Article Title
不動産規制の緩和観測が高まる中国株式市場
田中 純平
2021/11/15

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

中国では中国恒大集団をはじめ、資金繰りに窮する不動産会社が相次いでいることから、予断を許さない状況が続いている。しかし、足元では不動産規制が緩和される可能性が報じられており、実現すれば中国株式市場に対する冷え切った投資家心理が好転する可能性も出てきた。



Article Body Text

中国恒大集団以外にも資金繰りに窮する不動産会社が相次ぐ

中国恒大集団が発行した米ドル建て社債3本の30日間の支払猶予期限が11月10日に控えていたことから、マーケットでは中国恒大集団が支払いを履行できるかどうか注目されていたが、報道によれば期限通りに支払いが行われたようだ。

このように中国恒大集団が綱渡りの債務返済を続ける中、他の中国不動産会社でも資金繰りに窮する事例が相次いでいる。

9月27日には融創中国(Sunac China)が浙江省紹興市での事業に支障をきたしたとして紹興市に特別な政策支援を求めたと報じられた(その後同社は否定)。花様年控股集団(Fantasia Holdings Group)は10月4日、同日に返済期限を迎えた米ドル建て社債を償還できなかったことを明らかにし、格付け会社から部分的な債務不履行(デフォルト)と認定されたほか、10月15日には中国地産集団(China Properties Group)が米ドル建て社債の元利金を支払えなかったと公表した。また、新力控股集団(Sinic Holdings Group)は10月18日に期限を迎えた米ドル建て社債を償還できなかったほか、10月26日には當代置業(Modern Land China)も同様に米ドル建て社債を償還できなかったと発表した。さらに、11月4日には佳兆業集団(Kaisa Group Holdings)が同社の保証が付いた理財商品の支払いを実施できなかったと発表した。

 

中国株式市場に反転の兆し?

中国の不動産会社が依然として資金繰りに困窮する状況に変化はないものの、中国株式市場は反転の兆しが表れている。

きっかけは中国当局による不動産規制の緩和観測だ。比較的健全な不動産会社が資金繰りに問題を抱える不動産会社から資産を取得しやすくなるよう、資産を取得した側に適用される「三条紅線」と呼ばれるレバレッジ規制を緩和させる可能性があると米国メディアが11月10日に報じた。さらに、中国メディアは中国不動産会社による中国国内の債券発行に関する規制が緩和される可能性があると報じている。報道によれば、債券は銀行間市場において近く発行される見込みだ。

これらの報道を受けて、中国株式市場では不動産株を中心に反発する展開となった。また、11月8日から11日まで北京で開催された第19期中央委員会第6回全体会議(6中全会)を株式市場が波乱無く通過したことも、安心感につながった可能性がある。

現状では不動産規制の緩和は観測記事に過ぎないが、火の無い所に煙は立たない。すでに一部の市場関係者は、2022年後半に開催が予定される5年に1度の中国共産党大会に向けて、中国当局による一連の政策が緩和されると見込みはじめている。不動産会社の経営が厳しいことに変わりはないものの、報道されているように今後規制緩和が打ち出されることになれば、中国株式市場に対する冷え切った投資家心理が好転する可能性がある。当面は中国当局における政策対応の変化に注目すべきだろう。

個別の銘柄・企業については、あくまでも参考であり、その銘柄・企業の売買を推奨するものではありません。


田中 純平
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系運用会社に入社後、主に世界株式を対象としたファンドのアクティブ・ファンドマネージャーとして約14年間運用に従事。北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードの受賞歴を誇る。ピクテ入社後はストラテジストとして、主に世界株式市場の投資戦略などを担当。ピクテのハウス・ビューを策定するピクテ・ストラテジー・ユニット(PSU)の参加メンバー。2019年より日経CNBC「朝エクスプレス」に出演。2023年より週刊エコノミスト「THE MARKET」に連載。日本経済新聞ではコメントが多数引用されるなど、メディアでの情報発信も積極的に行う。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら



関連記事


S&P500指数にみる「原子力ルネサンス」

米利下げでS&P500指数はどうなる?

なぜ生成AI(人工知能)関連株は急落したのか?

S&P500指数が急反発した理由と当面の注目点

日経平均株価が乱高下 パニック相場の真相

米中小型株の復活か?ラッセル2000vsナスダック100