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新興国投資編(17)流動性のチェック
2021/02/12

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概要

金融市場における流動性とは、金融商品の換金が容易か否か、あるいは短期間でできるか否かということを指します。また、投資した金融商品をいざ換金しようとした時に買い注文が少なく、思うような価格で換金できないといったことも含めて流動性リスクと呼びます。そうした事態を回避するためには、投資する金融商品の市場規模や取引量の事前のチェック、流動性のチェックが重要です。




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流動性リスクとは

金融市場における流動性とは、いつでも金融商品の換金が容 易か否か、あるいは短期間でできるか否かということを指しま す。また、投資した金融商品をいざ換金しようとした時に買い 注文が少なく、思うような価格で換金できないといったことも含 めて流動性リスクと呼びます。たとえば、株式の投資家が売り たい株価や株数で、株式を容易に現金化できる場合は、流 動性が高いと言います。逆に、思ったような株価や株数の売 却が困難な状態を、流動性が低いと言います。 したがって、流動性リスクとは、市場規模や取引量が小さい場 合や市場混乱時などの買い手が少なくなった場合、①換金し たい時に換金できない、②換金したい量に対して需要が少な く一部しか換金できない、③買い手が少なく大幅な値引きを 余儀なくされるといったリスクです。 金融市場が安定していたり、活況の場合は流動性リスクの存 在は忘れがちになりますが、流動性リスクは金融市場の混乱 時等で急に買い手が減少したような時に顕現化します。特に もともと市場規模が小さく、取引量が少ない金融市場や個別 金融商品はより注意が必要です。

図表1:流動性リスク

株式市場での個別銘柄の株価形成について(その1)

まずは、株価がどのように決まるのかを確認しましょう。 投資家が発注した株式の売買注文は、証券会社を通じて証 券取引所の「板(気配値)」に集計されます。「板」は銘柄ごと にあり、対象となる銘柄の値段ごとの売買注文株数を示すも ので、「いくら」で「何株数」を買いたい(売りたい)のかを、安く 売ってもいい順、高く買ってもいい順で表示します(図表2)。 図表2の銘柄Aの板例では、一番安く売る注文の1,000円と、 一番高く買う注文990円の間に開きがあるので取引は成立し ません。もしここに、どうしても買いたいので1,000円で300株 買うという人が現れると、1,000円で300株の取引が成立して、 1,000円200株の売り注文が残ります。

図表2:個別銘柄の板(気配値)例(その1)

株式市場での個別銘柄の株価形成について(その2)

株式市場には、購入価格を指定せずに買える価格で買い たい株数分を買う「成行(なりゆき)注文」があり、価格を指定 する「指値(さしね)注文」に優先します(図表3)。 例えば、銘柄Aの買いの成行注文が10,000株入ってきまし た。すると、売り急ぐ必要もないな、こんな値段で売らなくて もいいなという人が売り注文をキャンセルして減らしてしまい、 その日の値幅制限の1,300円までの価格で残った売り注文 ①~⑤を全部買っても800株で全然足りません。そこで、ス トップ高買い気配となり、残り9,200株は売買が成立せずに 残ります。

図表3:個別銘柄の板(気配値)例(その2)

株式市場での個別銘柄の株価形成について(その3)


逆に、銘柄Aに20,000株の売りの成行注文が入るとどうな るでしょう(図表4)。今度は大量の売り注文が入ったことで、 それまでの買い注文が取り下げられて減ります。すると、前 日比300円の値幅制限の700円までで合計800株の買い 注文しかなく、数量が極端に合わずストップ安売り気配の状 況になります。このままで株式市場の引けの時間になります と、残り19,200株は売れ残ったままとなります。 これが、換金したいときに買い需要が少なく、大幅な値引き を余儀なくされるといった流動性リスクの顕現化です。 ここまでは、A社を例にして個別株式の株価形成の仕組み から流動性リスクを見ましたが、次では各金融市場の状況 を確認しましょう。

図表4:個別銘柄の板(気配値)例(その3)

各金融市場の市場規模等を見ていきましょう

流動性リスクは、市場規模が小さいほど大きくなります。また、 市場規模と比べて大きな資金を運用する投資家が存在して いたり、買い手が偏っている場合も流動性リスクは大きくなりま す。つまり、市場規模を把握することで、ある程度流動性リス クの大きさを把握することができます。ここでは、主要な金融 市場である株式市場、債券市場、為替市場を見ていきます。

株式市場の市場規模等

株式市場の大きさと流動性リスクを知るために代表的な指標と なるのが時価総額と売買代金です。時価総額というのは、その 時の時価で全ての発行済証券を買うために必要な金額、売買 代金というのは1日に成立した売買取引の合計金額のことです。 この1日の売買代金というのがファンドを運用できる金額の上限 の1つの目安になります。 例えば、先進国株式に広く分散した銘柄で構成されるMSCIワー ルド指数は1,583銘柄で構成され、時価総額は6,004兆円、1 日の売買代金は約15兆4千億円と巨額です。これに対し、ベト ナム株式のみに限定したMSCIベトナム指数は17銘柄で構成さ れ、時価総額はわずか24兆円とMSCIワールド指数の約0.4%、 1日の売買代金は410億円に過ぎません。新興国の株式市場 は中国以外はまだまだ市場規模が小さく、流動性リスクが懸念 されます。こうしたことからも、新興国の株式に投資する場合は 分散投資が有効だと考えられます。

図表5:地域・国別の株式市場規模 (2020年12月末)

地域・国別MSCI指数、MSCI指数を構成している銘柄での数値です。 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
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