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次世代のヘルスケア
2025/07/14

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概要

テクノロジーは医薬品の開発や治療の迅速化を支える専門的なツールによって、新しい世代のヘルスケアを切り開こうとしています。



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かつては、あらゆる病気に効く万能薬が夢見られていました。しかし今日、次世代の治療法が私たちの視点を変えつつあり、遺伝子や細胞を改変したり、抗体を設計したり、さらには医療を個人に合わせて提供することが、10年前には想像もできなかったほどのレベルで可能になっています。

ピクテ・アセット・マネジメント「ヘルスケア戦略」のテーマ株式アドバイザリーボード1のメンバーによると、次世代の治療法は安全性と効率性が高まっており、それに伴い普及が進んでいると見られています。しかし、こうした注目を集める治療法の発見、開発、製造には、あまり知られていない「次世代ツール」と呼ばれる分野の助けがあって初めて可能になっています。

例えば、診断に関する分野では、ユニバーサル・バイオセンサーの登場により革命が起きています。「リキッド・ブレイン」とも呼ばれるこのセンサーは、様々なタンパク質や核酸、病原体、小分子を識別でき、病原体の検出、慢性疾患の進行状況のモニタリング、薬剤濃度の評価が可能になります。

一方、次世代治療薬の製造に関しては、高度に制御された環境で細胞や微生物を培養できる特殊なバイオリアクターや、最終製品からウイルスやその他の有害な不純物質を除去するための特殊な濾過装置などのツールが使われています。

さらに、次世代治療薬の開発を自動化するツール、そしてそのプロセスを支援するソフトウェアやAIツールもあります。

次世代ツールによって、治療薬の製造量を劇的に拡大し、製造にかかる時間も大幅に短縮されました。また、コストやリソースも削減されています。特に、細胞・遺伝子治療薬の製造コストの50~70%を人件費が占めていることを考えると、労働力の必要性を減らせることは非常に価値があります。



例えば、サーモフィッシャーサイエンティフィック(Thermo Fisher Scientific)社の画期的なツールは、従来のデプスフィルターを使用した濾過方法の代わりに、使い捨てタイプの遠心分離装置を採用しています。この新しいシステムでは、これまで多く必要だったフィルターの数が大幅に減るため、フィルターの交換や装置の洗浄・滅菌といった手間が少なくなります。その結果、エネルギーや水の使用量も削減でき、人手や全体のコストも低く抑えられます。このシステムはすでに、モノクローナル抗体2の製造に使用されており、従来の方式に比べて水の使用量が45%削減され、コストの節約や市場投入までの時間の短縮にもつながりました。

次世代ツールは、 医薬品開発製造受託機関(CDMO)にも広く受け入れられています。CDMOは医薬品開発や製造の特定の分野に特化し、製薬業界からその役割を引き受けており、業界全体の研究や製造プロセスを効率化することで付加価値を提供しており、AIをはじめとした新しい技術の導入でも業界の先駆けとなっています。

これらのツールには他にもさまざまな用途があります。ユニバーサル・バイオセンサーは、大気や水、土壌中の汚染物質などの環境データのモニタリングや、食品の安全性検査にも利用することができます。

バイスペシフィック抗体3や遺伝子治療、核酸医薬などの先進的な治療法の開発が進む中で、これらの製造にかかるコストや時間、複雑さのさらなる改善が求められるでしょう。

これにより、次世代ツール分野の企業や、それらに投資する専門知識を持つ企業にとって、魅力的な成長機会が生まれるはずです。そうした進歩は、製薬業界やバイオテクノロジー業界全体のさらなる成長を促すことになるでしょう。


[1] 投資戦略に関連するテーマやトレンドを評価し、戦略の方向性や投資機会について助言を行う、学識経験者や政策専門家、ビジネスーリーターなどで構成される委員会。

[2] ウイルスやがん細胞などの特定の標的に結合し、それらを中和したり、免疫系による破壊の目印となったりするよう設計された、実験室で作られた分子。
[3] 2種類の異なる抗原に結合できる人工的な抗体。 

■ 投資のためのインサイト

ピクテ・アセット・マネジメント、テーマ株式シニア・インベストメント・マネージャー 、モリッツ・ドゥリンガー(Moritz Dullinger,)、同グレゴワール・ビオラ(Gregoire Biollaz) によると、


中長期的な視点で見ると、ヘルスケア分野はいくつかの重要な要因により、力強い成長が期待できると考えています。世界的な高齢化の進行により加齢に伴う疾患が増加しており、医療費を抑制するためにも人々がより長く健康でいることがこれまで以上に重要になっています。


科学の進歩により医療の水準は向上している一方で、非効率な部分が原因となって医療費は増加し続けています。そのため、医療サービスの質と効率性を同時に向上させる革新的な技術の導入がこれまで以上に求められています。また、富の増加に伴い、健康への関心が高まり、消費者はセルフケアやより健康的なライフスタイルへの投資を強めています。政府もまた、インセンティブや規制を通じて予防医療の推進に取り組んでいます。


健康の維持・向上に役立つ製品やサービスを提供する企業は、こうした長期的な潮流の恩恵を受けることが期待されます。

 

 


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