかし、未公開株式は投資家に長期間の資金拘束を求める傾向にあるため、上場株式のように簡単にはいかず、プロセスに時間がかかります。米国が外国資本に制裁を課す懸念から、アジアや中東の投資家は、新たな投資先を米国以外の国に求め、資産の分散化を図ることになるでしょう。特に、政府や政府関連機関などの新たな資金が、BRICSの資産に流れ込む可能性が高いと思われます。中国の投資家は既に米国の未公開株投資から撤退し始めているとの報告もあります。

未公開株投資の特徴である、長期間にわたる資金拘束や流動性の低さと、トランプ大統領による米国以外の国への強硬姿勢が、こうした投資行動を引き起こしています。新興国が長期資金の呼び込みを促すため、投資家保護や法制度を強化したとしても驚くべきことではありません。そうした保護措置は、新興国市場のインフラを強化し、経済の好循環をもたらすはずです。


*本稿は2025年5月時点の情報に基づき執筆されました。

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