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- テーマ株式運用30年の歩み
どのようにして業界をリードするテーマ株式運用の基盤を築いたのか、ピクテ・アセット・マネジメント、テーマ株式運用部門責任者であるハンス・ピーター・ポートナー(Hans Peter Portner)に話を聞きました。
ピクテ・アセット・マネジメント、テーマ株式運用部門責任者であるハンス・ピーター・ポートナー(Hans Peter Portner)は、モーニングスター(Morningstar)社から「世界有数のテーマ株式運用プラットフォーム」と評される体制の構築に中心的な役割を果たしてきました。その起源や哲学的な背景、そして投資担当者が直面している大きな課題について、ボートナー氏の回答をまとめました。
ピクテのテーマ株式運用プラットフォームはどのように生まれたのですか?
私たちは1995年にバイオテクノロジー戦略を立ち上げました。当時はDNAの配列決定がまだ非常に困難な時代であり、ヒトゲノムの全容が解明されるおよそ10年前のことでした。結果として、これは先見の明があったと言えるでしょう。その後数年で優れた運用実績を築き、90年代末にナスダックが急騰し始めた頃には、この戦略に大きな需要が集まるようになりました。
2000年、世の中の注目がインターネットに集まっていた時期に、私たちはデータを分析し、都市化、工業化、人口増加、気候変動といった世界的なトレンドがすべて水資源への需要に大きく影響することに気づきました。
この着眼点は正しかったようで、ウォーター戦略は運用開始から成功を収め、多くの投資資金を集めました。
ウォーター戦略の開発において、あなたはどのような役割を果たしたのですか?
ウォーター戦略こそが、ピクテ・アセット・マネジメントのテーマ株式運用プラットフォームが本格的に始動したきっかけでした。私はこの戦略の立ち上げ当初から関わり、早い段階でリード・マネージャーを務めることになりました。私たちは厳格な投資プロセスを構築し、それがその後のすべての戦略の基本となりました。
ウォーター戦略はテーマ株式運用の中核となり、その後間もなく、ティンバー、クリーン・エネルギー・トランジション、ニュートリション、世界環境株式など、さらに多くの戦略を立ち上げました。これらはすべてウォーター戦略のフレームワークを踏襲しており、共通する投資理念のもと、テーマ株式運用の共通プラットフォームを構築することができました。
最も誇りに思っていることは何ですか?
世界環境株式戦略のアイデアをもとに、強力なチームを築きあげたことを非常に誇りに思っています。現在、この戦略は同分野で世界最大級の規模となっています。当初はウォーター、ティンバー、クリーン・エネルギー・トランジション、ニュートリションなどの各戦略を単純に組み合わせたものでした。私たちは投資ユニバースの選定において「プラネタリー・バウンダリー(地球の限界)」という科学的枠組みを活用した先駆者でもあります(図1参照)。このアプローチと、世界株価指数に対する絶対的・相対的な高いパフォーマンスによって、短期間で大きく成長させることができました。
多くの投資会社のアナリストが同じ銘柄を調査している中で、どのようにして優位性を得ているのですか?
それは単にスプレッドシートを見るだけでは得られません。例えば、約20年前、私はチューリッヒの高級ホテルで開催された水道事業者向けカンファレンスに参加しました。そこには米国の大手水道会社2社のCEOが出席していました。カンファレンス初日の朝は、まさに水関連業界のイベントにふさわしいほどの土砂降りで、私が会場に到着した時には全身ずぶ濡れでした。しかし、会場で最初に出会ったある会社のCEOは、身なりもきちんとしていて全く濡れていませんでした。そのCEOは会場と同じ高級ホテルのスイートルームに宿泊していたからでした。私の後ろには、別の会社のCEOがいて、私と同じようにずぶ濡れで少し疲れた様子でした。彼は格安ホテルに宿泊し、米国からエコノミークラスで移動してきたためでした。この出来事を通じて、私は両社のコスト意識の違いを強く感じました。それ以来、私は倹約家のCEOが率いる会社の株を選好してきましたが、その選択は私のポートフォリオに良い結果をもたらしてくれました。
つまり、現場に実際に足を運ぶことが重要なのですね。
それは確かに重要な事ですが、それだけに負担も大きいものです。そして時には、時差ボケや空港での慌ただしい食事以上の困難に直面することがあります。例えば、私たちのチームのメンバーであるフィリップ・ローナー(Philippe Rohner)は、ムンバイのオベロイホテルでインドの水道会社の経営陣と会う予定でした。彼がチェックインした直後、テロリストが建物を襲撃し、機関銃を乱射し始めたのです。フィリップはフロントのカウンターの後ろに隠れ、ホテルスタッフの助けもあり、最終的に166人が犠牲となったこの惨事を生き延びることができました。
このような恐ろしい出来事は、幸いにも私たちの仕事では滅多に起こりません。金融業界では「サメと一緒に泳ぐようなものだ」と言われるようなこともありますが、実際には稀なことです。
ウォーター戦略の10周年を記念して、パリの営業チームはクライアント向けイベントのためにトロカデロ水族館を借りました。ゲストは巨大な水槽の周りに座り、私の名前が書かれたTシャツを着たダイバーが水中の中に入っていく様子を眺めていました。彼は文字通りサメと一緒に泳いだのです。私は舞台裏にいて、ダイバーが水槽から出てきたタイミングで、自分の頭にグラスの水をかけ、タオルで髪を拭きながらステージに上がりました。今でも一部のクライアントから「ジョーズと鼻を突き合わせた気分はどうだったのか」と聞かれることがあります。
ピクテ・アセット・マネジメントのテーマ株式運用における成功を決定づけたものは何ですか?
私たちの成功の要因は、市場の流れに追随するのではなく自ら革新を生み出し、短期的な流行ではなく長期的なメガトレンド(図2参照)に基づいてアイデアを構築してきたことにあります。これを支えているのが、ガバナンスの安定性や、投資信念・プロセスの一貫性です。同時に、テーマの進化に合わせて戦略を絶えず見直し続けている点も重要です。過去30年にわたり、ジュネーブを拠点に、相互の信頼、高いスキル、安心して働ける環境を土台とした非常に優秀なチームを結集し、維持することができました。この運用プラットフォームは、ピクテ・アセット・マネジメントの卓越した販売ネットワークによって支えられています。
私たちの運用体制の幅広さと深さは他に類を見ません。このようなビジネスを構築するには、時間と忍耐、そして戦略的な視点が必要です。それは大きな公園を作るようなものです。 成長し、成熟するまでに、ビジョンや長期的な展望、そして十分なリソースが必要です。そして、専門性の高い運用マネージャーが、ダイナミックな業界で専門分野に特化した企業に投資しているのです。
例えばパッシブ運用などに対して、どのように優位性を維持しているのですか?
私たちは、テーマの位置付けを分析するために多くの時間とリソースを費やしています。その際、外部アドバイザーや学識経験者、業界の専門家から成るアドバイザリーボードの助言を得て、私たちの考えを形成しています。現在14のテーマごとにアドバイザリーボードがあり、合計35名の外部専門家が社内の専門性知識を補完しています。このような深い知見があるからこそ、技術の変化にもタイムリーかつ的確に対応することができるのです。
テーマ株式運用には未来がありますか?
そもそも投資とは、何かの未来、例えば、食、働き方、医療、旅行、消費、工業生産などの未来に投資することです。テーマ株式運用は、そうした未来に対して非常にフォーカスしたアプローチです。これはアクティブ運用の一形態に過ぎません。私たちは、アドバイザリーボードやコペンハーゲン未来学研究所といったシンクタンクの協力を得ながら、今後も将来に影響を及ぼすであろうトレンドを分析し続けます。テーマ株式運用の大規模なプラットフォームを持っていることで、投資家一人ひとりのニーズや嗜好に合わせたオーダーメイドのポートフォリオを組むことができます。これは特に機関投資家にとって非常に魅力的な提案となっています。
ピクテ・アセット・マネジメントのテーマ株式運用が成功したのは、ピクテ・グループの投資哲学を体現してきたからです。私たちのアプローチは常に長期的な視点に立っています。待つ覚悟がなければ、この分野に取り組むべきではありません。そして、ひとたびそのアプローチにコミットするなら、本当にそれを信じる必要があります。例えば、私たちは最初から責任ある投資に注力してきました。社会的、環境的、ガバナンスのリスクを真剣に受け止めてきたのです。ESG投資が注目され始めた時期に、多くの競合他社が流行に飛び乗りましたが、その中には昨今の政治的な風向きの変化を受けて撤退し始めている企業も少なくありません。しかし私たちは、今もこの姿勢を貫いています。なぜなら、これらは本当に重要な事だと信じているからです。
もし、投資家としてのキャリアを最初からやり直せるとしたら、何か違うことをしていたと思いますか?
今振り返ってみると、できるだけ早い段階で自分自身の投資理念を明確にしていたでしょう。
1990年代半ば、私が運用マネージャーとしてのキャリアをスタートさせて数年経った頃で、 ピクテに入社する前のことです。私は年金基金ポートフォリオの株式部門の運用責任を引き継ぎました。そのポートフォリオに含まれていた企業の一つはテクノロジー機器を製造している会社でした。売上は急増し、株価も急騰していました。しかし、私はその会社の事業の根本や長期的な見通しを理解することができませんでした。そこで数週間、株価が上昇するのを見届けた後、利益確定のために売却しました。その会社はシスコシステムズ(Cisco Systems)でした。
私がシスコシステムズ株を売却したのは1990年代後半で、テック・ブームの直前でした。その時点から、ITバブルのピークに達するまでに、その株価は約20倍になりました。この経験から2つのことを学びました。
第一に、投資の世界で専門性を持つことの重要性です。単にポートフォリオを構築し、セクターアナリストの推奨銘柄を寄せ集めるだけでは十分ではありません。長期的に安定した、再現性のある超過収益を顧客にもたらすには、その分野の専門家となり、個別銘柄についても深い知見を持つ必要があります。
第二に、世界はかつてないほど速く変化しており、その変化の流れに乗り遅れると、投資に深刻な悪影響を及ぼすということです。だからこそピクテ・アセット・マネジメントでは常に長期的な視点を持ち、メガトレンドの発掘と育成に注力しているのです。これこそが、過去30年間にわたる私たちのテーマ株式運用の成功の秘訣でもあります。
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