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3月米雇用統計は中東情勢を反映したのだろうか
梅澤 利文
2026/04/06

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概要

米労働省が発表した3月の雇用統計では、非農業部門の就業者数が大幅に増加し、失業率も低下するなど米労働市場の底堅さが示された。雇用の伸びを部門別にみると幅広い分野で雇用が改善した。一方、失業率の質的悪化(労働参加率の低下)や、平均時給の伸び鈍化、週平均労働時間の減少など懸念材料も見られた。今後は中東情勢の影響も含め、雇用統計の動向に注視が必要である。




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中東情勢の悪化を反映し始めた3月の米雇用統計には底堅さが示された

米労働省が4月3日に発表した3月の雇用統計によると、非農業部門の就業者数は前月比17.8万人増と、市場予想の6.5万人増、大幅なマイナスとなった2月の13.3万人減(速報値の9.2万人減から下方修正)を大幅に上回った(図表1参照)。1月の就業者の伸びは速報値の12.6万人増から16万人増へ上方修正された。就業者数の3ヵ月移動平均は6.8万人増と、25年10-12月期のマイナス圏(移動平均の伸び)から改善した。

3月の失業率は4.3%と、市場予想、2月(ともに4.4%)を下回り、米労働市場の底堅さが確認された。平均時給は前年同月比3.5%上昇と、市場予想の3.7%上昇、2月の3.8%上昇を下回った。

米雇用統計で3月の失業率は4.3%と落ち着いた水準だった

3月の米雇用統計は、就業者数の伸び、失業率の低下などが米労働市場の底堅さを示した。図表1にあるように足元で就業者数の伸びは変動が大きい。2月は悪天候や「教育・医療」部門でのストライキの影響で大幅減となったが、3月はその反動もあって急回復した。(3ヵ月)移動平均は昨年10-12月期末から改善傾向で、米労働市場は底堅い。失業率も25年11月の4.5%をピークに、これを下回る推移となっている。米労働市場は底堅いとみられる。米雇用統計に、何点か懸念は残るが、最初に底堅さを確認する。

就業者数の伸びを部門別にみると、3月は医療従事者がストライキから復帰したこともあり「教育・医療」部門が伸びた(図表2参照)。注意したいのは今回の雇用の伸びは同部門だけでなく、「娯楽・宿泊」、「小売」、「製造業」、図表2にはないが「建設業」など幅広い部門に改善が見られた。 「建設業」は悪天候からの回復という面は想定されるが、AI需要を背景としたデータセンター建設も押し上げ要因と思われる。

次に、失業率は3月が4.3%(4.256%)と、2月の4.4%(4.441%)から0.1%低下した(図表3参照)。小数点以下第2位まで見ると、0.2%低下したイメージに近い。足元、失業率は4.5%以下の水準で推移し落ち着きが見られる。

底堅い数字である3月の米雇用統計の中に、気になる内容も見られた

3月の米雇用統計を受け、米連邦準備制度理事会(FRB)による年内利下げへの市場の期待は低下し、年内据え置きの見方が優勢となっている。ただし、今回の米雇用統計だけでは決め打ちできない点や、底堅い米雇用統計の中に懸念が見られる点に注意が必要だ。

米雇用統計は、毎月12日を含む週が調査期間である。したがって足元の中東情勢が十分に反映されているとは言い難い。来月以降の米雇用統計も併せて判断することが求められるだろう。

そのうえ、底堅いとみられる米雇用統計そのものにも、注意点がある。例えば失業率だ。新規失業保険申請件数は低水準で推移するなど、企業のレイオフの少なさは失業率の低下と整合的だ。しかし、失業率の質の悪化が気になる。経済的理由によるパートタイム就業者を失業者にカウントして算出した失業率(U6)は3月が8.0%と2月の7.9%を上回り悪化した。労働市場への参入度合いを示す傾向がある労働参加率は61.9%と、前月の62.0%を下回った。労働市場から退出したとみられる非労働力人口は3月に48.8万人増加した。長期失業者の割合が下がりにくいことなどを考えると、職探しを諦めた可能性もありそうだ。

平均時給の伸びも気になる。前月比で0.2%上昇と、市場予想の0.3%上昇、前月の0.4%上昇を下回った。部門別にみると、製造業などを含む財生産部門は堅調だったが、人件費を反映しやすいサービス部門は3月が0.2%上昇にとどまった(図表4参照)。サービス部門の賃金動向は今後確認する必要がある。まだ、筆者も仮説の段階に過ぎないが、賃金の伸びが低い背景の一つとして、移民も含め低賃金の採用が増えたのではないかと考えている。賃金の伸びが低かった本当の理由は今後の課題であるが、足元の問題として、3月は週平均労働時間が34.2時間と、前月の34.3時間を下回ったことに注意したい。これは総所得の伸び鈍化、消費への影響が懸念されるからだ。

3月の米雇用統計は底堅い数字だったが、気になる点もあるだけに、中東情勢の影響をより反映するとみられる今後のデータも引き続き注視したい。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
シニア・ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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