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- 2024年3月のバイオ医薬品市場
■バイオ医薬品関連企業の株価動向
3月のナスダック・バイオテック指数(ドルベース、配当含まず)は、世界の株式市場が上昇する中、ほぼ横ばいとなりました。
2023年11月から2月にかけての上昇が一段落しました。中でも中小型株は、大型株に比べ相対的に軟調な動きとなりました。一方で、バイオ医薬品業界のファンダメンタルズは非常に健全な状況にあり、バイオ医薬品株式の売買も高水準となり、新規株式公開(IPO)も小規模ながら戻ってきています。さらに中小型銘柄については、支出に対して慎重な傾向が続いており、財務状況の健全性は高いとみています。
株価が上昇した銘柄としては、モデルナ(米国)、ニューロクライン・バイオサイエンシズ(米国)などが挙げられます。モデルナは皮膚扁平上皮がんを対象としたワクチンの治験開始などが好感され株価が上昇しました。ニューロクライン・バイオサイエンシズは、統合失調症治療薬候補への期待などが株価上昇要因となりました。
一方、株価が下落した銘柄としては、バイキング・セラピューティクス(米国)、アカディア・ファーマシューティカルズ(米国)などが挙げられます。バイキング・セラピューティクスは、2月末に肥満治療薬候補の良好な治験結果を発表し株価が急騰した後、反落しました。アカディア・ファーマシューティカルズは、統合失調症治療薬候補の治験が期待外れの結果となったことが影響し、株価が大きく下落しました。
■今後のバイオ医薬品市場見通し
足元、バイオ医薬品株式市場では、良い兆候が見られています。M&A(合併・買収)の動きは大型案件が相次いで発表されており、この傾向は継続するものと期待されます。特にフェーズ2で良好な治験結果が示された治療薬候補を有するなど買収後のリスクの低い銘柄が注目されます。新薬の開発では、遺伝子治療や免疫学系、循環器系、中枢神経系、がん領域などが注目されます。一方、2024年は米大統領選挙が控えており、その影響については注意深く見ていく必要があると考えます。
長期的には、医薬品に関連する医療費についての議論が大きく変化していることがわかります。いくつかの国では治療の有効性に応じて医療費を支払う制度(価値に基づく医療)が利用されていますが、処方薬で最大のマーケットである米国においても、従来の出来高払い方式ではなく、同様の制度を求める声は、ますます大きくなっています。医薬品企業と同様に政府、規制当局、保険業者は、医薬品の開発においてイノベーションを抑制することなく、医薬品の費用を効率的に管理することができる妥協案を見つけることを必要としています。
最も重要な利害関係者である患者は、破産のリスクにさらされることなく、高品質の治療を受けたいと考えています。これは、治療薬の開発といった科学的側面だけでなく、ビジネスモデルや先進的な思考、価値に基づいた契約といった側面においてもイノベーションを生む良い機会となると考えます。
■バイオ医薬品関連企業の売上高は新薬承認後の業績寄与などにより相対的に高い伸びに
バイオ医薬品関連企業の売上高は、新興国の企業を上回って堅調に成長してきました。(図表6参照)
バイオ医薬品関連企業については、引き続き多くの有望な治療薬候補を有しており、新薬承認後の業績寄与が期待されていることから、今後3年間で年率+11.5%の相対的に高い売上高の伸びが予想されています。(図表7参照)
■売上高の伸びに沿って株価も上昇
過去の実績では、バイオ医薬品関連企業の株価は、売上高の伸びとともに上昇してきたことがわかります。(図表8参照)
■バリュエーション
バイオ医薬品企業の業績が景気動向に左右されにくい特性などが注目されて2021年夏頃までは株価が上昇し、PSR(株価売上高倍率)で見たバリュエーション(投資価値評価)の水準も上昇していましたが、2021年秋以降は新薬承認申請に対するFDAの予想外の決定などがマイナス要因となったことに加え、2022年半ばにかけてナスダック市場の下落が大きくなる中、ナスダック・バイオテクノロジー指数も下落したことから、PSR も低下しました。(図表9 参照)
足元は、良好な治験結果の発表や、再びバイオ医薬品企業の業績が景気動向に左右されにくい特性などが注目され、PSRは上昇に転じつつあります。
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