Article Title
インド総選挙、出口調査はやれやれな内容
梅澤 利文
2019/05/20

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

インド総選挙の出口調査の結果を見ると、インド人民党(BJP)など与党連合・国民民主同盟(NDA)が過半数を確保する公算が高まっています。農村部などの支持を集めた国民会議派が率いる野党連合は100議席前後を獲得することが予想されています。



Article Body Text

インド総選挙:出口調査ではモディ政権の継続が予想されている

インドの下院総選挙(定数545議席)は2019年5月23日に一斉開票されます。インド総選挙は約9億人の有権者を選挙区ごとに、異なる7回の投票日に分け、4月11日から5月19日に投票が実施されました。

出口調査の結果公表が19日に解禁され、モディ首相率いるインド人民党(BJP)の与党連合が、議席の過半数を獲得するとの予想が多いと報道されています。

 

 

どこに注目すべきか:インド総選挙、出口調査、GST、農村票

インド総選挙の出口調査の結果を見ると、インド人民党(BJP)など与党連合・国民民主同盟(NDA)が過半数を確保する公算が高まっています。農村部などの支持を集めた国民会議派が率いる野党連合は100議席前後を獲得することが予想されています(図表1参照)。

現政権の改革路線が維持されることを見込んで市場ではインド株式市場の上昇や、通貨ルピーなどに上昇が見られます(図表2参照)。同じ新興国で見ると、米中通商協議が難航する中国や、構造改革の本丸である年金改革の進捗に懸念が見られ始めたブラジルレアルが通貨安となっているのに比べ、相対的には堅調な動きも見られます。

出口調査で与党連合の議席獲得は300議席程度が見込まれています。前回、14年の総選挙ではBJP単独で336議席を獲得しました。その時の勢いに比べると物足りない数字ですが、それでも市場が出口調査を比較的プラスに解釈した背景は、与党の獲得議席は前回を下回るとしても、一時懸念されていた与党連合の過半数割れという事態は避けられそうだという安心感によるものと見ています。

反対に、前回60議席にまで落ち込んだ野党の国民会議派は、出口調査を見る限り、概ね倍増となりそうです。

今回の総選挙はモディ政権の実績評価とも位置づけられることから、プラスとマイナスの両面から政策を振り返ります。

プラス評価される政策には物品サービス税(GST)導入です。GST前は州と中央政府が異なる間接税を課税していたためインドの物流は非効率となっていました。GSTは税の効率化を前進させたと評価されます。高額紙幣廃止やカシミール地方で起きた自爆テロに対するパキスタンへの強硬姿勢などは、プラス評価となっています。全般に経済界からの評価は高い政策でした。

一方で、農村部や労働者のモディ政権の支持は低調でした。モディ政権は雇用の確保を約束していましたが、回復の実感に乏しいといわれています。最も、インドでは公式の失業率はないに等しいですが、推定値などを参照すると失業率は上昇傾向です。汚職防止などの効果ではプラスに評価される高額紙幣廃止ですが、低所得者に資金が行き届かない問題や、農家が肥料購入などで現金が不足するというマイナス面が印象に残っているようです。

今後の政策運営を占うには、まずは開票結果を確認する必要がありますが、仮にモディ政権が後5年続くとすると、市場は改革路線維持を求め続ける展開が想定されます。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら



関連記事


円安に見る、日銀ゼロ金利政策解除は単に出発点

中銀ウィーク、FRB以外に見られた注目点とは

3月のFOMC、年内3回利下げ見通しを何とか維持

ECB、政策金利の運営枠組み見直しを発表

2月の米CPI、インフレ再加速の証拠は乏しいが

2月の米雇用統計は波乱材料とならず