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米国株の上値余地は?利益成長率から考察
田中 純平
2024/02/20

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概要

米国株式市場の代表的な株価指数であるS&P500指数は2月9日、引け値ベースで5,026.61ポイントをつけ、史上初の5,000ポイント突破となった。しかし、5,000ポイントに特段の含意は無く、「バリュエーション」や「企業利益」等の見通しが引き続き重要であることに変わりは無い。前回配信のDeep Insightでは「バリュエーション」について考察したため、今回は「企業利益」に焦点を当てる。



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S&P500指数は5,000ポイント超え

米国株式市場の代表的な株価指数であるS&P500指数は2月9日、引け値ベースで5,026.61ポイントをつけ、史上初の5,000ポイント超えとなった(図表1)。当日は欧米でもセンセーショナルに報道されたが、5,000ポイント突破(S&P500指数の名目値)に特段の含意は無く、冷静に 「バリュエーション」 や「企業利益」等の分析に徹すべきだろう。2月8日に配信したDeep Insight「米国株のバリュエーションはなぜ上昇したのか?」では「バリュエーション」について考察したため、今回は「企業利益」に焦点を当てたい。

23年10-12月期における市場予想EPS成長率は上方修正

S&P500指数構成企業500社のうち、全体の79%がすでに直近決算を発表済みだ(2月16日時点)。直近決算を発表済みの企業と未発表の企業のEPS(1株当たり利益)を合わせた23年10-12月期の市場予想EPS成長率は、決算発表が本格化した1月26日から上方修正が入り、2月16日時点では前年同期比+7.0%まで上昇した(図表2)。

この上方修正をけん引したのは、一般消費財・サービス、資本財・サービス、情報技術、コミュニケーション・サービスなどのセクターだ(図表3)。

一般消費財・サービスでは、アマゾン・ドット・コム(実績$1.009 vs 市場予想$0.805)、フォード・モーター(実績$0.290 vs 市場予想$0.133)、マリオット・インターナショナル(実績$3.570 vs 市場予想$2.125)などが寄与。資本財・サービスでは、ウーバー・テクノロジーズ(実績$0.660 vs 市場予想$0.168)、サウスウエスト航空(実績$0.370 vs 市場予想$0.117)などが寄与。情報技術では、マイクロソフト(実績$2.930 vs 市場予想$2.775)、アップル(実績$2.180 vs 市場予想$2.105)、クアルコム(実績$2.750 vs 市場予想$2.363)などが寄与。そして、コミュニケーション・サービスではメタ・プラットフォームズ(実績$5.330 vs 市場予想$4.913)などが寄与した。このように見ると、主にマグニフィセント・セブンの一角が市場予想EPS成長率の上方修正(EPSリビジョン)をけん引していることが分かる。

今後は市場予想EPSの上方修正が米国企業全体に広がるかがポイント

23年10-12月期の市場予想EPS成長率は大きく上方修正したものの、24年通期の市場予想EPS成長率は依然として前年比+10%弱に留まっており、むしろ緩やかな下方修正が続いている(図表4)。

現状では主に生成AIブームによる恩恵を享受する限られた超大型成長株が米国企業全体の利益成長率を押し上げる構図となっているが、今後S&P500指数が「安定的」に上昇していくためには、(すでにバリュエーションが高いため)米国企業全体の利益成長率が回復する必要があるだろう。

その上で注目すべきはISM製造業景況感指数だ。ISM製造業景況感指数とS&P500指数の市場予想EPS成長率(12ヵ月先、前年同月比)との間には比較的高い相関があり、足元では底打ちのタイミングも似通う(図表5)。

今後、ISM製造業景況感指数が好不況の分かれ目である50を超えて上昇すれば、米国企業全体の利益回復にも厚みが増してくるだろう。


田中 純平
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系運用会社に入社後、主に世界株式を対象としたファンドのアクティブ・ファンドマネージャーとして約14年間運用に従事。北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードの受賞歴を誇る。ピクテ入社後はストラテジストとして、主に世界株式市場の投資戦略などを担当。ピクテのハウス・ビューを策定するピクテ・ストラテジー・ユニット(PSU)の参加メンバー。2019年より日経CNBC「朝エクスプレス」に出演。2023年より週刊エコノミスト「THE MARKET」に連載。日本経済新聞ではコメントが多数引用されるなど、メディアでの情報発信も積極的に行う。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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