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ポジティブ・チェンジ: 強力な価値創造の源泉
2025/10/09

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概要

変革期にある企業は、株主に真の価値をもたらします。




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投資における環境・社会・ガバナンス(ESG)原則の是非をめぐる激しい議論があるにもかかわらず、持続可能な未来への移行は多くの業界の企業にとって大きな機会となっています。

排出量や廃棄物の削減から、革新的なクリーンテクノロジーや金融ソリューションの開発にいたるまで、積極的に環境への影響力を改善している企業を支援することには大きな可能性があります。投資家にとって、これはリスク軽減だけでなく、成長、収益性、株主リターンを向上させるための新たな道を開くことでもあります。

この移行を進めている企業は、バリュエーションの再評価を受ける可能性があり、魅力的な投資機会となります。

これはまさに当社のポジティブ・チェンジ戦略が取るアプローチです。グローバル株式戦略として、ポジティブ・チェンジは、より持続可能な経済への変革を推進、またはその恩恵を受ける優良企業に投資することを目的としています。

過去3年間にわたり、私たちは、企業の社会的・環境的インパクトを改善することで価値を創造できる、バランスの取れた多様な企業のポートフォリオを構築してきました。各企業の経営陣と緊密に連携し、持続可能な取り組みを促進しています。

私たちの積極的なエンゲージメントは、これらの企業が移行を進める過程において、投資家にとって具体的な価値を創出するよう促します。

利益率の向上

私たちの投資先の一つであるカーライル(Carlisle)社を例に挙げましょう。この米国を拠点とする屋根材・断熱材メーカーの製品は、断熱性能とエネルギー効率を向上させ、光熱費の削減に役立ちます。同社は、これらの製品のライフサイクルを通して使用者に合計200億米ドルの節約をもたらす可能性があると推定しています1

私たちはカーライル社と廃棄物削減のためのエンゲージメントを行い、リサイクル、再利用、再製造の方法を見つけるよう協力しています。これは環境と企業業績の両方に直接貢献すると考えています。 結局のところ、廃棄物を1トン削減すれば、それだけコスト削減につながります。

同社は2030年までに埋め立て処分される廃棄物を200万トン削減することを約束しており、これは当初の目標の倍にあたります。最新の報告期間では、同社は1,600万トン以上の廃棄物を発生させました2

さらに、同社は最近、5%のバイオサーキュラー素材を使用したポリイソ・エコ(Polyiso Eco)などのプレミアム断熱製品を発売しました。これらの製品は、顧客がグリーンビルディング認証の取得への貢献を評価しており、より高い価格で販売されています。

重要なのは、リサイクル可能な材料の使用により化石燃料への依存度が低下し、それがコスト削減につながるとともに、原油価格の変動で利益が悪化するのを防ぐことです。これは、循環性の向上が、いかにカーライル社とその投資家にとって具体的な価値をもたらしているかを示す明確な亊例です。

企業との的を絞ったエンゲージメント活動がポジティブな結果をもたらす別の例は、エネルギー供給の近代化に不可欠な米国のガスパイプライン会社ウィリアムズ(Williams)です。

メタン漏れは同社の事業における大きな隠れたコスト、つまり経済学でいう外部性にあたります。

メタン漏れを減らすことで、ウィリアムズ社は環境への悪影響を軽減するだけでなく、販売可能なガスをより多く確保できます。

同社は2028年までに温室効果ガス排出強度を30%削減するという長期的な取り組みにおいて、すでに順調な進展を見せています。過去1年間でメタン漏れを10%削減しました。



ポジティブな影響と収益の拡大

影響力の改善は、新たな収益源を開拓することもできます。

設定来、当戦略の上位保有銘柄の一つであるHCAヘルスケア(HCA Healthcare)を例に挙げましょう。同社は、米国最大の病院所有者・運営者として、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の社会分野の目標と戦略的に明確に整合している点で際立っています。

HCAヘルスケアが新しい病院、施設、設備に投資してビジネスを拡大すると、診察できる患者数が増え、患者の健康状態が改善します。2024年には、同社が経営する病院で診察した患者数が600万人増加し、収益は約9%、純利益は約10%増加しました。同社の資本配分は、社会課題への影響を高めると同時にリターンを生み出すよう設計されています。

当社の他の保有銘柄も同様のアプローチを示しています。米国上場のエネルギー企業ベーカー・ヒューズ(Baker Hughes)は、従来の石油・ガス事業から炭素回収や水素などの革新的なクリーンテクノロジーへの移行を進めています。同社は2030年までに60億〜70億米ドルの新規受注と、これらの新しいクリーンテクノロジー市場でのより高い利益率を目標としています。

米国を拠点とする金融サービス会社インターコンチネンタル・エクスチェンジ(ICE)とのエンゲージメントでは、持続可能なエネルギー製品からの収益シェアを倍増するよう促す取り組みでポジティブな成果が見られています。

ICEは2025年上半期に環境市場での過去最高の取引高を記録し、昨年は名目取引高が1兆米ドル以上増え、この水準を上回るのは4年連続となりました3

同社の革新的な排出量取引ソリューションは、環境にプラスの影響をもたらすとともに事業収益の向上にもつながるはずです。

ESGリスクの削減とバリュエーションの向上

積極的なアプローチによるガバナンスリスクの削減も、バリュエーションの向上につながります。

北米の廃棄物処理・リサイクル会社GFLを例に挙げましょう。同社はこの分野で、比較的新しく成長が早い企業で、過去10年間にリパブリック・サービシズ(Republic Services)、ウェイスト・マネジメント(Waste Management)、ウェイスト・コネクションズ(Waste Connections)を高い業績に導いたのと同じような多くの機会を有しています。

しかし、GFLの株価は同業他社と比較して大幅な割安水準で取引きされていました。私たちの見解では、このギャップは同社が従来のプライベート・エクイティ的なマインドセットから脱却する過程でのガバナンスリスクに起因していました。

私たちの同社との継続的なエンゲージメントは、ガバナンス体制のさらなる強化に焦点を当てています。GFLとのパートナーシップと対話が時間の経過とともにESGリスクを軽減し、株主に利益をもたらすことを期待しています。

グリーンリーダーを超えた投資

サステナブル投資は、すでに環境に配慮している企業や、または社会・ガバナンス面で優れている企業に資本を向けるだけではありません。

私たちは、企業がどの変革段階にあっても投資し、その加速に向けて積極的にエンゲージメントすることで、企業行動において意味のある前向きな改善をもたらし、魅力的な財務パフォーマンスを実現できると考えています。

 


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