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- 2月の米雇用統計、どこまで悪いとみるべきか
2月の米雇用統計で、非農業部門の就業者数が前月比で大幅に減少し、市場予想を下回った。また、失業率は4.4%に上昇した。就業者数急減は「教育・医療」の伸び悩みが背景だが、これは一時的な要因とみられる。労働参加率も低下したが、人口推計の修正が影響している。一方で、長期失業者の増加など質的な悪化も一部に見られる。米労働市場の判断には今後の動向も見極める必要がありそうだ。
2月の米雇用統計、非農業部門就業者数は前月比で大幅なマイナス
米労働省が3月6日に発表した2月の雇用統計によると、非農業部門の就業者数は前月比9.2万人減と、市場予想の5.5万人増、1月の12.6万人増(速報値の13万人増から下方修正)を大幅に下回った(図表1参照)。なお、2025年12月分も4.8万人増から1.7万人減に下方修正された。
失業率は2月分が4.4%と、市場予想、1月(ともに4.3%)を上回った。失業率は25年11月には4.5%にまで上昇した後落ち着いていたが再び上昇する展開となった。平均時給は前月比0.4%上昇と、市場予想の0.3%上昇を上回り、1月の0.4%上昇に並んだ。前年同月比3.8%上昇し、市場予想、1月(ともに3.7%上昇)を上回った。
2月の就業者数は前月比でマイナス圏となったが、注意すべき点もある
2月の米雇用統計は就業者数の伸びが市場予想を下回っただけでなく、前月比でマイナスに転じるなど米労働市場に対する認識に影響を与える可能性もある。金融当局者の一部にも認識の変化が見られた。米連邦準備制度理事会(FRB)のボウマン副議長やサンフランシスコ連銀の デーリー総裁は雇用統計発表後に米雇用市場に対する懸念を表明している。もっとも、雇用統計後も政策金利の据え置きを支持する連銀総裁もおり、見方は分かれているようだ。
2月の雇用統計の内容を確認する。大幅減となった就業者を部門別にみると2つの対照的な点が見いだされる(図表2参照)。1点目は「教育・医療」部門が1月の急上昇から2月に急激に落ち込んだ点だ。「教育・医療」は景気の波にとらわれず安定的に採用する傾向がある。とはいえ、1月の伸びは高水準だ。「教育・医療」 の伸びは25年12月が3.8万人増、過去平均が毎月4万人程度の伸びで、これらと比較しても1月は高過ぎだ。
「教育・医療」が2月に大幅減となったのは1月からの反動減に加え、医療関係者(看護師)のストライキも下押し要因のようだ。これらはいずれも特殊要因と思われる。
特殊要因でない点として、「教育・医療」以外の部門である「娯楽・宿泊」、「小売」など幅広い部門で2月の伸びは1月を下回っているのが気がかりだ。雇用が全体的に伸び悩んでいた可能性はある。この判断に当たっては2月単月だけでなく、3月以降の動向も踏まえる必要がありそうだ。
失業率は1月を上回るなど気になる面はあるが、内容には注意も必要
2月の失業率は4.4%と前月を上回った(図表3参照)点に注目すれば米労働市場の悪化要因だ。しかし、ボストン連銀のコリンズ総裁は「歴史的に低水準」と述べるなど判断が分かれるところだ。
一方、経済的理由によるパートタイム就業者等を失業者にカウントして算出した失業率(U6)は2月が7.9%と、25年11月の8.7%から低下が続いている。U6失業率の低下はパートタイムなどからの雇用のシフトが想定され、失業率(労働市場)の質には改善している面もあると思われる。
なお、労働市場の質という点で注目される労働参加率(労働市場への参入度合いを示唆)は図表3にあるように2月が62.0%と、1月の62.1%(速報値の62.5%から下方修正)、25年12月の62.4%を下回った。数字だけを見ると、労働市場からの流出が増加したように見え、通常であれば労働市場の質の悪化が疑われるところだ。
しかし、労働省の声明文を見ると、今回の労働参加率の低下は(通常1月の)2月の人口推計の更新で労働参加率が高い年代の人口が大幅に下方修正されたことが反映されたと説明している。労働参加率の低下から、労働市場の質の悪化と即座に判断すべきではないだろう。
ただし、失業率などを算出する家計調査の中には質の悪化がもう少し明確に示唆された項目もみられた。その1つは声明文でも指摘されている長期失業者(27週以上)の増加である。長期失業者が失業者全体に占める割合は1月の24.7%から2月は25.3%に拡大(悪化)した。1月の低下(改善)は一時的であった可能性もある。
賃金の伸びは、インフレ、消費に影響を及ぼすとされるが、2月は平均時給の伸びは前月比で0.4%増と前月(0.4%増)に続き堅調な伸びを維持した。この点は米国経済の押し上げ要因だろう。
米雇用統計では非農業部門の就業者数の伸びと失業率で全体のトーンが語られることが多い。しかし、内容を見ると悪化の転換点と判断するには材料不足だと思われる。例えば、2月の就業者数を落ち込ませた「教育・医療」部門の就業者数の伸びは1月と2月の平均で見るとおおむね過去平均に近い水準だ。
3月以降の米雇用統計が2月のように悪化が続くようなら話は別だが、今回のデータだけでの決め打ちに筆者は慎重だ。2月の米雇用統計には悪い数字もみられたが、全体としてはやや回復が鈍いという程度の判断にとどめている。
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