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- ポジティブな変化のためのテクノロジー
デジタル技術とAI(人工知能)は、企業のサステナビリティへの取り組みを加速させ、業界自体の環境負荷の低減を含む、持続的でプラスの影響をもたらすことができます。
デジタル技術とAI(人工知能)の台頭は、世界中の企業や社会にもたらす生産性向上と成長への新たな可能性として期待されています。一方で、データセンターの急速な拡大やエネルギー集約型インフラへの巨額投資は、サステナビリティに対する懸念、とりわけこの分野における環境負荷の増大を招いています。
しかし、こうした短期的な影響のみに目を向けると、AIが産業全体にもたらし得る長期的なプラスの効果を見落としてしまいます。企業にとっては、二酸化炭素排出量の削減、廃棄物の削減、エネルギーや水などの資源の効率的な利用が最優先事項となっています。テクノロジー、とりわけAIは、数年前には想像できなかった方法で、こうした取り組みの速度と規模を変えつつあります。
このテクノロジーは、国連の持続可能な開発目標(SDGs)1に示されている重要な社会的・経済的・環境的目標の達成に、すでに貢献を始めています。
例えば、繊維産業ではAIを活用して生地の裁断パターンを最適化することで、原材料の使用量削減につなげることができます。また、AIで最適化された配送ルートは移動時間と二酸化炭素排出量の削減に貢献します。さらに、アルゴリズムを用いた診断ツールは、がんなどの疾患をより早く正確に検出することで、人々の健康状態の向上に寄与します。
ストックホルム・レジリエンス・センターとポツダム気候影響研究所が主導した最近の研究でも、サステナビリティとガバナンス2の進展を加速する上で、AIが持つ大きな可能性が強調されています。
この研究によれば、AIは膨大かつ複雑な環境データの処理と解釈を支援し、気候影響を予測するとともに、洪水や大気汚染、干ばつからパンデミックの発生に至るまで、さまざまな事象への最適な対応策の検討を助けます。
現在、ますます多くの企業がAIを活用し、二酸化炭素排出量の削減、エネルギーと水の節約、廃棄物削減に取り組んでいます。テクノロジー企業も例外ではなく、AIを用いてデータセンターの運用を最適化し、エネルギー効率に優れたチップの開発を進めています。
AI関連の製品やサービスは、企業のサステナビリティ向上を後押しし、さまざまな産業に体系的な好影響をもたらしています。これは、自社の影響改善に積極的に取り組み、より持続可能な経済への移行から利益を得ようとする優良企業を重視する、当社の株式運用戦略であるポジティブ・チェンジ戦略と合致しています。
業種を問わず自社製品への需要が高まるにつれ、金融市場は、こうした企業が長期的な株主価値を提供する能力を、これまで以上に高く評価していくでしょう。
デジタル・トランスフォーメーションの推進
日本の富士通は、持続可能性への移行を加速し、ネットポジティブな価値を創出することを目的としたデジタル製品およびAI駆動型サービスを提供する先進的なテクノロジー企業です。
同社はデジタル・トランスフォーメーション関連サービスを提供しており、組織がクラウドベースのデータ駆動型オペレーションへ移行し、資源効率や循環性の向上および排出量の削減を図ることを支援しています。また、企業向けに設計されたAIソリューションやプラットフォームに加え、ITサーバーやデータストレージシステムなどのハードウェアも提供しています。
富士通はAI分野でも積極的な取り組みを進めており、日本におけるAI開発を加速するため、エヌビディア(NVIDIA)と戦略的パートナーシップを締結しました。主力プラットフォームである「Uvance」の展開により、収益の3分の2を生み出している日本国内のみならず、海外市場においても、これまで培ってきた強みと深い関係性を生かすことで、デジタル・トランスフォーメーションとサステナブルなイノベーションの一層の進展が期待されています。
富士通は、ネットポジティブ戦略のもと、顧客企業のサステナビリティ向上を支援するだけでなく、自社としても社会にポジティブな影響をもたらすことに注力しています。2040年3までにグローバル・バリューチェーン全体でネットゼロ排出を達成するという目標に向け、2024年にはサプライチェーン排出量(スコープ3)を2020年比で35%以上削減しました。
効率化への転換
AI駆動システムは、資源管理の方法を根本的に改善し、エネルギー消費をより効率的にするとともに、重要分野における無駄を削減することができます。
米国に本社を置くアリスタ・ネットワークス(Arista Networks)は、ITソリューションの主要なプロバイダーです。同社は、データセンターやその他のネットワーク環境向けに、ルーター、スイッチ、アクセスポイント、ソフトウェアなどの省電力ハードウェア製品を開発しており、AIを支える基盤インフラの環境負荷の最小限化に貢献しています。
例えば、アリスタの最新世代の電源ハードウェアは、従来モデルと比較して、100ギガビット/秒の帯域幅あたり最大95%の電力削減を実現しています4。この効率化により、アリスタ製品を導入したデータセンターでは、運用に伴うエネルギー使用量と、それに関連する温室効果ガス排出量を直接削減することができます。
さらに、同社は責任ある廃棄物管理にも取り組んでおり、リサイクルおよび再利用の取り組みを拡大しています。金属、包装材、電子廃棄物を含む総リサイクル廃棄物量は、2024年までの2年間で2倍以上に増加し、22万6,000ポンドを超えました。
図1:アリスタ製品世代別電力消費量比較
出所: Arista 2024 Corporate Responsibility Report
物流のグリーン化
テクノロジー主導のサステナブルな変革におけるリーダーシップは、世界最大手や老舗のテクノロジー企業に限定されるわけではありません。
新興国市場では、京東物流(JD Logistics)のような企業がAIを活用し、サプライチェーンの強化と排出量削減に取り組んでいます。北京に本社を置く同社は、高度に自動化されたエネルギー効率の高い倉庫を運営し、スマートな配送ルート設計、包装材の削減、国際・国内貨物輸送の統合サービスを提供するとともに、インテリジェントな物流テクノロジーソフトウェア製品も提供しています。
JDの取り組みが重要なのは、主に貨物輸送と倉庫保管から生じる物流部門の排出量が、世界の温室効果ガス排出量5の少なくとも7%を占めているとされているためです。これらは物流事業者だけでなく、バリューチェーンに関わるすべての企業に帰属する間接排出量(スコープ3)に該当します。
したがって、京東物流がAIと自動化技術を利用してこれらの排出量を抑制することができれば、その恩恵は同社だけにとどまらず、広範に波及します。同社のサービスを利用するすべての企業はスコープ3排出量の削減につながり、サプライチェーン全体が低炭素オペレーションへ移行する一助となります。
AIのような破壊的テクノロジーがさまざまな産業に波及するにつれ、基盤技術を構築する企業やテクノロジー主導のソリューションを活用する企業は、環境的・社会的成果に向けた具体的なポジティブな変化を加速させています。
同時に、これらの取り組みは魅力的な財務リターンをもたらす可能性も高く、サステナブルな投資ポートフォリオにおいて、今後ますます中心的な役割を担っていくと考えられます。
1.https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0166497225001117
2. https://www.stockholmresilience.org/news--events/ai-for-a-planet-under-pressure.html
3. https://www.fujitsu.com/global/documents/about/ir/library/integratedrep/FinancialSection2025-02.pdf
4. https://www.arista.com/assets/data/pdf/Arista_CRR_2024.pdf
5. https://www.mckinsey.com/capabilities/operations/our-insights/decarbonizing-logistics-charting-the-path-ahead
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