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- 日経平均株価 一時5万円割れの背景と今後の展望
月初来の日経平均株価は一時5万円割れの展開となったが、その背景には人工知能(AI)関連株を中心に株式市場がバブル状態にあるとの警戒感が挙げられる。本レポートでは、その下落のきっかけとなった事象を検証し、その妥当性を評価するとともに、今後の展開について展望する。
月初来の日経平均株価は一時5万円割れの展開
日経平均株価は、11月4日(火)のザラ場で最高値(52,636.87円)を更新したものの、その後は反落する展開となり、5日(水)と7日(金)には取引時間中に一時5万円を下回る場面が見られた(図表1)。この背景には、AI関連株を中心に株式市場がバブル状態にあるとの警戒感が挙げられる。
下落のきっかけとなったのは、11月4日(火)に開催されたの香港金融管理局(HKMA)主催の「国際金融リーダー投資サミット」だった。この場で、米大手証券会社の幹部が「株式市場は10-20%の下落があってもおかしくない」と指摘し、これを受けてAI関連株が世界的に大きく値下がりした(図表2)。
もともと、国際通貨基金(IMF)が10月14日(火)に発表した金融安定性報告書(GFSR)では、「バリュエーションモデルでは、リスク資産の価格がファンダメンタルズをはるかに上回っていることが示されており、急激な調整リスクが生じるリスクが高まっている」と指摘されていた。このため、AI関連株の過熱感に対しては、以前から警戒感が高まっていたと解釈される。
そのような状況の中、前述した11月4日(火)のウォール街トップの発言に加えて、11月6日(木)には、英イングランド銀行(BOE)のベイリー総裁が、「AIが大幅な生産性向上をもたらすと予想される一方で、市場でAIバブルが発生する可能性がある」との見解を示したことから、AI関連株の下落にさらに拍車をかけたと考えられる。
パウエルFRB議長はAIバブルの可能性を否定
一方、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、10月29日(水)の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、「(ドットコムバブル時代とは異なり)現在の企業は実際に収益を上げており、ビジネスモデルや利益が存在している 」と述べ、AIバブルの可能性を否定した。
実際、エヌビディアと大手ハイパースケーラー4社の利益は着実に増加しており、フリーキャッシュフローも潤沢である(図表3、4)。
また、生成AIモデルを開発するオープンAIも現在は純利益が赤字だが、もともと非営利組織であったことも影響している可能性がある。同社は10月28日(火)、公益性を重視した企業体制から、株主利益と公益性の両立を目指す営利組織へと再編した。これにより、将来的な新規株式公開(IPO)も視野に入り始めた。
ウォール街の証券会社トップは株式市場を悲観的に見ているわけではない
なお、前述の米大手証券会社の幹部の発言は、必ずしも悲観的なものではない。その幹部は、「株式市場の下落は長期的な強気相場において通常見られるものであり、市場のタイミングを図るのではなく、投資を継続することが重要だ」と述べており、別の幹部も、「定期的な下落は健全な動きであり、危機の兆候ではない」とし、投資家はこれを歓迎すべきだと主張していた。
11月10日(月)の国内株式市場では、米政府機関の一部閉鎖が解除されるとの観測から、日経平均株価はAI関連株を中心に反発する展開となった。AI関連株に対する過度な悲観論が後退した後の日経平均株価は、再び好調なファンダメンタルズに基づく株価が形成されるのではないだろうか。
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