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メキシコ、今は米国と並走
梅澤 利文
2022/09/30

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概要

米国のFOMCに合わせて世界の多くの国の金融政策決定会合が開催されました。メキシコ中銀もその1つで、利上げを決定しました。インフレ抑制や通貨の安定を優先した結果と見られます。もっとも経済成長には徐々に重荷となり始めています。しかしながら、米国と異なる金融政策を選択する(デカップリング)は当分先のこととなりそうです。




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メキシコ中銀:市場予想通り0.75%の引き上げでインフレ抑制姿勢を維持

メキシコ銀行(中央銀行)は2022年9月29日、金融政策決定会合を開催し、政策金利を市場予想通り、0.75%引き上げて9.25%にすると発表しました。利上げは全会一致(委員の数は5人)で、11会合連続となります(図表1参照)。

メキシコ中銀はインフレ見通しを上方修正するとともに、ピークを後ずれさせました。前回(8月)会合ではインフレのピークを22年7-9月期の8.1%と見込んでいましたが、今回の声明ではピークを22年7-9月期と10-12月期の8.6%としており、物価上昇への警戒感が示されました。

どこに注目すべきか:メキシコ中銀、デカップリング、FOMC

メキシコは地理的にも、経済的にも米国に近いため、米連邦準備制度理事会(FRB)を意識して金融政策が運営される傾向が見られます。声明文にある今後の金融政策の方針によると、今後数回の会合では引き上げの程度を「状況に応じて」決定する、としています。当然ながら、直接言及はありませんが、FRBの動向はメキシコの金融政策に何らかの影響を与えていると思われます。

もっとも、米国の金融政策を意識しない国の方がはるかに少数派でしょうが、どの国もいつも米国と同一歩調をとるわけではありません。例えば、昨年3月から利上げを開始したブラジルは米連邦公開市場委員会(FOMC)と同時期に開催した9月の会合で据え置きを決定しています。

メキシコはブラジルにやや遅れ、昨年6月から利上げを開始しました。政策金利は9.25%と、インフレ率を上回る水準です(図表2参照)。しかし、声明文からは今後数回の会合での利上げを示唆していること、インフレ見通しを引き上げたことから、当面、米国の金融政策への追随が想定されます。メキシコの通貨ペソは昨年の急落から落ち着きを取り戻しています。

しかし、問題は景気への影響です。先月末に発表されたメキシコ中銀の四半期報告では23年の成長率予想が1.6%と、前回の2.4%から大幅に引き下げられています。なお、先の四半期報告が発表された8月末ごろ、筆者、そして恐らく市場も多くがメキシコ中銀の9月会合における利上げ幅は0.5%を見込んでいたと思われます。引き締めが、経済の下押し圧力となることが想定されます。

それでも、メキシコはペソの安定などプラスの材料もあり、当面は米国追従の金融政策を余儀なくされると思われます。

9月の会合で政策金利を据え置いたブラジルの場合、インフレ率が急速に低下傾向に転じており、消費者物価指数(IPCA-15)は9月が前年同月比で7.96%と、5月に記録したピークの12.20%から急低下しています(図表2参照)。そのうえ、政策金利は13.75%に達していたことから、さらなる引き上げは必要とは考えにくいと見られます。また、市場でも据え置きは織り込まれていたことから、リラへの影響は限定的であったと見られます。

メキシコについては、中銀がインフレ見通しを引き上げるなど、ピークはこれからで利上げペースの減速はあったとしても、据え置きにはもう少し時間が必要と見られます。米国の利上げにお付き合いすることが想定されます。


しかしながら、米国がようやく(景気を吹かしも冷ましもしない)中立金利を超えたばかりであるのに比べ、メキシコの政策金利はメキシコ経済を明確に下押しする水準と見られます。米国の金融政策は他国に影響を与える度合いが高いものの、現局面で他国への影響を懸念する声は少数派です。そうした中、メキシコは米国の政策と歩調を合わせつつも、徐々にデカップリングのタイミングを計ると見ています。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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