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米長短金利の逆転から景気後退入りまで米国株は上昇するのか?
田中 純平
2022/04/11

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概要

米長短金利の逆転(米10年国債利回りー米2年国債利回り)は米景気後退の予兆とも言われているが、米長短金利が逆転してから景気後退入りするまでのS&P500指数のパフォーマンスはむしろ上昇するケースのほうが多かった。しかし、唯一の例外は2000年~01年のITバブル崩壊時の値動きで、このときは米長短金利の逆転から景気後退入りまで約9%も下落した。



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米国が景気後退入りすると米国株のパフォーマンスは過去悪化

米10年国債利回りと米国2年国債利回りの差である長短金利差が4月1日に終値ベースでマイナスに転じた(図表1)。足元では、米連邦準備制度理事会(FRB)による積極的な量的引き締め観測(米10年国債需給の悪化)等が織り込まれるかたちで長短金利差は再びプラス圏まで戻ってはいるが、前回のレポートでも指摘したとおり長短金利の逆転は景気後退の予兆とも言われており軽視することはできない。

米国が景気後退入りするとS&P500指数のパフォーマンスは実際どうなるのだろうか?1980年以降で発生した米国の景気後退局面は計6回ある。これらの局面において、米国が景気後退入りしてから最安値をつけた時点までのS&P500指数の騰落率を月次ベースで計測すると、大半の期間で-10%を超える下落率となった(例外は1980年の景気後退期で約-5%)。「株式は経済を映す鏡」とも言われるが、まさに教科書通りの値動きを示していたことが分かる(図表2)。

米長短金利逆転から景気後退入りするまでS&P500指数は上昇するケースが多いが…

注意が必要なのは、米長短金利(米10年国債利回りー米2年国債利回り)逆転から景気後退入りまでのS&P500指数の値動きだ。なぜなら、景気後退入りした後のS&P500指数のパフォーマンスは大きく悪化するものの、米長短金利逆転から景気後退入り(直前)までのパフォーマンスは反対に上昇するケースが多いからだ(図表3)。

だが、2001年の景気後退直前のS&P500指数の値動きは例外的だった。米長短金利が月末時点で逆転したのは2000年2月末、景気後退入りしたのは2001年3月だったが、その間のS&P500指数の騰落率(配当無し、2000年2月末~2001年2月末)は-9%だった。この時はITバブルが崩壊し、米国株のバリュエーション調整が進行中だったことがS&P500指数のパフォーマンスに影響した可能性がある。

S&P500指数の市場予想PER(株価収益率、12ヶ月先)は2000年2月末時点で22.8倍であるのに対し、2022年3月末時点では19.4倍と決して割安とは言えない水準だ。FRBによる急激な金融引き締め(利上げ+量的引き締め)によって米国株がバリュエーション調整を引き起こすか否かが、今後のパフォーマンスを左右することになりそうだ。


田中 純平
ストラテジスト

日系運用会社に入社後、14年間一貫して外国株式の運用・調査に携わる。主に先進国株式を対象としたファンドのアクティブ・ファンドマネージャーとして運用に従事。北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードの受賞経験を誇る。アメリカ現地法人駐在時は中南米株式ファンドを担当、新興国株式にも精通する。ピクテ入社後はストラテジストとして主に世界株式市場をカバー。レポートや動画、セミナーやメディアを通じて投資戦略等の情報発信を行う。ピクテのハウス・ビューを策定するピクテ・ストラテジー・ユニット(PSU)の参加メンバー。2019年より日経CNBCに出演中。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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