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- 日銀1月会合、植田総裁会見で注目されたその2点
日銀は1月の金融政策決定会合で政策金利を据え置いたが、高田審議委員が利上げを主張した点はやや意外だった。展望レポートではコアコアCPIの上方修正や、インフレ率が目標水準に近づく見通しが示され、経済成長率も一部で上方修正された。一方、植田総裁の会見はハト派的で、今後の利上げのタイミングについてはヒントを与えず、長期金利上昇への日銀の対応については慎重な姿勢を示した。
日銀、26年1月の金融政策決定会合で市場予想通り政策金利を据え置き
日銀は1月22日-23日に開催した金融政策決定会合(会合)で、市場予想通り、政策金利である無担保コール翌日物レートの誘導目標を0.75%で据え置くことを決定した(図表1参照)。今回の会合では9人の政策委員のうち、高田審議委員が物価安定目標はおおむね達成されており、海外経済が回復局面にあるもとで物価の上振れリスクが高いとして現状維持に反対し、1.0%への利上げを提案したが、反対多数で否決された。
日銀は会合後「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」を公表した(図表2参照)。主な注目点は生鮮食品とエネルギーを除いたコアコア消費者物価指数(CPI)が25-27年度を上方修正したことだ。
日銀は展望レポートで物価見通しを上方修正した
事前の想定では、今回の日銀会合における注目点は、展望レポートと日銀植田総裁の会見だった。これらの点に加えて、ややサプライズだったのは高田審議委員が利上げを主張したことだ。日銀は昨年12月に利上げを決定したばかりで、今回の会合は様子見が想定されていた中での利上げ提案であったからだ。今後(次回の会合は3月)の注目点は、高田氏の利上げ提案に他の賛同者が増えるかどうかであろう。
展望レポートはややタカ派(金融引き締めを選好)的だった。インフレ面では、図表2にあるようにコアコアCPIが25年度~27年度すべてで上方修正された一方、生鮮食品を除いたコアCPIは26年度が上方修正された。展望レポートは物価について、エネルギー価格の上昇は政府の対応(ガソリン税の「旧暫定税率」廃止や電気・ガス代の負担緩和策など)で抑制されることや、前年比でみた食料品価格の落ち着きなどが物価の抑制要因になると見込んでいる。一方、賃金上昇を販売価格に転嫁する動きが続くと指摘したことや、賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇するメカニズムに言及していることから、物価動向への確信度合いを日銀は高めているようだ。
展望レポートによれば、インフレ率は26年前半には、2%を下回る水準までプラス幅を縮小させるものの、その後は景気回復や労働力不足などを押し上げ要因として、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移するシナリオの達成に対し自信を深めたトーンとなっている。
経済成長率見通しについて、図表2でGDP(国内総生産)成長率を見ると、25年度と26年度の見通しを引き上げた一方で、27年度は下方修正した。25年度は海外経済の上振れ、26年度は税制改正による個人消費の回復などを押し上げ要因としている。一方で、27年度は経済政策の効果の反動をマイナス要因としている。全体のトーンは「緩やかな成長を続けると考えられる」と、前回の「成長ペースは緩やかなものにとどまる」から改善方向で、タカ派的なトーンだ。
植田総裁の会見では、円安、長期金利上昇への対応は示されなかった
次に、植田総裁の会見については、全体的なトーンはハト派(金融緩和を選好)的と見られたようだ。記者会見後、為替市場で円が、1ドル=159円台前半まで下落したからだ。
もっとも、為替市場の動きは速い。為替介入観測などを背景に、日本時間夕方には1ドル=157円台にまで円高が急伸した。さらに、米国取引時間には米金融当局が(為替介入の前段階となる)レートチェックをしているとの観測を受け円高が加速した。介入の有無など為替市場における当局の動きは現段階では不明なことが多い。当面為替市場を注視する必要がありそうだ。
植田総裁の会見に話を戻すと、会見での注目点は展望レポートで示唆された利上げ継続姿勢の明確化、より具体的には次の利上げ時期へのヒントだ。もう一つの注目点は最近の長期金利上昇に対する日銀の対応だ。
結論から言えば、これら2つの点について植田総裁はヒントを与えなかった。先行きの利上げ姿勢は維持しつつもタイミングに関連する内容については言及を避けた。長期金利上昇への対応策(買入れオペ)については慎重に言及を回避した。
日本が直面する「円安と長期金利上昇」に対し、日銀が対応するのは難しい。円安を金利差縮小で対応するため単に利上げペースを速めるだけでは長期金利を押し上げる懸念があるからだ。
また、長期金利上昇に対する国債買い入れオペなどが根本的な解決策になるのかは疑わしい。展望レポートが示唆するように、日本はインフレ圧力が残っている。こうした中で、財政政策拡大による長期金利上昇に対する日銀の国債買い入れの効果は限られよう。植田総裁は会見で長期金利について、「かなり速いペースで上昇してきている」と懸念を示すなど、当然のことながら金利動向への注視を怠っていない。しかし対応をとることは別問題だろう。植田総裁は会見で与野党が消費税減税を公約に掲げている点について問われた。これに対し、財政政策は政府・国会が決めることと述べつつ、政府が中長期的な財政健全化について市場の信認を確保することの重要性を指摘した。積極的な財政政策を背景とした長期金利上昇に対して、日銀は、想定外の急上昇についてはオペで対応することはあっても、長期金利引き下げにコミットするような対応は回避するようだ(当然ながら)。一方で、利上げについてはインフレ動向を見極めながら通常の姿勢を維持すると筆者は考えている。インフレ動向次第ではあるが、年内2回程度の利上げを予想している。
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