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- ブラジル、利下げに転じるも中東情勢で慎重な出足
ブラジル中央銀行は3月の会合で政策金利を0.25%引き下げ14.75%とした。インフレ鈍化や一部経済指標の軟化、金利水準の高さから、今後も利下げ姿勢は維持される見通しだが、中東情勢の不透明感、財政政策の影響などを踏まえ、利下げペースは慎重かつ緩やかになるとみられる。他の新興国も外部環境の変化を背景に、昨年の積極的な利下げから緩やかにペースダウンさせる動きが見込まれる。
ブラジル中銀、事前予告通り利下げに転じた
ブラジル中央銀行は3月17~18日に開催した金融政策決定会合(以後、会合)で、政策金利を市場予想通りに0.25%引き下げ14.75%とすることを発表した(図表1参照)。ブラジル中銀は2025年6月の会合で政策金利を15%に引き上げた後、7月会合から26年1月まで5会合連続で政策金利を15%に据え置いていた。
ブラジル中銀は1月の会合で「次回の会合では金融政策の緩和を開始する」可能性があることを明確に示唆したことから市場では利下げは相当程度織り込まれていた。当初、市場では0.5%の利下げ幅も予想されていたが、中東情勢を受け予想も修正された。慎重な利下げ開始となった。
主な新興国の中央銀行は昨年概ね利下げ傾向を維持した
主な新興国の2025年の金融政策は概ね政策金利の引き下げだった(図表2参照)。ブラジルは、ようやく利下げの環境が整い、今年になり利下げに転じた。ブラジルはこれから他の主要新興国の背中を追いかける展開が想定される。ただし、中東情勢の混迷など不確実性は高いことから、ブラジル中銀は利下げ路線を維持したとしても、慎重な政策運営が想定される。
まず、ブラジル以外の主な新興国の金融政策をいくつか簡単に振り返る。同じ南米のメキシコは今年2月の会合で、政策金利を7.0%に据え置いた。据え置き判断は24年6月以来で、昨年12月まで利下げを続けた。南アフリカやインドはメキシコに比べると慎重なペースだったが、利下げを続けた。
インドネシアも利下げ方向では一致するが、市場予想(据え置き)に反して拙速に利下げを進めた結果、通貨安の反動に見舞われた。そのため昨年9月の利下げ後は据え置きを維持している。
主要新興国が主に昨年利下げを実施できた背景として、インドネシアのような例外はあるが国内インフレの落ち着きがあげられる。国外要因としては、米国のインフレ鈍化と金利の低下、米ドル安傾向、さらに米国通商政策(関税引き上げ)が緩和されたことなどによる。
しかし、これらの国外要因は今年になり変化しつつある。ドル安は有事のドル買いから底を打ち始め、米国金利も上昇傾向だ。主要新興国は緩和姿勢を維持したいところだが、利下げペースは昨年に比べ緩やかとなりそうだ。
ブラジル中銀は金融緩和姿勢を維持すると見込むが当面ペースは緩やか
今回の会合で利下げを開始したブラジルはどうなるだろうか。今回のブラジル中銀は政策金利の水準が依然として引き締め領域と明言しており、利下げ姿勢は維持する公算が高い。しかし、利下げをするとしても次の3点に注意が必要だ。
まず、ブラジルのインフレ動向を確認する(図表3参照)。ブラジルの2月の消費者物価指数(IPCA)は前年同月比で3.81%上昇と、ブラジル中銀の物価目標(3%±1.5%)の範囲内に収まった。物価鈍化は3月会合での利下げを後押しした要因でもある。ブラジルは昨年インフレ率が物価目標の上限を超えていた時期もあり、これが高金利政策の背景でもあった。
足元の物価鈍化は利下げ支持要因だが、今回の会合で示された26年のインフレ見通しは3.9%と、前回会合時点の3.4%から上方修正された。27年の修正は小幅にとどまり、物価目標の中心値に向かって鈍化するシナリオは維持されているが、時期は後退させている点に注意は必要だ。
2点目は、中東情勢の影響である。イラン戦争の展開やエネルギー施設への影響は全容が見えないが当面、最大の物価押上げ要因だろう。今回の会合では中東の地政学リスクについて冒頭で言及している。前回会合でも地政学リスクに言及してはいるが、おそらくベネズエラなどを意識したものだろう。今回の声明文では中東情勢を複数指摘しており、関心の高さがうかがえる。中東情勢の展開は不確実性が高く、当面は利下げ幅などを慎重にさせる方向に影響しそうだ。
3点目は財政政策の物価への影響だ。ブラジル中銀は財政政策の金融政策に対する影響をモニターするといった表現に収めているが、財政政策拡張への警戒心の表れだろう。ブラジルの経済状況も失業率の下げ止まりなど軟化の兆しもあるうえ、10月には大統領選挙も予定されている。これだけでも財政支援策の拡大が想定される。そのうえ中東情勢の悪化は、財政支援策への誘因を加速しかねない。ブラジルは再生可能エネルギーの活用は進んでいるが、足元ではブラジルの小売価格が急上昇するなど、中東情勢の悪化は免れそうにない。中東情勢の展開に不確実性が残る中、ブラジル中銀は財政政策にも目を光らせる必要があるだろう。
ブラジル中銀は利下げ姿勢を維持すると筆者はみるが、次回の利下げを明確に示唆していない。当面は慎重な政策運営となりそうだ。
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