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新興国の動向:ベネズエラ情勢アップデート
2026/01/06

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概要

・マドゥロ大統領の退陣はラテンアメリカ地域にとって前向きな展開と評価できる一方で、今後の情勢の推移を慎重に見極めていく必要があります。

・短期的には、天然資源へのアクセス拡大に必要となる巨額投資やインフラ整備に時間を要することを踏まえると、原油価格への影響は限定的にとどまると見込まれます。すなわち、短期的には供給量が大きく変化する可能性は低いと考えられます。



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ベネズエラにおける米国の行動と今後の政治情勢に関する見解

2026年最初の週末に米国が取った行動は、ベネズエラおよびマドゥロ大統領が率いるチャベス派政権に対して、ここ数ヶ月にわたり加えられてきた圧力の集大成と位置づけられます。2025年夏の終盤以降、米国はカリブ海に大規模な軍事拠点を構築し、これまでマドゥロ氏を大統領の座にとどめてきた権力構造の分断を迫る意図を示してきました。当初は、麻薬密輸容疑船への攻撃に焦点を当てていましたが、その後、制裁対象となっている石油タンカーの出国禁止措置も含まれるようになりました。こうした圧力と並行して、トランプ政権とチャベス派政権内部の重要人物との間で水面下のコミュニケーションが継続的に行われていたことも明らかになりつつあります。これは、最大限の圧力戦略が一定の効果を発揮したことを示唆しており、マドゥロ氏は政権指導部やベネズエラ軍内部で信頼を失いつつあったと考えられます。その結果として、マドゥロ氏とその妻が比較的容易に拘束された背景には、政権内部での離反や裏切りがあったと見られます。

現時点では、デルシー・ロドリゲス副大統領が大統領代行としてベネズエラの権力を掌握しており、これはトランプ政権測と何らかの事前調整や了承があった可能性をうかがわせます。ロドリゲス氏は副大統領のほか経済・財務相や石油・炭化水素相など、政府内でさまざまな要職を歴任してきた人物です。したがって、足元の体制変化は、2024年の不正選挙後に正統な権力を主張している野党への完全な権力移行ではなく、チャベス派政権内部における権力移譲・政権交代の段階にとどまっていると評価されます。

今後、注視すべき点がいくつかあります。第一に、ロドリゲス氏とトランプ政権との合意内容を明確にすることが、今後の展開を評価する上で重要になります。第二に、チャべス派政権内のより強硬な勢力、特にディオスダド・カベジョ内務相とパドリーノ・ロペス国防相の動向が注目されます。これらの派閥間で内部対立が顕在化した場合、現地情勢は一層不安定化し、米国による第二の軍事行動に発展する恐れもあります。第三に、経済および石油セクターを安定させるための戦略が明確に示されるかどうかにも注意が必要です。こうした戦略は、中期的にはより人道的かつ経済的であり、最終的には市場にとっても好ましい結果をもたらす上での鍵となるでしょう。

情勢は流動的であり、この方向で事態が進展する可能性は想定していたものの、マドゥロ氏がこれほど容易に拘束・身柄確保されたことについては、なお予想外であったと言わざるを得ません。引き続き、多くの動向を注意深く見極めていく必要があります。


原油やその他の地政学的リスクへの影響評価

短期的には、今回の一連の動きのみでは原油市場への影響は限定的にとどまると見ています。ベネズエラの石油確認埋蔵量は広く知られていますが、この天然資源の潜在力を引き出すためには多額の投資が必要であり、このため短期的に同国の供給量が急増することは想定していません。一方で、中長期的には、政治的・経済的状況が安定し、この潜在力を活用するために必要な海外投資が促進されれば、ベネズエラが世界の原油市場において再び主要プレーヤーとして台頭する可能性があります。

より一般的には、自信を深めたトランプ大統領が、イラン、ナイジェリア、コロンビアなど既に米国との関係で緊張が高まっている産油国に対する圧力を一段と強める可能性に注目しています。足元ではイラン各地で抗議活動が拡大しており、政権交代が再び国際政治の大きな潮流の一つとなり得ることを示唆しています。仮にトランプ大統領がこうした動きを後押しする場合、中東における供給不安が高まり、原油価格は先に述べた下落ではなく、むしろ上昇圧力にさらされる可能性があります。もっとも、これは現時点で確度の高いシナリオをとは言えず、2026年における潜在的なマクロリスクの一つとして注意深く見守る必要があります。

マドゥロ大統領の退陣はラテンアメリカ地域全体にとって前向きな展開と評価できます。ベネズエラはこれまで、地域全体に必ずしも好ましい影響を与えてきたとは言えず、チャベス政権およびマドゥロ政権は長年にわたり、コロンビアなどにおける左派武装勢力との関係を通じて不安定要因となってきました。マドゥロ氏の失脚により、このような支援ルートは大きく制約されると見込まれ、ラテンアメリカ全体の資産クラスにとってはプラス材料と言えます。


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