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- 6月の米CPI、トランプ関税の影響がじわりと表面化
米労働省が発表した6月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比2.7%上昇となり、市場予想や前月を上回った。エネルギーやサービス、財など幅広い品目で価格上昇が見られ、トランプ政権の高関税政策の影響も一部で確認された。サービスでは住居費や医療サービスが伸びた。財では中国からの輸入品目に価格転嫁の動きが見られ始めた。今後の価格動向や関税の影響拡大に注意が必要である。
米6月のCPIは小幅に加速、関税の影響も見え隠れ
米労働省が7月15日に発表した6月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で2.7%上昇と、市場予想の2.6%上昇、前月の2.4%上昇を上回った(図表1参照)。物価の瞬間風速を映す前月比は0.3%上昇と、市場予想の0.3%上昇と一致したものの、前月の0.1%上昇を上回った。CPIは概ね市場予想通りの動きであったが、品目別にみると輸入が多い商品に価格上昇が見られ、トランプ米政権による高関税政策の影響が散見された。
エネルギーと食品を除くコア指数では2.9%上昇と、市場予想の2.9%に一致し、5月の2.8%上昇を上回った。前月比は0.2%の上昇と、5月の0.1%上昇は上回ったが市場予想の0.3%上昇を下回った。
6月の米CPIのサービス項目の中では変動要因として航空運賃に注目
6月の米CPIが発表された直後、コアCPIの前月比の伸びが市場予想を下回ったことに注意が向いたためなのか、一時的だが米国債市場で利回りが低下した。しかし時間の経過とともに利回りは小幅ながら上昇する展開となった。品目別にみると物価加速の背景に関税の影響が見られたためだろう。これらを踏まえ6月の米CPIを検討する。
まず、総合CPIの前月比の伸び(6月は0.3%上昇)を、エネルギー、食品、財、及びサービスの4項目に分けて寄与度を見ると(図表2参照)、4項目ともプラス寄与となった。ただし、食品は5月と大きな変化はないことから、残り3項目に注目しよう。
まず、サービス項目で寄与度を押し上げたのは主に賃料や宿泊費を含む住居費と医療サービスだった。しかし、住居費と医療サービスの前月比の伸びを見ると(図表3参照)、住居費は前月比で0.2%上昇と鈍化傾向にある。医療費については0.6%上昇と6月の伸びは大きかったが、医療費は月ごとの変動が大きく、様子を見守るべきだろう。
サービス項目の中で、気になったのは航空運賃だ。前月比で0.1%減と6月は平凡な数字だが、5月は2.7%減、4月の2.8%減など大幅なマイナス続きだった。不確実性の高まりを受けた航空旅行需要の落ち込みが過去の下落の背景とみられるが、ようやく底打ちが見られた。ちょうど決算シーズンで大手航空会社からは年後半の旅行需要の回復を見込む声もある。当面注視が必要な品目だ。
関税の影響が表面化し始めたが、どこまで影響が広がるのか予測は困難
次に、エネルギー項目ではガソリンが6月は前月比で1.0%上昇と、5月の2.6%減からプラスに転じたことが寄与度の変化に大きく影響した。エネルギー項目に占めるガソリンの割合(ウェイト)は約47%と高く、寄与度への影響が大きい。また、6月はウェイトが約38%と高い電力が1.0%上昇したこともエネルギーを押し上げ要因だった。
なお、地政学リスクを受けた6月の原油価格上昇がガソリンなどの価格上昇に影響したと考えられるが、7月になってガソリン価格は落ち着いている。
関税の影響を受けやすい品目を多く含む財の6月の寄与度は、前月に比べ明確にプラス寄与となった。ただし6月の財の寄与度は約0.04%、前月比の伸びは0.2%の上昇と数字は控えめだ。この背景だが、6月の財価格を押し下げた品目に、前月比で0.3%減となった新車と、0.7%減となった中古車を含む自動車が挙げられる。なお、自動車を除くとコア財価格は0.55%上昇したとの試算もある。
6月の企業物価指数によると、北米向け乗用車の輸出価格(契約通貨建て)は前年同月比で19.4%減だった。米国が25%の自動車関税を課す中、日本の自動車メーカーは関税分を負担して輸出価格を引き下げ、シェアを維持する戦略を続けたことなども自動車価格を抑えたようだ。
一方、中国からの輸入が多い財の一部の品目には価格転嫁の兆しが見られた。例えば、玩具は前月比1.8%上昇と前月の1.2%上昇から加速し、21年4月以来の大幅な上昇となった。家庭用インテリア用品は1.0%上昇、スポーツ用品は22年以来の大きな伸びだった。家電は前月比1.9%上昇と高い伸びとなった(図表4参照)。
これらの品目は、これまでの駆け込み輸入で一定の在庫を抱え関税の価格転嫁を抑制してきた。しかし、方針をシフトさせたようだ。ただし最終的な価格転嫁の規模や広がりを予測するのは困難で、関税の影響の見極めにもう少し時間をかけたいところだ。やはり米国の7月の利下げは考えにくい。
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