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- 堕天使を捉える: 社債の格下げ時に生まれる投資機会
社債の格下げは、長期的視点を持つ投資家にとって、新たな投資機会となり得ます。
トランプ米大統領が発表した新たな関税措置は、社債市場に大きな衝撃を与えました。インフレ懸念から国債利回りは上昇し、企業収益への悪影響が意識され、国債と社債とのイールドスプレッド(利回りの差)は拡大しました。
しかし、ハイイールド債投資家は、こうした混乱から恩恵を受ける可能性があります。政策の混乱は世界経済に大きな影響を与えると見られていますが、社債が格下げされた場合でも、過去の例からは、それを活用できる投資家にとって新たな投資機会が生まれることが示唆されています。
投資適格からハイイールド(投機的格付け)へと格下げされた債券は「フォーリン・エンジェル(Fallen Engel:墜天使)」と呼ばれ、過去には、格下げ直後に購入し数ヵ月間保有することで、投資家に大きなリターンをもたらすことがありました。もし一部のエコノミストの懸念通り、米国の関税措置が世界的な景気後退を招けば、これまでにないほど多くの「エンジェル(Engel)」が「堕ちて(Fall)」くることになるでしょう。
フォーリン・エンジェル債と天上のリターン
格下げ直後にこれらのフォーリン・エンジェル債に投資すると、同格付けのハイイールド債と比べて、その後1年間で3.1パーセントポイント、2年間で4.5パーセントポイントの超過リターンが得られます(図1参照)。
これは、格下げ前にこれらの債券のイールドスプレッドが急速に拡大し、格下げ後には、同じように縮小するためです。
なぜこのようにスプレッドの急拡大と縮小が起こるのでしょうか?
格付け機関からネガティブな見通しを付与された債券は、通常、同じ格付けの債券よりも安い価格で取引されるため、同格付けの債券よりも高い利回りが要求されます。しかし、フォーリン・エンジェル債の場合、格下げのタイミングで、利回りにプレミアム(上乗せ分)が発生します。これは主に、投資適格債の投資家が規約上ハイイールド債を保有できないことが多いため、フォーリン・エンジェルが発生すると強制的に売却せざるを得なくなることが要因です。さらに、ハイイールド債市場の規模が投資適格債市場よりもはるかに小さいため、売り圧力が一層強まります。これら二つの要因により、同格付けのハイイールド債と比べて、平均120ベーシスポイント(bp)のプレミアムが発生します(図2参照)。
売り圧力のピーク時には、フォーリン・エンジェル債は非常に魅力的な投資機会を提供します。ハイイールド債の投資家は、割安になったこれらの債券を購入することで、最終的にはそのバリュエーションの恩恵を受けることになります。小規模なハイイールド債市場がこうした新規銘柄を吸収する過程で、フォーリン・エンジェルのイールドスプレッドは縮小し、格下げ後の同格付けハイイールド債の水準に収束していきます。その結果、債券の保有者に大きな超過リターンがもたらされます。このプロセスは通常12ヵ月程度かかります。
すべてのエンジェルが同じではない
すべてのフォーリン・エンジェル債について、まったく同じ事が言えるというわけではありません。フォーリン・エンジェル債の約4分の3は、ハイイールド債の同格付けの銘柄と同等か、それ以上のパフォーマンスを示します。しかし、リターンを最大化するために優れた銘柄を見極めることが重要である一方、最もパフォーマンスの悪いフォーリン・エンジェル債を避けることでリターンを向上させることができます。下位4分の1のフォーリン・エンジェル債には、ごく一部ですが非常に大きな損失を出すものが含まれており、最もパフォーマンスの悪い5~10%のフォーリン・エンジェル債を避けるだけでも、リターンを大幅に改善できます。
投資家の観点によるフォーリン・エンジェル債
投資適格債の投資家にとっては、ハイイールドに格下げされた債券の保有期間を延ばすことができるならば、売却を急ぐ必要がなくなり、極端な安値での売却やそれに伴う損失を抑えることができます。
ハイイールド債投資家にとっては、どのフォーリン・エンジェル債を購入しても平均的な超過リターンを得られる可能性がありますが、より慎重に銘柄を選び、特にパフォーマンスの悪い5~10%のグループの銘柄を避けることで、さらに高いリターンが期待できます。銘柄選択の際には、企業の収益や負債の動向、経営陣の質など、企業のファンダメンタルズに注目する必要があります。
「災い転じて福となす」という言葉があるように、市場が混乱した中でも投資機会は存在します。これは特に社債市場で顕著であり、「エンジェルも足を踏み入れない」、つまり投資適格とハイイールドの格付けの境界付近には、特に注目すべき機会があると考えます。
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