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- トランプ政権下での環境投資を語る
ピクテのプライベート・エクイティ・インベストメント・マネージャーであるロレンツォ・フスコ(Lorenzo Fusco)が、政治状況の変化に左右されない、環境投資の強さについて述べた記事が、プライベート・エクイティ・インターナショナル(Private Equity International)誌4月号に掲載されました。
米国で第二次トランプ政権が誕生し、化石燃料の推進や気候関連資金の削減を行う姿勢が環境投資の未来に疑問を投げかけています。しかし、超党派の利益と現実の経済的側面を考慮すると、その影響は予想ほど深刻ではない可能性があります。投資家はグローバルな分散投資を行い、政府の支援に頼らずに堅調な経営を続けている投資先を選んでいます。さらに、再生可能エネルギーの経済的合理性が強まり、コストが大幅に低下しているため、クリーンエネルギーへの投資の魅力が高まっています。
以下は、プライベート・エクイティ・インターナショナル(Private Equity International)誌4月号に掲載された、ピクテのプライベート・エクイティ・インベストメント・マネージャーであるロレンツォ・フスコ(Lorenzo Fusco)の基調インタビューです。
質問 (以下"Q" ) : 第二次トランプ政権が環境投資に与える影響について、投資家はどの程度懸念すべきでしょうか?
ロレンツォ・フスコ(以下LF):人々が懸念を抱く理由は容易に理解できます。選挙キャンペーン期間中、トランプ大統領の発言の多くが『ドリル、ベイビー、ドリル』というスローガンに集中していたからです。トランプ大統領は、就任前にはすでにインフレ抑制法に基づく資金の支払いを停止しました。この法律は、米政権が可決した史上最大の気候変動対策法であり、さまざまなエネルギー転換イニシアティブに対して政府から4,000億ドルのインセンティブを与えるものです。ただし、既存の契約を取り消すことができるかどうかは明確ではありません。
トランプ政権が環境投資にネガティブな影響を与えないとは言いきれませんが、懸念されているほど、このテーマに対して否定的ではないかもしれません。ネガティブな影響は、目に見える実際のビジネスチャンスにおいてよりも、むしろ市場のセンチメントにおいて顕在化すると考えています。
結局のところ、これまでにインフレ抑制法によって配られた資金の大部分、約85%が共和党が優勢な地区に渡っている事実を思い出してください。実際、大統領選の投票前に、18人の共和党議員がトランプ大統領に対して反インフレ抑制法の発言を控えるよう要請しました。なぜなら、この資金が彼らの選挙区に利益をもたらしているからです。これらの議員のほとんどはその後再選されています。
今後、トランプ大統領は、環境関連の投資機会における多くの経済的メリットを踏まえて、より現実的なアプローチをとる可能性があると考えています。さらに、米国で多くの州は環境目標を達成するための取り組みを続けています。例えば、民主党の知事が率いるカリフォルニア州は、電気自動車に対する税額控除を維持し、大気汚染や放射線に関する厳しい基準を維持することを約束しています。
全体として、現状の見通しはそれほど悲観的ではないと考えています。実際、トランプ大統領はこれまで規制緩和の理念を強く打ち出しており、これにより許認可要件が緩和され、再生可能エネルギーのインフラを電力網に接続するのがより簡単になるかもしれません。
Q:既存のポートフォリオは、政治的センチメントの変化にどれほど影響を受けやすいですか?
LF:私たちが投資の可否を決定する際には、投資先候補の企業が、政府の補助金に依存した経営をしているかどうかを見極めるために多くの時間を費やしています。投資対象と見なすためには、企業自身の力で利益を生み出している必要があり、これは、私が共同投資ファンドのマネージャーであるニコラス・トーマス(Nicolas Thomas)と共に手掛けた、2件の共同投資ファンドにおいて明白です。これらのファンドの投資先は、税額控除、補助金、炭素クレジットなどに依存していない企業です。
1件目のファンドの投資先は、エネルギー市場向けのシミュレーション・ソフトウェアを提供する企業です。このソフトウェアは、将来の電力価格を予測するために使用されます。これは、米国においてさえ、再生可能エネルギーの使用が広がりつつある状況を考えると非常に重要です。
再生可能エネルギーは明らかに断続的なエネルギー源であり、そのため、供給量や価格が他のエネルギーに比べて不安定になりやすい傾向にあります。例えば、ある地域の新しい太陽光発電所に投資をしたい企業は、その地域における太陽光発電量、追加の電力供給を支える送電網の容量、需要量に応じて電力価格がどのように変化するかなどを理解したいと思うでしょう。
この企業は、政治的な変化に左右されない強力な成長要因を生かしています。過去数年間、年平均成長率2桁台で成長しており、政治的センチメントに影響されていません。
また、私たちが米国だけに投資しているわけではないことも考慮する必要があります。現在、全体の45%を米国の企業に投資する予定であり、さらに約45%を欧州、そして日本やオーストラリアなどのアジア・オセアニア地域の先進国の企業にも投資する予定です。
そして、2件目の投資先は、北欧のリサイクル・グループで、トランプ政権による政策に直接影響されず、補助金に依存もしていません。むしろ、欧州での循環型経済への移行というトレンドによって推進されています。
Q:政治的背景が異なることを考慮して、投資戦略を変更する予定はありますか?
LF:政治的背景の変化は、私たちの全体的な見通しを変えるものではありません。環境投資のテーマには依然として魅力的な機会があると考えています。私たちは常に、ユニット・エコノミクスに注目したトップクラスのジェネラル・パートナーと共に投資を行っています。そのため、私たちが支援する企業は、古い非効率的な競合他社や、時代遅れのビジネスモデルや技術を持つ企業に対して競争力を持つことができるはずです。このこと自体が、政治的リスクから企業を守ることになります。
Q:興味深い投資機会をどこで見つけることができると思われますか?
LF : 米国では、過去20年近く電力需要が横ばいでした。しかし、特にデータセンターのエネルギー需要や人工知能の登場によって、現在、需要が再び高まり始めています。そのため、新しい電力網技術への投資機会が生まれ、電力網をより効率的に管理するためのソフトウェアや、データセンターをより効率的にするためのソリューションなどにも広がるでしょう。バッテリー蓄電も興味深い分野です。大手テクノロジー企業は、自社のエネルギー供給を管理し、全体的な供給と需要の変動に左右されないようにしたいと考えています。
これらの投資トレンドは、個人的な環境への信念や政治の傾向とは関係がなく、非常に強力です。また、短期間の政治的センチメントが、投資時の企業評価をより魅力的な水準に導く可能性もあります。断定するのはまだ早いですが、状況によっては、投資時の条件をより有利なものにするよう交渉できる機会があるかもしれません。
Q: 今後数年間で、環境に重点を置いた共同投資はどれほど魅力的になると考えていますか?
LF : 私たちの基本的な見解は変わっていません。世界は依然として革新的で効率的、そしてコスト競争力のある環境ソリューションを必要としています。伝統的に化石燃料と結びついてきたような米国テキサス州でさえ、再生可能エネルギーを導入することの経済的合理性に従い、カリフォルニア州よりも多くのクリーンエネルギーを使用しています。
その理由は明白です。2010年には、ユーティリティ規模の太陽光発電の世界加重平均均等化電力コストは、化石燃料による発電の加重平均コストより414%も高かったのでが、現在では化石燃料より56%安くなっています。また、風力発電のコストは、化石燃料による発電よりも23%高かったものが、67%低くなりました。このような経済的合理性は、どんな政治的議論よりも強力です。米国は第一次トランプ政権時に、一度パリ協定から撤退していますが、クリーンエネルギーに関連する設備投資は第一次トランプ政権の初期に劇的に増加し、政権が終わる直前に過去最高に達しました。ある種のトレンドは常に政治を超えるものです。
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