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バイデン政権移行チームの経済対策第1弾
梅澤 利文
2021/01/18

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概要

米バイデン次期大統領は就任を1月20日に控える中、1.9兆ドル規模の経済対策案を公表しました。昨年12月に成立した経済対策(9000億ドル弱)に比べ規模の点で拡大されました。12月の米小売り売上高が市場予想を下回るなど景気回復ペースに鈍化が見られる中、下支え効果は期待されます。ただ、想定の範囲内ということもあり市場の反応は冷ややかでした。



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バイデン次期大統領経済対策:第1弾は1.9兆ドル規模、2月の経済再建策表明を示唆

米国のバイデン米次期大統領は2021年1月14日、1.9兆ドル(約200兆円)規模の新たな経済対策案(以後1.9兆ドル案)を発表しました。現金給付を1人当たり最大1400ドル支給するほか、失業給付の延長など家計支援や新型コロナウイルス対策が主体となっています(図表1参照)。

なお、今回の1.9兆ドル案は第1弾の経済対策案です。バイデン氏は2月にインフラ投資などを主体とする経済再建策を改めて表明すると説明しています。

 

どこに注目すべきか:失業給付、1.9兆ドル、州/地方政府支援金

米バイデン次期大統領は就任を1月20日に控える中、1.9兆ドル規模の経済対策案を公表しました。昨年12月に成立した経済対策(9000億ドル弱)に比べ規模の点で拡大されました。12月の米小売り売上高が市場予想を下回るなど景気回復ペースに鈍化が見られる中、下支え効果は期待されます。ただ、想定の範囲内ということもあり市場の反応は冷ややかでした。

今回発表された1.9兆ドル案を、昨年12月に成立した約9000億ドルの法案と比べ特色を述べます。

1点目は合計すれば2000ドルとなる現金給付や、400ドル/週へ増額された失業給付など合計1兆ドル規模と見られる家計支援が主体となっていることです。

2点目は、12月の法案には盛り込まれなかった州/地方政府の支援金が盛り込まれたことです。なお、支援金は12月月初の段階では超党派で1600億ドル規模で合意はしましたが、最終的に法案には盛り込まれませんでした。このような経緯を踏まえると、ハードルが高い項目の一つです。

3点目は、新型コロナウイルスのワクチン接種支援や感染の検査対策、さらには学校支援まで含めたコロナ費用として4000億ドル規模と拡充させています(図表2参照)。

その他にも、最低時給の引き上げなど低所得層への配慮を厚くすることで民主党らしい内容となっています。先週発表された消費関連指標が軟調であったことなどを考慮すれば、景気下支え効果が期待されます。ただ、株式市場では1.9兆ドル案の発表後は、噂で買って事実で売る、の格言通りの(国債は逆に買われた)展開となりました。

この背景は、政策規模が事前の報道とほぼ一致していたこと、より重要な点として、1.9兆ドル案はあくまで案であり、今後の展開により規模の縮小等を想定しているためと見ています。民主党の議会構成は特に上院で50議席に過ぎず、上院で認められた制度である議会妨害を回避する60議席を下回ります。通常の法案成立に共和党の協力が必要です。米国のメディアも1.9兆ドル案について相当の高望みであると評価しています。先月成立しなかった州/地方政府支援などが含まれていることなどが理由でタフな交渉が想定されます。

なお足元の失業給付は3月中旬まで(図表1参照)ということもあり、民主党は今回の1.9兆ドル案を早期に成立させる必要があります。そのため過半数で成立するも時間がかかる財政調整のように手続きを利用することに対しては慎重で、時間優先、規模縮小による成立を目指す展開を想定しています。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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