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金融相場から業績相場へのシフトが進む株式市場
田中 純平
2021/07/12

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概要

2020年は主に予想PER(株価収益率)の拡大が株式市場の上昇をけん引する「金融相場」となったが、今年の株式市場ではむしろ予想PERは縮小傾向にある。その一方で、予想EPS(一株あたり利益)は今年に入ってからも上昇基調が続いており、足元では利益成長が株式市場の上昇をけん引する「業績相場」へのシフトが進んでいる。



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先進国株式市場は引き続き堅調な展開

MSCI先進国株指数のチャートから明らかなとおり、先進国株式市場は昨年3月のコロナショック後は堅調な展開となっている(図表1)。この要因として一般的に挙げられるのが、主要各国地域における①大規模な財政支出、②積極的な金融緩和、そして③新型コロナワクチンの接種拡大だ。

しかし、②の積極的な金融緩和が「現在進行形」で行われているにもかかわらず、予想PERは年初来で低下傾向にある(図表2)。昨年3月のコロナショックの際には予想PERが12倍台まで低下し、その後は昨年6月にかけて21倍台まで急上昇するなど、2020年は予想PERの拡大が株式市場の上昇を主にけん引する「金融相場」となった。だが、今年に入ってからの株式市場では、むしろ予想PERが幾分低下する逆転現象が起こっている。

利益成長が株式市場の上昇を牽引する「業績相場」へのシフトが継続中

一方、予想EPSは昨年3月にボトム(底)をつけた後、右肩上がりで上昇基調となっている(図表3)。予想PERの急上昇からも見て取れるように、コロナショック直後の先進国株式市場は期待先行型で上昇していた(予想EPSは低迷)。

しかし、新型コロナワクチンの開発が急ピッチで進められる中、経済正常化のシナリオが徐々に現実味を帯びていく過程で、その後は企業業績の見通しも上方修正が進んだ。そして、主要各国で新型コロナワクチンが緊急承認され、ワクチン接種が拡大していくにしたがって、予想EPSはさらに上昇傾向が強まり、その傾向は現在でも続いている。つまり、株式市場では上昇のけん引役が予想PER(金融相場)から利益成長(業績相場)へシフトしていることがうかがえる。

テーパリングはすでにコンセンサス化。今後はバリュエーションよりも企業業績が重要に

すでにFRB(米連邦準備制度理事会)によるテーパリング(量的緩和縮小)についてはコンセンサス化しており、年内にFOMC(米連邦公開市場委員会)又はジャクソンホール会議においてテーパリング実施に向けた言及があったとしても、大きなサプライズにはなりにくい状況だ。この状況を反映して予想PERが年初来で低下傾向にあるのであれば整合性が取れる。今後の相場を見通すうえでは、企業業績の見通しがより一層重要になるだろう。


田中 純平
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系運用会社に入社後、主に世界株式を対象としたファンドのアクティブ・ファンドマネージャーとして約14年間運用に従事。北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードの受賞歴を誇る。ピクテ入社後はストラテジストとして、主に世界株式市場の投資戦略などを担当。ピクテのハウス・ビューを策定するピクテ・ストラテジー・ユニット(PSU)の参加メンバー。2019年より日経CNBC「朝エクスプレス」に出演。2023年より週刊エコノミスト「THE MARKET」に連載。日本経済新聞ではコメントが多数引用されるなど、メディアでの情報発信も積極的に行う。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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