Article Title
最近の新興国格付け動向
梅澤 利文
2020/08/19

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

今月の格付け動向を振り返ると、新興国(主に低所得国)では、格下げ方向で検討するとして付与されていた5ヵ国のネガティブウォッチは、当面の懸念が後退したとして取り除かれました。一方で産油国のオマーンやバーレーンについては、今月フィッチが格下げしています。新興国の格下げ懸念は一時より改善しているようですが、油断は出来ない面もあるようです。



Article Body Text

最近の新興国格付け動向:一部の国に付与されていたネガティブウォッチを取り除く

格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービス(ムーディーズ)は2020年8月7日、カメルーンの発行体格付け(自国通貨建て、外貨建て、共に)に付与していたネガティブウォッチ(格下げ方向で検討)を取り除きました。ムーディーズは同日、エチオピア、セネガル、パキスタン、コートジボアールに付与していたネガティブウォッチも取り除きました。

フィッチ・レーティングス(フィッチ)は8月17日、産油国オマーンの発行体デフォルト格付け(自国通貨建て、外貨建て、共に)をBBからBB-へ格下げしました。

 

 

どこに注目すべきか:格付け、ネガティブウォッチ、DSSI、原油価格

今月の格付け動向を振り返ると、新興国(主に低所得国)では、格下げ方向で検討するとして付与されていた5ヵ国のネガティブウォッチは、当面の懸念が後退したとして取り除かれました。一方で産油国のオマーンやバーレーンについては、今月フィッチが格下げしています。新興国の格下げ懸念は一時より改善しているようですが、油断は出来ない面もあるようです。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う深刻な景気悪化と原油価格の急落を背景に3月後半から5月ごろ迄、新興国を中心に記録的なペースで格下げなどが行われました。しかし、各国の経済政策や原油価格の回復などを受け、足元格下げペースに落ち着きが見られます。また、世界銀行や国際通貨基金(IMF)などの国際機関が低所得新興国への財政支援を積極化させたことも落ち着きの背景です。

しかし、今日のヘッドライン5月15日号などで指摘したように、国際機関の支援のひとつで、年内の債務返済を猶予する債務支払猶予イニシアチブ(DSSI)には懸念もありました。返済が遅れた場合の損失を民間の債権者も負担するのかがあいまいでした。ムーディーズが先の5ヵ国をネガティブウォッチとしたのはこの点への懸念でした。

今月、ネガティブウォッチが取り除かれたのは、DSSIを実施するうえで民間債権者の損失は個別かつ特別なケースに限定されるとムーディーズが判断したためです。フィッチなど他の格付け会社はDSSIへの参加を格下げなどの材料と見なしていなかったことから、新興国への国際機関などからの支援の不透明感については当面、低下したと思われます。

一方、原油価格下落を背景とした産油国の財政懸念については、依然注意が必要です。

原油価格の動向を見ると、3月から4月にかけて底を打ち、足元回復傾向です(図表1参照)。この点状況は改善していますが、財政不安を完全に払拭するには不十分と見られます。

例として、オマーンを取り上げます。オマーンが取り扱うのは北海ブレントです。この春の原油価格急落を受け格付け会社はブレントの今年の想定価格を約35ドル(1バレルあたり、以降省略)に引き下げました。足元、オマーンの原油輸出価格は平均して45ドル程度と見られます。一方で、オマーンの財政収支がとんとんとなる原油価格の損益分岐点は70ドルを超えるとフィッチは推定しています。そこでオマーンの財政指標を見ると20年の財政赤字対GDP(国内総生産)比率は、20%程度を予想しており、19年の8%(この時点の数字で既に厳しい)から大幅に悪化するとフィッチは見込んでいます。

オマーン政府も歳出の削減に努め、中東の産油国で構成される湾岸協力会議(GCC)の財政支援も期待できますが、不十分と思われます。不安を取り除くには70ドルとは言わないまでも、原油価格の安定的な上昇が求められそうです。

格下げペースに鈍化は見られますが、不安の種が残っている点に注意は必要です。


梅澤 利文
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


●当資料はピクテ投信投資顧問株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら