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ハイイールド債券の魅力:低リスクで実現する最適な資産配分
2025/10/24

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概要

株式をハイイールド債券に置き換えることで、従来型ポートフォリオのリスク調整後リターンが向上し、市場の下落局面においてはドローダウンを抑えられます。



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欧州資産のポートフォリオにおいて、株式の一部をハイイールド債券に置き換えることでリスク調整後リターンが向上します。当社の分析によると、市場の下落時にポートフォリオがどの程度影響受けるかを基準にリスクを評価すると、その効果がより顕著になります。

ボラティリティなどの伝統的な指標を使用してポートフォリオのリスクを測定する投資家は、市場の大幅な調整局面で損失を過小評価する危険性があります。

残念ながら、資産、特に株式やハイイールド債券のリターンは正規分布していません(つまりベルカーブのような形状ではありません)。リスクの高い資産クラスでは、リターン分布がいわゆる「ファットテール」を示すため、ボラティリティは致命的な欠陥のある指標となります。つまり、大きな損失がより頻繁に、そしてより深刻に発生します。そのため、ボラティリティを用いるとポートフォリオの実際のリスクを大幅に過小評価することになります。

代わりに、バリュー・アット・リスク(VaR)という手法は、ポートフォリオの下落リスクを測るのに適しています。そしてVaRは、リターンを最大化しながらドローダウンを最小化したい投資家はハイイールド債券を保有すべきであることを明確に示しています。

当社は、信頼区間95%で資産が被る最大損失を推定するVaR95%が、特に有用な指標であると考えています。この指標は、投資家がポートフォリオの損失をどのように軽減すべきかについての指針を提供します。


図1:リターン対リスク
欧州資産クラス別のパフォーマンス指標

株式はユーロストックス50トータルリターン指数、債券はICE指数。
バリュー・アット・リスク(VaR)は95%の信頼度で予想される最大月次損失額。
出所:Bloomberg, Bank of America ICE Merrill Lynch, Pictet Asset Management.
期間:2014年1月1日 ~ 2025年5月30日

当社は、キャッシュ、短期・長期国債、短期・長期投資適格債券、ハイイールド債券、株式という7つの主要な欧州資産グループを分析しました。そして2014年から2025年の期間における各資産のパフォーマンスを評価しました。この期間を選定したのは、それ以前の10年間とは対照的に、株式が非常に良好なパフォーマンスを示した時期だったからです。

ハイイールド債券のVaR95%は-2.4%で、長期国債と全く同じでしたが、平均月次リターンは0.32%で、長期国債の0.02%を上回っていました。

ハイイールド債券は、一般的に最も安全な金融資産と見なされているものと比較して優れているだけでなく、株式と比較しても有利な結果を示しています。つまり、株式はハイイールド債券の約2倍の平均月次リターン0.7%を提供する一方で、損失幅もはるかに大きくなります。株式のVaR95%は-6.6%で、ハイイールド債券の-2.4%と比較して大きくなっています。また、同期間において、株式の最大ドローダウンは25%に達したのに対し、ハイイールド債券は16%弱に留まりました(図1参照)。

さらに、どのようなリスク選好(投資家が許容できる損失の大きさ)においても、株式をハイイールド債券に置き換えることで、モデルとなるマルチアセット・ポートフォリオのリターンが向上することがわかりました。つまり、ハイイールド債券はより効率的な資産クラスということです。

当社は、理論上の最大月次VaR95%(-0.1%から-2.2%)に基づき、分析した資産クラス別にポートフォリオを構築しました。各ポートフォリオは、債券または株式と、キャッシュやその他債券の組み合わせで構成しました。各ケースにおいて、最も低いリスク評価(ポートフォリオが最も安全な資産クラスで構成されている場合)を除いて、各ケースでハイイールド債券を含むポートフォリオは、株式を含むポートフォリオよりも優れたリスク調整後リターンを生み出すことがわかりました(図2参照)。


図2:有効フロンティアの引き上げ
最もリスクの高い資産クラスとして株式またはハイイールド債券を使用した最適なポートフォリオ配分

出所:Bloomberg, BofA Merrill Lynch, Pictet Asset Management.
期間:204年1月1日~2025年5月30日

また、株式40%と投資適格債券60%で構成される標準的なバランス型ポートフォリオと同等の(VaR)リスク許容度を前提とした場合、サンプル期間において最適なポートフォリオは68%をハイイールド債券、32%を株式とする構成であったことがわかりました。

ハイイールド債券は、確約されたクーポン支払いの恩恵と、債券の額面回帰特性(満期が近づくにつれて債券価格が額面に近づく性質)により、安定したリターンを提供します。また、ドローダウンは中程度で短期間に収まり、強い反発を見せる傾向があります。対照的に、株式には価格を支える予測可能な評価基準が存在せず、配当金も常に削減されるリスクにさらされています。

急激な市場調整時に予想される損失を最小限に抑えたいと考える投資家にとって、VaRは単なるボラティリティよりも優れたリスク指標です。そしてVaRは、株式が高いリターンを上げている期間であっても、ハイイールド債券がマルチアセット・ポートフォリオにおける中核的な構成資産であるべきことを明確に示しています。また、リスク指標としてボラティリティを重視する投資家にとっても、ハイイールド債券は中程度のリスクレベルでポートフォリオには欠かせない存在であり続けます。

当社の分析対象は主に欧州資産に関するものでしたが、米国資産の分析でも同じ結論に達しました。つまり、株式が特に好調な期間であっても、マルチアセット・ポートフォリオでは株式の一部をハイイールド債券に置き換えることで、より優れたリスクリターンプロファイルを実現できるということです。


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