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3月米CPI、ガソリン価格の影響が明確となった
梅澤 利文
2026/04/13

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概要

3月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比3.3%上昇し、前月を大幅に上回った。ガソリン価格の急騰が主な要因となった。エネルギー以外の項目への波及は限定的で、食品や財の価格は安定していた。中東情勢悪化の長期化などにより原油価格が高水準で推移すれば、幅広いインフレ懸念が高まる可能性がある。なお、米国のガソリン価格は原油価格の影響を受けやすい構造となっている。




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3月の米消費者物価指数はガソリン価格急騰を受け大幅に上昇した

米労働省が4月10日に発表した3月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比上昇率が3.3%と、市場予想の3.4%上昇を下回ったが、2月の2.4%上昇を大幅に上回り、約2年ぶりの伸びとなった(図表1参照)。物価の瞬間風速を示す前月比の伸びは0.9%上昇と、前月の0.3%上昇から急加速した。イラン攻撃に伴うガソリン高が物価を押し上げ、ロシアがウクライナへの侵略を始めた後の2022年6月以来の高さを記録した。

エネルギーと食品を除くコアCPIは前年同月比で2.6%上昇と、2月の2.5%上昇を小幅に上回った。コアCPIは前月比で0.2%上昇と、市場予想の0.3%上昇を下回り、前月と一致した。

3月米CPIの急上昇はガソリンでほぼ説明されるが、他の項目は鈍化傾向

3月の米CPI発表直後、米国債市場で国債利回りの変動は比較的小幅だった。3月は前月比の伸びが0.9%上昇と急加速したが、ガソリン価格の急騰は事前に広く認識されており、市場は十分に織り込んでいたようだ。3月の伸びはガソリン価格上昇という、わかりやすい理由でほぼ説明されるからだ。ただし、物価の先行きには注意も必要だ。

総合CPIの前月比の伸びを、エネルギー、食品、財、及びサービスの4項目に分けて寄与度をみると、ガソリンを含むエネルギーがCPIの3月分の押し上げ要因であったことは明確だ(図表2参照)。

エネルギー項目の各品目の前月比の伸びを確認すると、ガソリンは21.2%上昇と記録的な伸びとなった。

先の寄与度で、エネルギーは3月CPIの伸びの8割程度となっているが、この上昇分はほとんどがガソリン価格の上昇によるものだ。他の品目をみると、電力は0.8%上昇となったが、これは2月の下落(-0.7%)の反動の範囲と見られよう。一方、ガス価格は前月の上昇(3.1%上昇)の反動で0.9%下落した。

3月の米CPIについて、エネルギー以外の項目としてサービスを見ると、前月比の伸びは0.2%上昇と前月の0.3%上昇から鈍化した。医療サービスや娯楽サービスが伸びを抑えた。住居費は3月が0.3%上昇と、小幅ながら押し上げ要因だった。一方で航空運賃は3月が前月比2.7%上昇し、輸送サービスの明確な押上げ要因だった。

食品は個別品目により価格の動きにばらつきはあったが全体として3月は横ばいだった。

物の値段である財も全体としては落ち着いた動きだった。3月が前月比で0.1%上昇と、2月(0.1%上昇)と同じ伸びだった。品目別では、家電は1.6%下落し前月を大幅に下回った。一方で、衣料品、玩具など関税の影響が大きいとみられる一部品目の価格の伸びは比較的大きかった。関税による価格への懸念はかなり後退したとみられるが、ゼロではないようだ。

3月の米CPIはエネルギー、とりわけガソリン価格が押上げ要因だったが、サービスなど他の項目への波及は限定的だったように思われる。このことは、仮に、中東情勢が短期間で改善し、原油価格が早期に軍事行動前の水準に戻れば、米国のインフレ懸念は後退するとみられる。

反対に中東情勢の緊張が続き、原油価格が高水準で推移する状況が明らかとなれば、物価上昇はガソリンだけにとどまらず、物流費用や物価上昇に伴う賃金の上昇などからインフレ懸念は急速に高まるだろう。このような局面では長期の期待インフレ率が急速に上昇すると思われる。3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では年内1回の利下げをドットチャートは示唆していたが、中東情勢悪化が長期化した場合、米連邦準備制度理事会(FRB)は、今は様子見の据え置きとしているが、状況により迷うことなく利上げをすると思われる。

米国ガソリン価格に占める税負担は小さいが価格変動への余地も小さい

米国のCPIではガソリン価格が変動の主役であったが、これには米国の事情もあるようだ。ガソリン単位リットル当たりの税額を国別に比較すると、米国の税額は低水準だ(図表3参照)。これは平時であれば米国の(課税後の)ガソリン価格は低い(安い)ことになる。一方、課税負担が5割を超える欧州の国々は課税額の調整(減税)で価格変動を抑制する傾向がある。図表3は国際エネルギー機関(IEA)のデータを参照したものだ。付加価値税は日本では消費税や地方消費税が該当する。米国では連邦レベルでの付加価値税はなく、地方の小売売上税も含まれていない。

個別間接税は日本では揮発油税、地方揮発油税や石油石炭税が該当する。足元では日本の課税負担は暫定税率の上乗せ分が軽減された。

日本では、これに加え、緊急的激変緩和措置なる補助金も活用されている。この措置がなければ日本のガソリン代は1リットル当たり220円近くになっているはずだ。このようにガソリン価格は国別の政策の影響を受けやすいが、米国は相対的に原油価格の上昇を反映しやすい構造といえそうだ。


梅澤 利文
梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
シニア・ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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