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ロボティクス:技術と革新の10年を振り返る
2025/11/27

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概要

この10年間、テクノロジーとイノベーションの進化は目覚ましいものでした。ピクテのロボティクス・インベストメント・チームは、従来の産業用ロボットから生成AIにいたるまで、イノベーションの波を乗り越えてきました。そして、これからもさらにエキサイティングな進展が期待されています。
ピクテ・アセット・マネジメントのシニア・インベストメント・マネージャー、ピーター・リンゲン(Peter Lingen)に、ロボティクス戦略の10年間を振り返りながら、これからのテクノロジーとイノベーションの未来について話を聞きました。



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10年前にピクテでロボティクス戦略を立ち上げたきっかけは何だったのでしょうか?

2015年当時、高齢化や生産性の低下など、人口動態の課題が自動化への需要を高め始めており、私たちは市場にまだ存在していなかったテーマに取り組む機会を見出しました。当時は自動化、産業用ロボット、そしてAIが焦点でした。これらは多くの産業や一部の大量生産業界において、生産性、機動性、安全性を向上させる必要性や、ピーク時の労働力不足に対応する必要性によって推進されていました。

私たちは、ロボットが相互接続されたスマート工場の一部になり、ビッグデータ、AI、クラウドプラットフォームを活用して、予測保全、適応型製造、そして人間とロボットのシームレスな協働を実現する未来を予見していました。最終的には、次の産業革命とインテリジェントマシンの台頭に焦点を当てた戦略を立ち上げたいと考えていました。

私たちは、ピクテの実績あるテーマ別アプローチを活用し、ボトムアップ型の投資戦略を構築しました。この戦略の特徴は制約がないことであり、セクター、スタイル、地域的な偏りがありません。この運用方針は一貫して守られてきました。また、私たちはピュリティが高い企業、つまりロボティクス、自動化、AIという投資テーマに由来する収益の割合が高い企業に焦点を当てています。

10年後の今、私たちは運用資産95億ユーロに上るアクティブ運用のロボティクス戦略を構築しました1


投資機会をどのように見極めるのでしょうか?

ロボティクス戦略が10年前に立ち上げられて以来、私たちは地政学的な摩擦、貿易戦争、関税によって引き起こされた約8年間の貿易摩擦を目の当たりにしてきました。このような状況の中で、複雑なグローバルサプライチェーンは非常に大きな圧力を受けました。その結果、政府や企業はリショアリング(自国回帰)やニアショアリング(近隣国への移転)により、生産拠点をシフトさせる動きを強めています。最終的に、これらの課題が工場での産業用ロボットやその他の自動化機器、ソフトウェアソリューションへの需要を加速させました。私たちは、投資哲学に忠実であり続けることで、方向性を見失うことなく、興味深い投資機会を見出すことができました。さらに、市場とは異なる長期的な見通しを持つ企業に対して、意義のある投資を行う意欲を持っています。

つまり、私たちは新興のニッチな市場をリードし、明確な技術的優位性を持つ企業を探しています。イノベーションに積極的に投資し、自社への投資に自信を持つ企業を高く評価します。イノベーションを重視し持続的な成長を示す企業は、今日の低成長世界においてますます希少な存在になると考えています。これらの企業の中には非常に高い評価を受けているものもありますが、必ずしもそうとは限りません。成功を収める企業の中には、目立たない場所に隠れているものもあると考えています。

例えば、2016年に半導体製造におけるプロセス制御と歩留まり管理の分野で世界をリードする企業に投資しました。それ以来、この企業は継続的な研究開発と先進ロジックや高帯域幅メモリチップなどの成長市場への参入によって、着実に価値を積み上げてきました2


思い出深いエピソードを聞かせてください。

ピクテの(業界専門家や学術経験者で形成される)アドバイザリーボードの会議の一つがデンマークのオーデンセで開催されました。この都市はロボティクスと自動化の分野で世界をリードする拠点の一つとして知られており、ユニバーサルロボット(UR)やモバイル・インダストリアル・ロボット(MIR)などの初期のパイオニア企業が本社を置いています。特に興味深かったのは、この会議が約1世紀にわたって船舶を建造してきたメルスクグループ(Mærsk Group)が運営していた元造船所で開催されたことです。1990年代、アジアからの競争に直面したこの造船所は、造船効率の向上を目的としたロボット溶接システムを開発するため、南デンマーク大学と協力しました。ロボティクス分野でのこの専門知識とデンマークの協調的な職場文化が組み合わさることで、新しいベンチャーやスタートアップエコシステムの発展の基盤が築かれました。この取り組みにより、人材と投資が集まり、協働ロボットや移動型ロボット、ドローン、先進的な自動化技術を専門とするスタートアップにとって理想的な環境が整えられています。


あなたのチームについてお話しいただけますか? 

私は協調性を重視したスカンジナビア流のアプローチでチームを率いています。私は信頼を育むことを大切にしており、各メンバーが強固で規律ある投資フレームワークの中で、自分の意見を自由に述べ、学び、自身の投資スキルを磨くことができる環境を提供したいと考えています。私は、失敗を学びの機会と捉えています。それぞれが自分の専門分野を担当しながらも、洞察を共有し、互いをサポートするために密接に連携しています。私の役割は全体的な戦略とポートフォリオの方向性を設定することです。協働、誠実さ、共有学習をチームの中心に置き、個々の成長とチームの成功を一致させることを目指しています。


投資家が注目すべきエキサイティングな進展は何ですか?

私はコアとなるAIインフラの急速な展開に引き続き大きな期待を寄せています。これは半導体、半導体製造装置、設計ソフトウェアの進歩に支えられており、これら自体もAIの活用によって開発や進化が加速しています。このインフラが構築される中で、私は特にAIの次の段階、すなわちエージェンティックAI(Agentic AI)とフィジカルAI(Physical AI)に注目しています。これらは、ソフトウェア自動化とロボティクスの未来を象徴するものだと考えています。エージェンティックAIの成功例としては、すでに顧客サービスやマーケティングなどの業務プロセスの自動化において導入が進んでいるものがあげられます。一方、フィジカルAIではロボタクシー、自動運転車、ヒューマノイドロボットの普及が大きな転換期を迎えています。生成AIによって、ロボットの学習方法や、環境との相互作用の仕組みが大きく変わりました。このAI能力の飛躍的向上により、ロボティクスと自動化の研究開発サイクルが短縮され、データ分析、予測能力、仮想シミュレーションが強化されました。これらは、新しいツールの設計やトレーニングの段階で非常に重要です。投資家が注目すべき重要なポイントは、これらすべての進展がどれほどのスピードで進んでいるかという点だと思います。


[1]  Source: Pictet Asset Management, September 2025
[2]  Source: Pictet Asset Management, September 2025


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