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ゴールドラッシュ
2024/05/09

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概要

金市場について、ピクテの見解をご紹介いたします。



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◆ 概要

・金価格は、2024年3月初旬以降、猛烈な勢いで上昇し、2024年4月には米ドル・ベースで史上最高値を更新しました。

・金価格の上昇は、通常考えられる様々な要因や、世界の金先物市場からの旺盛な需要に支えられています。

・短期的には、宝飾需要や中央銀行の金購入の減少、高い機会費用等の影響を受けやすいことに留意が必要です。

・中期的には、投資妙味が強いとの見方を維持しています。



旺盛な需要に支えられた金価格の上昇

2024年4月に金価格が急騰したことは、底堅い需要を浮き彫りにしました。金需要は様々な要因によってもたらされており、とりわけアジアの需要増が顕著です。

2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻を受け、西側諸国がロシアの外貨準備に制裁措置を講じて以来、中央銀行や政府系ファンド(ソブリン・ウェルス・ファンド)等、公的部門の金需要が急増しており、従来の年間約500トンを遥かに上回る、一段高い需要を示唆しているように思われます。中国人民銀行(中央銀行)は、2022年3月以降の金需要をほぼ300トンと公表していますが、これは、金需要量で中国人民銀行に次ぐ中銀の需要の約2倍にあたります。

金価格の急騰にもかかわらず宝飾需要が堅調に見えるのは、西欧諸国の年末需要や中国の旧正月(春節)の需要等の季節要因に起因するものと思われます。また、中国では、コロナ禍の都市封鎖解除後の繰越需要が残っているようにも思われます。

注目されるのは、金上場投資信託(金ETF )からの資金流出が続く中、投資需要も堅調なことです。2023年の金地金および金貨需要は、機会費用の増加にもかかわらず、ほぼ横ばいで推移しており、インドと中国の旺盛な需要が際立っています。インドでは堅調な国内経済が投資家の現物需要を押し上げた可能性がある一方で、中国では人民元の減価を巡る懸念が、不動産等の国内資産の低迷と相俟って、需要を牽引しました。一方、トルコでは、インフレの高止まりがここ数四半期の旺盛な現物需要を説明していると考えます。

公的部門の金購入や宝飾需要、金地金や金貨に対する需要の拡大を十二分に相殺しているのが、金ETFに対する需要の落ち込みであり(図表1)、金需要全体に占める比率は従前よりも低下しています。もっとも、限界的な買い手や売り手である金ETF、ならびに先物やオプション等のデリバティブ需要の振幅が、金価格を決定する上での重要な要因であることには変わりありません。




ETF需要の回復が金価格の更なる上昇をもたらす可能性

債券利回りが高水準にある局面で、金利を生まない金を保有することは機会費用を増し、今後も金ETF需要の足枷となる可能性があります。

一方、米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げが迫る状況や、根強いインフレならびに米国財政の先行きを巡る懸念は、いずれも、金ETF需要の回復を加速させる可能性があります。名目ベースでの金の最高値更新も需要を増す可能性があります。実際、ETF需要には安定化の兆しが現れ始めています。今後の確認が必要ではあるものの、ピクテでは、ETF需要が2024年内に回復し、金価格を下支える可能性が高いとの見方を変えていません。

ETF需要とは対照的に、デリバティブ需要は中東の地政学的緊張の高まりを受けて、2023年10月以降、堅調に推移し、2024年3月初旬に一段と加速しました。恐らく、米国の先物市場が、FRBの利下げ開始を期待していたためだと思われます。利下げ観測は3月半ばには後退したものの、これを相殺したのが、中国のデリバティブ需要の伸びです。4月に上海金先物市場で報告された4年ぶりの高水準の取引高が裏付けるように、中国のデリバティブのさらなる需要増がそれを補っています(図表2)。以上をまとめると、金価格の高騰は、様々な要因に起因する旺盛な金需要によってもたらされた可能性が大きいということになります。




短期的には調整も

2024年初来の米国10年実質金利の上昇は、金ETFや金先物等を通じた欧米の投資需要を冷やしかねません。また、金価格の高騰を受け、宝飾需要は落ち込む可能性がありそうです。中央銀行の金需要も、公的部門の需要全体のごく一部に過ぎないものの、2023年11月から2024年2月末にかけて減少しています。一方、新興国の金地金、および金貨に対する需要は、今後も堅調に推移する可能性があると考えます。インドと中国のゴールド・プレミアム(両国の国内取引所における米ドル建て金価格とロンドン値決め価格の差と等しく、現地の現物需要を代替する指標とみなされる)には、改善の兆しが見られます。


中長期的な観点では投資妙味が衰えず

短期的な調整はあるとしても、金が中長期的に見て魅力的な資産であることは変わりません。公的部門の金需要は、向こう数年間、力強さを維持するものと考えます。西側諸国によるロシアの外貨準備に対する制裁措置を受けて、一部の中央銀行は外貨準備に占める金の比率を更に引き上げる可能性があるからです。FRBの利下げの可能性、米国の財政赤字の拡大、根強いインフレ、中国市場の低迷、地政学情勢を巡る不透明性等は、いずれも、金投資需要の拡大要因です。

 

 

*当レポートは2024年4月11日時点での情報に基づき執筆されたものです。


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