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新興国投資編(19)新興国資産をポートフォリオに加えるべき理由
2021/03/12

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概要

今後、中長期的な運用を考える際、新興国資産はポートフォリオにおいて欠かせないパーツの一つになると考えられます。その理由は、先進国資産のみのポートフォリオでは、十分なリターンの獲得が難しくなる可能性があるためです。一方、新興国経済は人口増加を背景に高い経済成長が見込まれており、新興国資産も相対的に高いリターンが期待されます。また、先進国資産のバリュエーションには過熱感が出ており、バリュエーション調整によるリターンの悪化も懸念されています。




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新興国資産をポートフォリオに加えるべきか?

今後、中長期的な運用を考える際、ポートフォリオに新興国資産の組み入れは必要でしょうか。ここ数年、米国株式のパフォーマンスが好調だったこともあり、米国を中心とした先進国資産のみでポートフォリオの構築を検討するという方が多いのではないかと思います。しかし、新興国資産は今後のポートフォリオ構築に欠かせないパーツの一つになると考えられます。今回は、新興国資産をポートフォリオに加えるべき理由についてご説明します。

資産の本源的なリターンを考える上で、その資産が属する国・地域の経済成長は重要です。先進国の経済成長率と主要先進国(日米独)の国債利回りの関係を見てみると、経済成長率の低下とともに国債利回りも低下していることがわかります(図表1)。一方、株式については、自国以外で収益を伸ばしているグローバル企業が増加しているため一概には言えませんが、自国経済の成長率低下は企業の利益成長率(EPS成長率)のマイナス要因になると考えられます。では、今後の先進国経済の先行きを考える上で重要になる要因は何でしょうか。その一つは人口です。

図表1:先進国の成長率と国債利回りの推移
(期間:年次、1980年〜2020年、日本は1987年、ドイツは1989年以降)

出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

            

一般的に経済規模はGDPの大きさで表され、GDPを人口で割ると1人当りGDPを計算することができます。1人当りGDPは、1人当りどの位の付加価値を生み出したかを示しており、経済の効率性や生産性を表します。またGDPは、1人当りGDPに人口を乗じて計算できるので、人口増加は経済の拡大を意味します。国連の予想によると、現在、約78億人の世界人口は、2050年には97億人を超えるまで増加すると予想されていますが、先進国の人口は横ばいであり、人口増加によるGDPの拡大は望めない状況です(図表2)。一方、新興国は現在の水準から2050年までに約30%程度人口が増えると予想されています。このように、今後のGDPの成長から考えると、新興国資産は相対的に高いリターンが期待でき、ポートフォリオに組み入れることで、ポートフォリオ全体のリターンの底上げに繋がると考えることができます。

図表2:世界の人口の推移

出所:国連のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

リーマンショック以降の新興国株式のパフォーマンスの劣後

しかし、そうは言っても新興国資産の良好なパフォーマンスは期待できないと考える方はいらっしゃると思います。それは、2008年のリーマンショック以降の新興国株式のパフォーマンスを念頭に置いた考えであると推測します。確かに、2008年末から直近まで、新興国株式のパフォーマンスは先進国株式に対して劣後していました(図表3)。その間、新興国の経済成長率は先進国の経済成長率を上回っていたにもかかわらずです。このような状況を生み出した要因の一つに、先進国の中央銀行による積極的な金融緩和策が考えられます。

図表3:先進国株式、新興国株式、米国株式の比較
(期間:2006年12月~2021年2月、円換算、2008年12月末を100として指数化)

出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

     

リーマンショック以降の不況に対応するために、世界各国で大規模な金融政策が実施されました。特に、ダメージの大きかった米国を中心に、先進国では大規模な金融政策が実施され、金利の引き下げのみならず、債券を中心とした資産買い入れが行われました。また、欧州や日本ではマイナス金利も導入されています。その後、経済は徐々に回復しましたが、昨年のコロナショックに対応するため、再度、先進国の中央銀行は資産の買い入れを強めているという状況です。新興国も同様に金融緩和を行いましたが、その度合いや規模は先進国に比べると小さいものでした。例えば過去18年ほどの米国の例を見ると、政策金利の引き下げ後あるいは低位維持期間に、また、資産買い入れを行い量的緩和をしている米中銀の資産規模の拡大期間に株価が上昇してきたことが確認できます(図表4)。


図表4:米政策金利と米中銀の資産規模、米国株式の推移
(期間:2003年1月〜2021年2月、月次、米国株式(米ドルベース)2003年1月末を100として指数化)

出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

      

このように、リーマンショック以降の先進国株式と新興国株式のパフォーマンスの差の大きな要因の一つは、金融緩和の程度の違いと考えることができます。しかしその結果、先進国株式のバリュエーションは大きく高まり割高な状況になってしまいました。つまり、金融緩和は企業利益の増大以上に、株式のPERの上昇をもたらしたのです(図表5)。

図表5:先進国株式、新興国株式、米国株式のPERの推移
(期間:月次、2003年1月〜2021年2月)

出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

相対的に高いリターンが期待できる新興国資産はポートフォリオの重要なパーツの一つ

それでは最後に、より長いデータを用いて新興国資産の特性を見ていきたいと思います。


2000年1月以降の期間で見てみると、実は新興国株式の方が、先進国株式よりもリターンが高かったことがわかります。また、どれだけ効率的にリターンを稼いでいるか、1単位当りのリスクに対するリターン(リターン/リスク)で比べてみても、投資効率はほぼ同水準でした(図表6)。債券については、2002年12月以降、新興国国債(米ドル建て・現地通貨建て)のリターンは、世界国債を上回りました。また、米ドル建て新興国国債は、投資効率の面でも世界国債を上回っています(図表7)。

図表6:先進国株式、新興国株式、米国株式の比較
(期間:2000年1月~2021年2月、円換算、2000年1月を100として指数化)

出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

図表7:世界国債、米ドル建て・現地通貨建て新興国国債の比較
(期間:2002年12月~2021年2月、円換算、2002年12月末を100として指数化)

出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

     

このように、より長期で見ると、新興国資産の見え方も異なってきます。そして、さらに重要なポイントは、これらのデータが過去の情報であるという点です。投資は未来に向かって行うものであるため、過去のデータは参考にはなるものの、その再現性についても考慮しなければなりません。人口動態から考えると、先進国経済は今後鈍化する可能性があり、先進国資産のリターンも、それに伴って低下する恐れがあります。また、金融政策によって押し上げられたバリュエーションが、今後調整(下落)することで、リターンが悪化することも懸念されます。一方、新興国資産は高い経済成長に支えられ株式・債券共に相対的に高いリターンが期待でき、またバリュエーション面でも先進国資産に比べると過熱感は少ない状況です。

もちろん、新興国資産にリスクが無いというわけではありません。前回のレポートでご説明した通り、新興国特有のリスクが、しばしば新興国資産に悪影響を与えています。しかし、中長期的な視点で考えると、新興国資産はリターンが期待できる数少ない資産の一つであり、ポートフォリオを構築する上で重要なパーツであると言えます。

 

※本レポートの図表内に使われている指数は、以下の通りです。
新興国株式:MSCIエマージング・マーケット指数、先進国株式:MSCIワールド指数、米国株式:MSCI米国指数、世界国債:FTSE世界国債指数、米ドル建て新興国国債:JPモルガンEMBIグローバル・ディバーシファイド指数、現地通貨建て新興国国債:JPモルガンGBI-EMグローバル・ディバーシファイド指数

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