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米利下げでS&P500指数はどうなる?
田中 純平
2024/09/27

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概要

米連邦準備制度理事会(FRB)が0.5%の利下げを決定した翌日の9月18日、S&P500指数は前日比1.70%高となり、史上最高値を更新する展開となった。なぜ、S&P500指数は大幅高となったのか?過去の利下げ局面からヒントを探る。



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FRBは4年半ぶりの利下げ開始

米連邦準備制度理事会(FRB)は9月17日から18日にかけて開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)で、0.5%の利下げを決定した。FRBが最後に利下げを実施したのは2020年3月であり、約4年半ぶりの金融緩和政策となる(図表1)。

フェデラル・ファンド(FF)金利先物市場から算出される市場の政策金利予想では、FOMC直前の9月17日時点で0.25%の利下げ確率が36%、0.5%の利下げ確率が64%となっていたため、0.5%の利下げはそれほど大きなサプライズでは無かったと言える(図表2)。

これは、ダドリー前NY連銀総裁や米ウォール・ストリート・ジャーナル紙の著名記者が、0.5%の利下げの必要性を事前に指摘していたことが大きいだろう。しかし、FOMCが開催された翌日のS&P500指数は前日比1.70%高となり、史上最高値を更新する展開となった。

通常の利下げ幅である0.25%ではなく、0.5%の利下げが必要であったかどうかは市場で大きな論争の的となっているが、当レポートでは過去の利下げ開始後のS&P500指数のパフォーマンスを分析することで、そのインプリケーションを示すことに専念したい。

利下げ開始後の株価パフォーマンスは一様ではない

FF金利がFRBの主要な政策ツールになったと言われる1980年代後半からの利下げ局面を振り返ると、株価パフォーマンスは一様でなかったことが分かる。FRBの利下げ開始時点から12カ月後のS&P500指数のパフォーマンスは、1989年、1995年、1998年、2019年で上昇した一方、2001年と2007年では下落した(図表3)。

この株価パフォーマンスの差は、米国の景気動向に起因する。米国経済は2001年3月から2001年11月、および2007年12月から2009年6月にかけて景気後退期に入っており、米国株式市場は業績悪化で株安になる「逆業績相場」となった。一方、それ以外の利下げ局面では景気後退に陥ることは無く、むしろ米国株式市場はFRBの金融緩和政策で株高になる「金融相場」の様相となっていた。

今回の利下げ局面で米国は景気後退に陥るのか?

ニューヨーク(NY)連銀が算出する9月25日時点のGDP予測値を示すGDPナウキャストは、24年7-9月期で前期比年率+3.00%、24年10-12月期で同+2.74%となっており、今のところ景気後退の兆しは見られない。むしろ、足元ではその予測値が上方修正されており、市場参加者の想定よりも景気見通しが堅調になる可能性すらある(図表4)。

さらに、S&P500指数の市場予想1株当たり利益(EPS)成長率は、24年が前年比+9.3%、25年が同+14.3%となっており、企業業績も高成長が続く見通しだ(図表5)。

このまま米国経済がソフト・ランディング(軟着陸)を達成する確度が高まれば、米国株式市場は「逆業績相場」ではなく、「金融相場」と「業績相場」のミックス相場になるかもしれない。米大統領選を控えて様子見ムードが広がる可能性もあるが、市場参加者は先んじてそのシナリオを描き始めたとも考えられる。


田中 純平
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系運用会社に入社後、主に世界株式を対象としたファンドのアクティブ・ファンドマネージャーとして約14年間運用に従事。北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードの受賞歴を誇る。ピクテ入社後はストラテジストとして、主に世界株式市場の投資戦略などを担当。ピクテのハウス・ビューを策定するピクテ・ストラテジー・ユニット(PSU)の参加メンバー。2019年より日経CNBC「朝エクスプレス」に出演。2023年より週刊エコノミスト「THE MARKET」に連載。日本経済新聞ではコメントが多数引用されるなど、メディアでの情報発信も積極的に行う。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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