Article Title
新興国投資編(12)そもそも債券投資のポイントは?
2020/11/05

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

新興国の債券投資においても、債券投資の基本は同じです。低金利環境の長期化ということを踏まえ、債券投資のポイントを
確認しておきましょう。




Article Body Text

債券投資のリターンの分解

まずは新興国を含めた海外への債券投資から得られるリター ンを分解してみましょう。

債券投資はお金を貸すという性格を持ち、時間をかけて利金 を積上げる投資です。利金を積上げて得られるリターンをイン カムゲインと呼びます。

債券に投資した後、景気動向、物価動向、債券に対する需 給関係等により債券利回りは変化します。債券は、発行日、 額面、利率、償還日が決められていることから、債券利回りは 債券価格の変動によって上下し、債券価格の値下がり時に売 却することで発生する損失をキャピタルロスと言い、債券価格 の上昇によって得られるリターンをキャピタルゲインと呼びます。 このように債券投資から得られるリターンはインカムゲインと キャピタルゲインですが、海外の債券に投資する場合は為替 レートが変動することで得られるリターンが加わります(図表1)。 もちろん、為替が逆方向に動いた場合にはマイナスのリターン となりますので注意が必要です。

 

時間をかけてインカムゲインを積上げる投資

債券投資から得られるリターンは、インカムゲインとキャピタ ルゲインということを説明しましたが、償還まで保有していれ ば、当該発行体にデフォルトが生じないかぎり、保有期間中 の利金が得られ、償還時には額面が戻ってきます。債券投 資は時間をかけて利金を積上げる投資で、図表2の例を用 いて保有(償還)年限毎の利金の積上がり状況を確認してみ ます。ここでは、利率5%で1年後、5年後、10年後を比較し てみましょう。わかりやすくするために、債券価格は変動せ ず、コストもかからないものとして計算します。

例を見ておわかりのように、1年後では5%ですが、5年後 25%、10年後では50%の累積リターンとなっています。当然 のことなのですが、つい「時間をかけて」ということが忘れがち になりますが、時間が大切なのです。

 

リスクと利回りのバランスが大事(その1)

国内金利よりも高い利回りを得ようとして、海外の債券に投 資する場合、日本円を投じて外貨で投資しますので為替変 動リスクを伴います。

日本の現状の金利水準では1%の金利でも高いと思います が、図表3の例で、利回り1%と5%の豪ドル建ての債券に投 資する場合を考えてみましょう。期間5年で債券価格は変 動せず、コストもかからないものとして計算します。 利回りが1%の場合、利金収入が5年間積上がったとしても 豪$5にしかならず、スタート時点よりも5円の円高豪ドル安に なっただけでも、スタート時点よりもマイナスになってしまいま す。一方、利回りが5%ですと、5年間の利金収入の積上がり が豪$25となり、スタート時点よりも10円の円高豪ドル安と なってもプラスとなります。

したがって、海外債券に投資する場合、為替変動の大きさ (リスク)を考慮し相応の利回りを得られるか、リスクと利回り のバランスはとれているか検討することがとても大切です。

 

リスクと利回りのバランスが大事(その2)

キャピタルゲインについても確認しておきましょう。債券投資 から得られるリターンの分解で、キャピタルゲインは利回り変 化によって債券価格が変動することで生じることを説明しま したが、ここでは例を用いて確認します(図表4)。

残存期間5年の利回り5%、債券価格100円の債券が、利回 り7%まで上昇して買い手と売買が成立する場合と、利回り 3%で売買が成立する場合を例として見てみます。利率5% の債券を7%の利回りで購入するためには価格を100円以下 にしなくてはなりません。価格の計算式は図表4の通りです。 また、3%の利回りにする場合には100円よりも高い価格で購 入することになります。このように、利回りが上昇すれば価格 が下がり、利回りが低下すれば価格が上がる、という関係に あります。

したがって、債券利回りの低い水準のところで投資を開始す るとその後の利回り上昇でキャピタルロスを被ることも想定で きますので注意が必要です。

 

流動性リスク

新興国債券へ投資する場合、流動性リスクについても確認 が必要となります。

流動性リスクとは、市場規模や取引量が小さい場合や市場 混乱時などの買い手が少なくなった場合、①換金したい時に 換金できない、②換金したい量に対して需要が少なく一部し か換金できない、③買い手が少なく大幅な値引きを余儀なく されるといったリスクです。 新興国はまだまだ経済規模自体が小さい国が多くあります。

新興国国債は先進国国債に比較して相対的に利回り面では 魅力的ですが、市場規模は先進国国債と比較すると小さい ことに注意する必要があります(図表5)。

 

通貨の流動性リスク

現地通貨建て新興国国債へ投資する場合、通貨の流動性 リスクにも留意することが必要です。新興国各国の通貨取引 量は少なく先進国通貨に比べて、相対的に流動性リスクが 大きくなります。また、カントリーリスクも忘れてはなりません。 カントリーリスクが顕現化しますと当該通貨との交換が容易で なくなったり、日本に資金を戻す回金に時間がかかったり、と いったことも起こり得ます(図表6)。

したがって、新興国の国債市場規模や通貨取引量、カント リーリスクを勘案しますと、やはり分散投資が必要になります。

 



●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら



関連記事


日付 タイトル タグ
日付
2020/05/07
タイトル 新興国投資編(1)新興国全体への分散投資と1か国への集中投資はどちらがいいのか タグ
日付
2020/05/21
タイトル 新興国投資編(2)新興国投資の魅力と新興国の定義 タグ
日付
2020/06/04
タイトル 新興国投資編(3)そもそもGDPとは? タグ
日付
2020/06/18
タイトル 新興国投資編(4)なぜ新興国の経済成長率は高いのか?何が期待できるのか? タグ
日付
2020/07/03
タイトル 新興国投資編(5)資源価格の動向と新興国経済への影響 タグ
日付
2020/07/16
タイトル 新興国投資編(6)新興国株式市場のインデックスと注意しておきたいポイント タグ
日付
2020/07/30
タイトル 新興国投資編(7)投資とは?新興国は長期が大前提 タグ
日付
2020/08/20
タイトル 新興国投資編(8)新興国の成長の恩恵を受ける投資とは? タグ
日付
2020/09/03
タイトル 新興国投資編(9)そもそも株式投資のポイントは? タグ
日付
2020/09/17
タイトル 新興国投資編(10)新興国の成長の恩恵を投資で受けるとは? 株式編 タグ
日付
2020/10/01
タイトル 新興国投資編(11)株式投資は、本当にインフレ対策として有効なのか? タグ
日付
2020/12/04
タイトル 新興国投資編(13)新興国の成長の恩恵を投資で受けるとは?債券編 タグ
日付
2020/12/17
タイトル 新興国投資編(14)そもそも外国為替のポイントは? タグ
日付
2021/01/07
タイトル 新興国投資編(15)為替レートの変動に影響を与える要因 タグ
日付
2021/01/21
タイトル 新興国投資編(16)新興国の成長の恩恵を投資で受けるとは?為替編 タグ
日付
2021/02/12
タイトル 新興国投資編(17) 流動性のチェック タグ
日付
2021/02/25
タイトル 新興国投資編(18)新興国投資で気をつけるべきリスク タグ
日付
2021/03/12
タイトル 新興国投資編(19)新興国資産をポートフォリオに加えるべき理由 タグ

ESG投資や新興国投資について学びたい方へ

コラム

もっと詳しく学びたい方へ

図解で学ぶ投資のトピック

投資の基礎を学びたい方へ

投資を始める前に知っておきたいこと