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- 米アップル株急落に見る米中対立の「教訓」
米アップル社の時価総額は9月6日~7日の2日間で約28兆円減少した。中国政府によるiPhone使用禁止報道が事の発端だが、2018年から続く「米中対立」のコンテクスト(文脈)に過ぎない。米中のディカップリング(経済分断)が進む中、来年11月の米大統領選挙に向けて米国の対中強硬姿勢がますます強まることが警戒される。
米アップル株の時価総額が2日間で約28兆円吹き飛ぶ
米アップル株は9月6日に前日比3.58%安、7日には同2.92%安と、2日間連続で急落する展開となり、時価総額約28兆円が消失した(図表1)。きっかけは中国政府のiPhone使用禁止報道だ。米国の主要メディアは、中国政府が政府関係者のiPhone使用を一部禁止しているとし、別の主要メディアもその対象が国有企業の従業員にまで広がっていると報じた(その後、中国政府はこの報道を否定)。
そもそも米国政府は昨年10月に先端技術を使用した半導体・半導体製造装置の対中輸出を規制したほか、今年8月には先端半導体やAI(人工知能)、量子技術にかかる対中投資を厳しく制限する方針を発表していた(図表2)。今回の中国政府によるiPhone使用禁止令は、その報復措置と捉えられる。
米国政府は中国の通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)を2019年5月に原則、輸出禁止の対象とする「エンティティ・リスト(禁輸リスト)」に加えたことから、同社は第5世代(5G)スマホ用の半導体を米国から調達し、5Gスマホを生産することが事実上困難となっていた。しかし、今年8月に同社は5Gに相当する通信に対応した新型スマホ「Mate60Pro」を発売、中国の半導体製造受託会社の中芯国際集成電路製造(SMIC)が製造したチップが搭載されている模様で、iPhoneの対抗馬と目されている。今回のiPhone禁止報道はこの「Mate60Pro」の発売時期とも重なっており、愛国心に訴えながら中国におけるiPhoneの市場シェアを奪取する狙いもあったと推察される。
米中対立はインデックス投資にも影響
先進国株や米国株を投資対象としたインデックス型の上場投資信託(ETF)や投資信託を保有する個人投資家であれば、もはや米中対立は他人事ではない。先進国株の代表的な株価指数であるMSCI世界株価指数における米アップル株の構成比率は5.2%で組入上位トップ、MSCI米国株価指数ではその比率が7.4%にもなる(いずれも23年8月末時点)。今年、株価が3倍超となった米エヌビディア株でさえ、MSCI世界株価指数における構成比率は2.1%に過ぎない。米国企業1社の地政学的リスクが、米国株、ひいては先進国株全体の投資リターンに影響を及ぼすほど、米アップル社の寡占化が進んだとも言えるだろう。
かつて日本と中国の関係は「政冷経熱(政治関係は冷え込んでいるが、経済関係は熱を帯びた状態)」と評されたが、いまや米国と中国の関係は「政冷経冷」に近い。それを象徴するかのように、米国の国別輸入金額の第1位は今年2月以降、中国からメキシコへ取って代わっている(図表3)。
また、海外から中国への対中直接投資(年初来累積)も、23年7月時点で前年同期比マイナス4%と低迷が続く(図表4)。
米国における中国経済の依存度が低下し、「ディリスキング(リスク回避)」ならぬ「ディカップリング(経済分断)」が進行する中、来年11月の米大統領選挙に向けて米国の対中強硬姿勢はますます強まることが警戒される。
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