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- 環境変化確認編⑨~流動性リスク~
投資先の資産の流動性リスクを正しく把握することは適切なポートフォリオ構築のうえで重要です。
■流動性リスク
今回は流動性リスクについてご説明します。投資を考えるうえで流動性リスクは非常に重要な概念であり、そのリスク特性を十分に理解する必要があります。流動性リスクとは、市場規模や取引量が小さい場合や市場混乱時など買い手が少なくなった場合に、①換金したい時に換金できない、②換金したい量に対し需要が少なく一部しか換金できない、③買い手が少なく大幅な値引きをしなくては換金ができない、といったことが起こるリスクのことです。このような状況が発生すると、投資家は思わぬ損失を被る可能性があるため、流動性リスクの大きさを把握して投資を検討することが重要になります。
一般的に、流動性リスクは市場規模や取引量が小さいほど大きくなります。たとえば、大型株と小型株を比較すると、市場規模、取引量ともに大型株のほうが大きいため、大型株は流動性リスクが相対的に小さいといえます。その他、債券や不動産、オルタナティブ投資等においても、それぞれ流動性リスクの特性は異なります。繰り返しになりますが、流動性が低いことが悪なのではなく、流動性リスクの大きさを理解しないまま投資を行うことが避けるべき投資行動なのであって、投資家のリスク許容度やポートフォリオの状況、目標リターン等によっては、低流動性資産へ投資を行い相対的に高いリターンを狙うような投資行動は十分に経済合理性がある場合が存在します。しかしながら、そのような投資行動にはポートフォリオ全体での適切なリスク管理が必要となり、それには豊富な知識、経験、迅速な投資判断等が必要となる点に注意が必要です。
■ファンドにおける流動性リスク
投資信託で運用する場合、投資先のファンドにおける流動性リスクの1つにファンドの規模があります。ファンドの規模が、そのファンドが投資対象とする資産の市場規模に対して大きすぎた場合、ファンドの設定・解約による資金流出入によって当該資産価格に大きく影響する可能性があります。たとえば、ファンドの純資産総額に比べてわずかな解約であっても、市場における1日の売買代金に対してその取引量が多い場合、需給のバランスを崩しかねません。その結果、適切な価格形成が行われず、場合によっては既述のように適正な価格から大きく下落した価格で取引を行わざるを得ない、もしくは取引が停止されるリスクもあります(図表1)。各市場の時価総額や1日あたりの売買代金を確認し(図表2)、ファンドの規模と比較しながらポートフォリオに入れるファンドを検討することも重要だといえます。
図表1:ファンドにおける流動性リスクのイメージ
図表2:各市場の市場規模
(2025年6月30日時点、売買代金は過去10営業日の平均値)
※上記は市場を代表する指数の構成銘柄のデータであり、指数が表す市場全体を表すデータではありません。例えば、上記の日本国債の時価総額は460兆円となっていますが、これはあくまでもFTSE日本国債指数の構成銘柄の時価総額です。債券指数の場合は、償還まで1年未満の銘柄は構成銘柄に加えないなどの算出ルールがあり、そうした算出ルールに基づき計算された指数のデータを表示しています。
先進国株式:MSCI世界株価指数、新興国株式:MSCI新興国株価指数、日本株式:MSCI日本株価指数、米国株式:MSCI米国株価指数、
中国株式:MSCI中国株価指数、インド株式:MSCIインド株価指数、日本国債:FTSE日本国債指数、米国国債:FTSE米国国債指数、日本REIT:東証REIT指数、米国REIT:MSCI 米国REIT指数、すべて円換算
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ・ジャパン作成
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