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2023年11月のバイオ医薬品市場
2023/12/21

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概要


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■ バイオ医薬品関連企業の株価動向

11月のナスダック・バイオテクノロジー指数(ドルベース、配当含まず)は上昇しました。

世界の株式市場が金利低下を受けて上昇する中、バイオ医薬品株式市場も上昇しましたが、市場全体よりも小幅な上昇にとどまりました。また中小型株が大型株よりも堅調な動きとなりました。今後、マクロ経済環境が債券利回りの低下をサポートするような状況になれば、バイオ医薬品株式市場は、さらに上昇機会があるものと考えます。

株価が上昇した銘柄としては、マドリガル・ファーマシューティカルズ(米国)、ブループリント・メディシンズ(米国)、イントラセルラー・セラピーズ(米国)などが挙げられます。マドリガル・ファーマシューティカルズは非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の治療薬候補について良好な治験結果を発表したことなどが、ブループリント・メディシンズは無痛性全身性肥満細胞症(ISM)の治療薬候補について欧州医薬品庁(EMA)の医薬品委員会(CHMP)から承認に対する肯定的な見解を得たことなどが、それぞれ好感され株価が大きく上昇しました。イントラセルラー・セラピーズは、双極性うつ病や統合失調症の治療薬カプリタの販売が好調で、2024年にはさらなる臨床データが期待されることから株価にとってプラス寄与となりました。

一方、株価が下落した銘柄としては、ギリアド・サイエンシズ(米国)、ベンティクス・バイオサイエンシズ(米国)、アルジェニクス(オランダ)などが挙げられます。ギリアド・サイエンシズは、HIV治療薬が十分なキャッシュフローを生み出しているものの、パイプラインに対する疑問が続いており、株価が下落しました。ベンティクス・バイオサイエンシズはTYK2阻害剤VTX958について尋常性乾癬と乾癬性関節炎向けの開発を断念したことが、アルジェニクスは特発性血小板減少性紫斑病治療薬候補の治験失敗を発表したことが、それぞれ影響し株価が下落しました。



■ 今後のバイオ医薬品市場見通し

足元、バイオ医薬品株式市場では、良い兆候がみられています。M&A(合併・買収)の動きは大型案件が相次いで発表されており、この傾向は継続するものと期待されます。特にフェーズ2で良好な治験結果が示された治療薬候補を有するなど買収後のリスクの低い銘柄が注目されます。新薬の開発では、遺伝子治療や免疫学系、循環器系、中枢神経系、がん領域などが注目されます。米国のインフレ抑制法案については、財務上の重大な影響はないものと思われますが、M&Aのターゲットとされる企業が変わる可能性や、がん領域および低分子化合物におけるイノベーションへのマイナスの影響、治療薬について新たな適応拡大を追求するかどうかに関連した戦略の変更が予想されます。また2024年は米大統領選挙が控えており、その影響についても注意深く見ていく必要があると考えます。

長期的には、医薬品に関連する医療費についての議論が大きく変化していることがわかります。いくつかの国では治療の有効性に応じて医療費を支払う制度(価値に基づく医療)が利用されていますが、処方薬で最大のマーケットである米国においても、従来の出来高払い方式ではなく、同様の制度を求める声は、ますます大きくなっています。

医薬品企業と同様に政府、規制当局、保険業者は、医薬品の開発においてイノベーションを抑制することなく、医薬品の費用を効率的に管理することができる妥協案を見つけることを必要としています。最も重要な利害関係者である患者は、破産のリスクにさらされることなく、高品質の治療を受けたいと考えています。これは、治療薬の開発といった科学的側面だけでなく、ビジネスモデルや先進的な思考、価値に基づいた契約といった側面においてもイノベーションを生む良い機会となると考えます。







■ バイオ医薬品関連企業の売上高は新薬承認後の業績寄与などにより相対的に高い伸びに

バイオ医薬品関連企業の売上高は、新興国の企業を上回って堅調に成長してきました。(図表6参照)
バイオ医薬品関連企業については、引き続き多くの有望な治療薬候補を有しており、新薬承認後の業績寄与が期待されていることから、今後3年間で年率+12.1%の相対的に高い売上高の伸びが予想されています。(図表7参照)




■売上高の伸びに沿って株価も上昇

過去の実績では、バイオ医薬品関連企業の株価は、売上高の伸びとともに上昇してきたことがわかります。(図表8参照)



■バリュエーション

バイオ医薬品企業の業績が景気動向に左右されにくい特性などが注目されて2021年夏頃までは株価が上昇し、PSR(株価売上高倍率)で見たバリュエーション(投資価値評価)の水準も上昇していましたが、2021年秋以降はFDAの承認申請に対する予想外の決定などがマイナス要因となったことに加え、2022年半ばにかけてナスダック市場の下落が大きくなる中、ナスダック・バイオテクノロジー指数も下落したことから、PSRも低下しました。(図表9参照)
足元は、良好な治験結果の発表や、再びバイオ医薬品企業の業績が景気動向に左右されにくい特性などが注目され、PSRは上昇に転じつつあります。



                                                                    

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