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- 医療の中心にあるイノベーション
心臓病は世界で最も多い死因です。ジェナバルブ(JenaValve)社は、損傷した心臓弁を置換するための画期的な低侵襲手術(患者の体への負担をできるだけ小さくする手術方法)を開発しました。
平均的な一生の間に、心臓は約25億回鼓動し、何百万リットルもの血液が心臓の弁を通過します。心臓は非常に複雑で重要な臓器であり、最小限の介入で健康を維持することが医療の優先事項となっています。ジェナバルブ(JenaValve)社が開発したような最新技術により、高額で潜在的にリスクの高い開胸手術を行わずに、より多くの心臓病を治療できるようになりました。
同社が注力しているのは大動脈弁逆流症です。これは、心臓の大動脈弁が正常に閉じず、すでに酸素を含み大動脈から全身へ送り出されるはずの血液が、大動脈から心臓に逆流してしまう疾患です。成人の約10%がこの疾患に影響を受けており1、息切れや疲労などの症状から、重症の場合には心不全や脳卒中、最終的には死に至ることもあります。
「ジェナバルブ社は、心臓の弁に血液が逆流することが原因で心不全を起こしている人々を助けます。これまで心臓弁の治療は開胸手術で行われてきました」とジェナバルブ社の最高医療責任者であり、カテーテル治療専門医でもあるデュアン・ピント(Duane Pinto)氏は語ります。「すべての患者がこのような大きい手術に耐えられるわけではありません。そのため、私たちは外科手術のリスクが高い患者のために新しい手術方法を開発したのです。」
同社は、大動脈弁逆流症の治療に特化した初の経カテーテル技術である低侵襲手術を開発しました。置換用心臓弁は豚の心膜(心臓を包む膜)から作られた組織でできています。この組織はさらに、ニッケルとチタンの超弾性合金であるニチノール製の自己拡張型金属フレームに包まれています。
「私たちは患者の脚にカテーテルを挿入し、それを心臓まで通して、置換用心臓弁を設置することで弁の働きを修復することができます」とピント氏は述べています。
「医師として、私たちが成し遂げたいことが二つあります。患者により良くなってもらうこと、そして長生きしてもらうことです。この手術方法は、その両方を実現します」
低侵襲であることは特に重要です。なぜなら、大動脈弁逆流症は高齢者により多く見られ、高齢者は手術に耐える力が弱い傾向にあるからです。
「この手術方法が特別なのは、従来の方法では救えなかった命を救う可能性があるという点にあります」とジェナバルブ社の最高経営責任者であるジョン・キルコイン(John Kilcoyne)氏は語っています。
しかし、新しい医療処置を開発し、試験を重ね、米国食品医薬品局(FDA)など規制当局から承認を得るには、長い時間と複雑な手続きが必要であり、資金が必要となります。
「臨床試験を実施するには時間がかかりますし、FDAの担当者と協力して進めるにも時間が必要です。そうした事情を理解し、必ずしも即時のリターンだけにとらわれない、特別なプライベート・エクイティ投資家の存在が不可欠なのです」とピント氏は語っています。
臨床データによると、この技術は大動脈弁狭窄症など、他の関連疾患にも応用できる可能性があります。動脈弁狭窄症とは、大動脈弁の開口部が狭くなり、肺で酸素を含む血液が大動脈や全身に十分に流れなくなる疾患です。
「私たちが開発した技術によって助けられる患者の数は、まだごく一部にすぎません。それは、私たちにとって非常に大きなやりがいにつながることなのです」とピント氏は言います。「私たちは、治療できる患者の層を広げ、手術時の苦痛を減らし、より良い生活を送れる人を増やすことを目指しているのです。」
■投資のためのインサイト
デビッド・ブラガ・マルタ(David Braga Malta)
ピクテ・オルタナティブ・アドバイザーズ、プライベート・エクイティ、プリンシパル・ヘルス
私たちは優れた技術を実用的な商業製品へと成長させることを仕事としています。私たちの業界において成功にはいくつかの要素があります。その一つは患者へのインパクト、二つ目は投資家へのインパクト、そして三つ目はそれらのリターンをどのくらいの期間で生み出せるかというタイムフレームです。
ジェナバルブ社はこの3つの要素すべてにおいて成功している一例です。ピクテのセマティック・プライベートエクイティ、ヘルス戦略チームは2022年11月にジェナバルブ社に投資し、シリーズC資金調達ラウンドに参加しました。
同社は、医師たちが求める実績のある技術を持っていました。私たちが最初に投資した時点で、同社が開発した置換用心臓弁の需要は同社の生産能力を上回っていました。また、彼らの戦略上、最大の市場である米国に参入する段階に来ていました。FDAの承認を得るためには大規模な臨床試験が必要であり、それには追加資金が必要でした。これは私たちにとって、同社の成長と変革の道のりに参画し、支援できる絶好の機会となりました。
調達した資金は、臨床開発の完了や基盤技術の商業化を加速させるために活用されています。
しかし、それだけではありません。私たちが貢献できることは多岐にわたります。ジェナバルブ社の場合、かつてサプライチェーンの問題が発生した際、私たちは代替案を探し出す支援を行いました。
ジェナバルブ社が発展するにつれ、同業他社の注目を大きく集めるようになりました。2024年7月には、構造的心疾患や重症患者のモニタリングに特化した米国上場企業Edward Lifesciences(エドワーズライフサイエンス)との買収契約を締結しました。その結果、ピクテはプライベート・エクイティのクライアントに魅力的なリターンをもたらすことができました。
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