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AI時代における半導体の役割
2025/09/03

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概要

世界は半導体に依存しています。クリス・ミラー教授(タフツ大学)が、アンジャリ・バスティアンピライ(Anjali Bastianpillai、ピクテ・アセット・マネジメント、シニア・クライアント・ポートフォリオ・マネージャー)との対談で、半導体業界の最新のイノベーションと、その影響について語りました。



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バスティアンピライ :
人工知能(AI)ブームが半導体業界に与える影響はどのようなものでしょうか?

ミラー教授 :
まず直接的な影響としては、AI関連の半導体チップに対する需要の増加が挙げられます。米国の半導体企業エヌビディア(Nvidia)が最も顕著な勝者となっていますが、他にも多くの企業で需要が急増しています。しかし、この新しい半導体チップへの投資は主にデータセンターに集中しています。長期的には、多くのAIシステムはネットワークのエッジ、つまりスマートフォンや自動車、ウェアラブル端末などのデバイスで主に処理されるようになるでしょう。現在、これらのデバイス向けにAI用に最適化された新しいチップが登場し始めたところです。


バスティアンピライ :
現在、半導体の分野でどのようなイノベーションに最も期待していますか?

ミラー教授 :
当面は、AI向けのより優れたチップの製造が、イノベーションにおける最大の焦点となるでしょう。過去10年にわたって、改良されたチップが、より優れたAIシステムの主要な推進力となってきました。エヌビディアのような画像処理半導体(GPU)チップや、SKハイニックス(SK hynix)のような高帯域幅メモリチップを製造する企業は、現在では10年前の何倍もの性能を持つチップを生産できるようになっています。これより、大規模なAIシステムが以前の何倍ものデータで訓練され、旧世代のAIよりもはるかに効果的になっています。


”AIの短期的な影響としては、新しいAIデータセンターはより多くの化石燃料で稼働するため、グリーン・トランジションの遅れが考えられます。しかし、半導体は電化にとって重要な推進力です。”


バスティアンピライ :
AI以外で最も興味深い用途は何でしょうか?

ミラー教授 :
AIはしばらくの間、主要なテーマになると思います。長期的には、チップとバイオテクノロジー、医療機器の交差点に非常に興味を持っています。例えば、特定の生物学的マーカーを感知できるチップを開発しているスタートアップがすでにいくつか存在しています。


バスティアンピライ :
米国と中国の競争は、この業界にどのような影響を与えるでしょうか?それはイノベーションの推進力になり得るでしょうか?

ミラー教授 :
米中の競争によるマイナス面は、サプライチェーンの重複により効率が低下し、コストが増加することです。プラス面は、米国や他の国々が研究開発に、より多くの資金を投入していることであり、うまく実行されればイノベーションを加速させるはずです。


バスティアンピライ :
この業界は、自然環境への悪影響が顕著です。どのようにこの問題に対処すべきでしょうか?

ミラー教授 :
チップの製造には多くの有毒化学物質が必要ですが、業界はその影響を軽減するために大きな進歩を遂げています。次の大きな取り組みは、特に分解に非常に長い時間がかかるPFASと呼ばれる化学物質の一群を置き換えることです。これには化学の分野での大きなイノベーションが必要になります。



バスティアンピライ :
こうした課題にもかかわらず、半導体もグリーン・トランジションにおいて役割を担うのでしょうか?

ミラー教授:
はい、それは複雑な方法ではありますが、非常に重要です。AIの短期的な影響としては、新しいAIデータセンターの稼働には従来よりも多くの化石燃料が必要なため、グリーン・トランジションを遅らせることが考えられます。しかし、半導体は電化の重要な推進力です。例えば、新しい電気自動車には1,000米ドル以上の半導体が搭載されており、その多くがバッテリーや電力分配の管理に重要な役割を果たしています。


”米中の競争によるマイナス面は、サプライチェーンの重複により効率が低下し、コストが増加することです。”


バスティアンピライ :
約60年前に提唱されたムーアの法則では、半導体集積回路の集積密度(トランジスタ数)が2年ごとに倍増するとされました。つまり、チップは同じか、またはそれ以上の仕事をしながら、ますます小型化することが可能になります。最近では、7ナノメートル(nm)チップから5nmチップへと移行しています。これは何を意味するのでしょうか?5nmチップは実際に5nmなのでしょうか?

ミラー教授:
ナノメートルの数値はほとんどマーケティング用語のようなものです。以前は単一の測定基準に基づいてチップを比較することが可能でした。しかし、現在のチップは3D構造のため、測定できる次元が複数あります。大まかに言えば、世代(例えば7nmから5nm)ごとに膨大な計算能力の向上が得られます。


バスティアンピライ:
半導体の需要が高まっていること考えると、生産能力を増強するために設備投資の増加が見込まれるでしょうか?






”米中の競争によるマイナス面は、サプライチェーンの重複により効率が低下し、コストが増加することです。”


ミラー教授:
すでに設備投資の大幅な増加がみられています。チップメーカーは現在のコミットメントを超えてさらに拡大することに対しては慎重だと思います。彼らは業界が循環的であることを経験則で知っており、2020年代半ばに向けてAIデータセンターの需要がどのようになるかについてより明確な見通しを求めています。重要な問題は、大手テクノロジー企業がAIインフラに年間数百億米ドルを投資し続けるのか、それとも一時的に立ち止まり、より収益性の高いアプリケーションの登場を待つのかということです。


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