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過去、米国では利上げ開始後、金価格は上昇する傾向にあった
塚本 卓治
2022/01/14

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概要

過去4回の米国の利上げ局面では利上げ開始前にその利上げの悪材料は市場に織り込まれ、利上げ開始後に金価格はプラスのリターンとなる傾向があった。仮に過去4回の利上げ局面と同様の動きとなるのであれば、今回利上げ開始が予想されている3月までは、金をポートフォリオ分散の一角として組み入れる良い機会となる可能性があると考える。



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米金融当局のタカ派的スタンスは、既に市場に織り込まれている可能性がある

米国では裾野の広い物価上昇を受け、米連邦準備制度理事会(FRB)当局者からも、2022年3月からの利上げを正当化するコメントが相次いでいる。またフェデラル・ファンド(FF)金利先物を見ると、昨年の10月末と比較して、より早いペースでの利上げが市場には織り込まれており、1月13日時点では年内の利上げ回数の予想は既に3回〜4回まで増えている(図表1)。

これを受けて実質金利が急上昇するなど金価格にとってマイナス要因がありながらも、インフレに強いとされる金価格は底堅い値動きが続いている。一般に市場は将来の悪材料が予測された段階で先に織り込みに行き、実際に悪材料が出ると材料出尽くしという事でかえって上昇することも多い。そのため利上げ開始後の金価格の動きが注目される。

過去4回の利上げ局面では、利上げ開始前の金価格のパフォーマンスはマイナス、利上げ開始後、3ヵ月以降はプラスの傾向があった

そこで、過去4回の利上げ局面で利上げが開始されるまでの期間と利上げ開始後で金価格がどのようなパフォーマンスを示したのかを調べてみた(図表2)。すると、利上げ開始まではマイナスのリターンとなったが、利上げ開始後はプラスのリターンに転じる傾向があった。

もちろん、金価格は政策金利の引き上げ予想だけで動くものではない。短期的には実質金利やドル指数の動向、リスク許容度の変化などに左右される傾向がある。また、長期的には拡大したマネーの量が相対的に希少性の高い金の価値を高めて行くと考えられる。

一方で、足元の完全雇用に近づいた雇用情勢や裾野の広い物価の急上昇を受け米金融当局は急速にタカ派色を強め、テーパリングは加速、利上げ開始のタイミングも3月へと前倒しが予想されているが、こうした悪材料はすでに金融市場には相当程度織り込まれているとも考えられるのではないだろうか。

仮に過去4回の利上げ局面と同様の動きとなるのであれば、今回利上げ開始が予想されている3月までは、金をポートフォリオ分散の一角として組み入れる良い機会となる可能性があると考える。


塚本 卓治
ピクテ・ジャパン株式会社
エグゼクティブ・ディレクター 運用本部 投資戦略部長

日系証券会社にて債券およびデリバティブ業務に従事した後、外資系運用会社および日系ファンド・リサーチ会社にて投資信託のマーケティングを担う。通算20年以上にわたり運用業界で世界の投資環境を解説。ピクテではプロダクト・マーケティング部長等を経て、現職。経験豊富なストラテジストが揃う投資戦略部を統括する傍ら、自らも全国の金融機関や投資家を対象に講演を行う。マサチューセッツ工科大学(経営学修士)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト


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