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米2月CPI、市場予想通りながら注意点もみられた
梅澤 利文
2026/03/12

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概要

米労働省が発表した2月のCPIは前年同月比2.4%上昇し、市場予想通りだった。コアCPIも2.5%上昇で、インフレ率は鈍化傾向にある。ただし、エネルギーや食品、サービスなど個別要因による変動が見られる。イラン情勢や原油価格の上昇が今後のインフレや金融政策に影響を与える可能性があり、FOMCの判断が注目される。その際、CPIとPCEの違いにも注意が必要で、今後の動向に注目したい。




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2月の米消費者物価指数の伸びは概ね市場予想通りだった

米労働省が3月11日に発表した2月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で2.4%上昇と、市場予想、前月(ともに2.4%上昇)に一致した。エネルギーと食品を除いたコアCPIは2.5%上昇と、こちらも市場予想、1月(ともに2.5%上昇)と同じだった。物価の短期的動向を示す前月比の伸びは、総合CPIが0.3%上昇し、コアCPIは0.2%上昇となり、ともに市場予想に一致した。

米国のインフレ率は足元、概ね鈍化傾向にある。トランプ関税を販売価格に転嫁する動きはピークを迎えたとの見方もあるようだ。一方、今回のCPIには2月28日から始まった米国とイスラエルによるイラン攻撃の影響は反映されていない。

エネルギーが押し上げ要因だったがガソリン価格急騰の反映はこれから

2月の米CPIが発表された11日の米国債市場では10年国債利回りが比較的大幅に上昇した。利回り上昇の主な理由はイラン情勢に伴う原油価格の上昇に加え、米10年国債入札が軟調だったことも挙げられる。CPIにも今後の米国のインフレ動向を占ううえでの注目点があったとみている。

総合CPIの前月比の伸びを、エネルギー、食品、財、及びサービスの4項目に分けて寄与度を示したうえで(図表2参照)、主な注意点を確認する。

エネルギーは前月比の伸びが1月の1.5%下落から2月は0.6%上昇とプラスに転じた。暖房用オイルや天然ガスなどが上昇した。エネルギーセクターの構成比で半分近くを占め、影響度が大きいガソリン価格は2月分が前月比0.8%上昇と、1月の3.2%下落からプラスに転じたが驚くような上昇とはなっていない。 全米自動車協会によるとレギュラーガソリンの店頭取引価格(全米ガソリン平均価格)は、3月初頃から伸びが加速した(図表3参照)。仮に軍事行動の長期化で原油価格、並びにガソリンの店頭取引価格が高止まるなら、来月以降のCPIの押し上げ要因となることが懸念される。

金融政策の判断は難しい。仮にインフレ率が上昇したとしても、原油価格のような供給サイドを原因とするインフレに対し金融政策でどこまで対応すべきか慎重な判断が求められるからだ。来週開催が予定されている3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)における注目ポイントだろう。ブラックアウト期間(金融政策についての発言を控える)前のFOMC参加者の発言ではウォラー理事はエネルギー価格の影響を直接受けないコアCPIを重視すべきと指摘しており、エネルギー価格の変動が金融政策に影響させるべきでないと考えているようだ。金融緩和を支持していると考えられる。一方、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は地政学リスクに対しては慎重に動向を見極める必要があると指摘している。判断先延ばしは、据え置き期間の長期化が連想され、ウォラー理事に比べて慎重だ。FOMC後のパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長による記者会見などを手がかりに、FOMCのコンセンサスを探りたい。

エネルギー価格に目が向くが、それ以外の内容にも注意が必要

次に、食品は2月の伸びが1月を上回ったが、野菜・果物の上昇など個別品目要因が主な背景だ。

関税の影響を受けやすい品目を多く含む財は2月が前月比0.1%上昇と低い伸びにとどまった。数字だけ見ると関税の影響はなさそうだ。ただし、衣服(2月は前月比1.3%上昇、以下数字のみ)、家電(3.1%)、スポーツ用品(0.7%)など関税の影響を受けやすい品目に気になる動きもあった。一方で、財に含まれる中古車(0.4%下落)などが押し下げ要因となり、財全体では動きが小幅だった。しかし、個別品目をみると、関税による価格転嫁の動きが終わったと判断すべきではないだろう。

サービスは、2月が前月比で0.3%上昇と、前月の0.4%上昇を下回った。ただしサービス全体が鈍化したというより、個別品目要因が大きい。サービス項目の中で構成割合が大きい住居費は1月と同じ伸びだった。医療サービスなどは2月の伸びのほうが大きかった。2月にサービスの寄与度が縮小した背景の一つは航空運賃が、1月の前月比6.5%上昇から2月は1.4%上昇と、依然高水準だが、大幅に鈍化したことなどによる。しかし地政学リスクが高まる中、航空運賃の不確実性は今後も高い可能性がある。2月の数字だけで、サービス価格が鈍化したと判断するのは早計と思われる。

最後に、CPIではなく、FRBがより重視するとされる米個人消費支出(PCE)物価指数への影響を考える。2月のCPIで住居費(帰属家賃)は0.2%の上昇にとどまった。また、中古車は2月のCPIの押し下げ要因だった。一方、PCEでは帰属家賃や中古車のウェイトが低い一方で、CPIでは押し上げ要因だった娯楽用品などのウェイトはPCEで相対的に大きい。2月のPCEはCPIとはやや違った印象の数字となる可能性も考えられる。

CPIは足元まで鈍化傾向にあるのは明確だが、注意すべき内容も含まれていると思われる。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
シニア・ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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