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注目すべきは「20の法則」 米国株はまだ割高?
田中 純平
2022/07/04

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概要

「20の法則」は、米国CPI(前年同月比)とS&P500指数の実績PERを合計した値が20以上であれば割高、反対に20未満であれば割安、という投資指標だ。至ってシンプルな投資指標だが、70年代のスタグフレーション期や90年代のITバブル期における米国株式市場の投資リスクを的確に表していたことから注目に値する。この法則に従えば、米国株は依然として「割高」だ。



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「20の法則」はシンプルだが注目に値する投資指標

PER(株価収益率)は株価が割高か割安かを判断する最もメジャーな投資指標だが、これに消費者物価指数(CPI)を合算した派生型の投資指標が「20の法則だ」。PERの単位は「倍」、CPIの単位は「%」であるため、本来であれば両者を合算することはできないが、このシンプルな投資指標が株式市場の投資リスクを的確に表す傾向があるので注目に値する。

「20の法則」は、米国CPI(前年同月比)とS&P500指数の実績PERを合計した値が20以上であれば割高、反対に20未満であれば割安、という投資指標だ。1960年1月以降の米国CPIとS&P500実績PERの合計値における過去平均は21.0であることから、概ね過去平均が割高/割安の境界線になっていることが分かる(図表1)。

この投資指標が割高(=20以上)な時にS&P500指数への投資を開始したパターンと、割安(=20未満)な時にS&P500指数への投資を開始したパターンの事後平均リターンを比較したのが図表2になる。これを見ると、6ヶ月後平均リターンと12ヵ月後平均リターンそれぞれにおいて、割安(=20未満)のほうが事後リターンが高くなる傾向が見て取れる。

「20の法則」に従えば、米国株は依然として割高な水準

CPIと実績PERを合算する意義は思いのほか大きい。例えば90年代のITバブル期であればCPIは低かったが、実績PERが極端に高かったため、合計値は20を優に超えていた。また、70年代のスタグフレーション期では実績PERこそ高くはなかったが、CPIが急激に加速したため、やはり合計値は20を超えていた。いずれのケースもS&P500指数はその後軟調に推移したので、CPIと実績PERに着目した「20の法則」はあながち無視できない。

2022年6月時点における米国CPI(2022年5月時点)とS&P500実績PERの合計値は27.6だ。額面通り受けとれば、現在の米国株は依然として「割高」ということになる。

コロナショック後の推移を見たのが図表3だ。CPIと実績PERの合計値が30を超えたあたりから6ヵ月後リターンが悪化しはじめていることが分かる。今後、米国株が再び「割安」となるには、①CPIだけが低下、②実績PERだけが低下、又は③CPIと実績PERが両方低下、の3つのシナリオしかない。おそらく3番目のシナリオが現実的だろう。 


田中 純平
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系運用会社に入社後、主に世界株式を対象としたファンドのアクティブ・ファンドマネージャーとして約14年間運用に従事。北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードの受賞歴を誇る。ピクテ入社後はストラテジストとして、主に世界株式市場の投資戦略などを担当。ピクテのハウス・ビューを策定するピクテ・ストラテジー・ユニット(PSU)の参加メンバー。2019年より日経CNBC「朝エクスプレス」に出演。2023年より週刊エコノミスト「THE MARKET」に連載。日本経済新聞ではコメントが多数引用されるなど、メディアでの情報発信も積極的に行う。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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