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ECB4月の理事会プレビュー:何に注目すべきか
梅澤 利文
2026/04/24

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概要

4月のドイツZEW景気期待指数やユーロ圏の景況感指数は大幅に悪化し、特にサービス業が軟調だった。インフレについてはエネルギー価格の上昇がインフレを押し上げているものの、他セクターへの波及は限定的だった。欧州中央銀行(ECB)は4月理事会で政策金利を据え置く見通しだが、6月以降の政策運営には不確実性もある。中東情勢の不透明さが今後の金融政策判断に影響を与えるだろう。




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ユーロ圏で経済規模が最大のドイツの景況感は中東情勢を受け悪化した

欧州経済研究センター(ZEW)が4月21日に発表した4月のドイツ景気期待指数はマイナス17.2と市場予想のマイナス5.8、前月のマイナス0.5を大幅に下回った(図表1参照)。ZEW期待指数の調査対象は金融機関のエコノミスト、アナリスト、運用者などに絞っているため、「市場の声」を反映すると見られる。

ZEWは声明で、「(現在進行中の)中東危機がドイツにもたらす経済的影響は、単なる価格上昇にとどまらない」と述べ、「企業はエネルギー供給の長期的な不足を懸念しており、それが投資意欲をそぎ、政府の景気刺激策の効果を弱めている」と指摘している。

ECBは物価安定が主要な使命だが、景況感の悪化も無視できないだろう

欧州中央銀行(ECB)は4月29-30日に理事会を開催する予定だ。市場では大半が政策金利を7会合連続で2.0%に据え置くと見込んでいる。ただし、原油価格上昇や3月19日の理事会の発言内容などを踏まえ、市場は一時期、4月理事会での利上げを高確率で見込んでいた時期もあった。

ECBに限らず、中央銀行は予測し難い中東危機を踏まえながら、「早すぎる利上げ」、「遅すぎる利上げ」のどちらにもならないよう適切な判断と、市場とのコミュニケーションが求められている。

こうした中で開催される4月の理事会では据え置き判断となる公算で、その次(6月11日)以降の政策方針に注目が集まりそうだ。まずは、ユーロ圏の経済指標を確認する。

ユーロ圏景気を景況感指数から判断すると悪化ペースが想定より早い。4月のZEW期待指数は改善と悪化の判断の目安のゼロを前月に続き下回ったうえ、マイナス幅が拡大した。

ユーロ圏全体の景況感も悪化した。S&Pグローバルが23日発表した4月のユーロ圏総合購買担当者景気指数(PMI、速報値)は48.6と、市場予想の50.1、3月の50.7を下回り、景気拡大・縮小の境目である50を下回った。内訳をみると製造業PMIは52.2と前月の51.6を上回り堅調だった一方、サービス業PMIは47.4と、3月の50.2を大幅に下回った。

製造業PMIは生産、新規受注が堅調だった。このことはECBが早急に景気対策のため慌てて利下げをする必要がないことを意味する可能性がある。不確実性を前に様子見をするECBにとって、つかの間の、考える余裕となるかもしれない。

それでも、サービス業PMIの悪化は懸念材料だ。中東情勢の悪化に加え、エネルギー価格上昇などがセンチメントを悪化させたと考えている。

次にユーロ圏の物価を確認する。欧州連合(EU)統計局が4月16日発表した3月のユーロ圏の消費者物価指数(改定値、CPI)は前年同月比2.6%上昇し、2月の1.9%を上回った。変動の大きい項目を除いたコアCPIは2.3%上昇と、2月の2.4%上昇を下回った。CPIの内訳をエネルギー、財、サービスに分けてみると、物価の押上要因はエネルギーで、3月は5.1%上昇と、2月の3.1%下落を大幅に上回った(図表2参照)。中東情勢の悪化の影響は原油、天然ガス価格を押し上げたことが背景だ。しかし、サービスは3.2%上昇と、2月の3.4%から鈍化した。原油価格上昇のサービス価格への影響は今のところ抑えられているようだ。なお、ユーロ圏の4月のCPIは30日と理事会当日に発表予定で、総合CPIは2.9%上昇と、3月を上回ることが見込まれている。

ECBの主要メンバーは4月の据え置きを示唆するも、先行きは不確実

ユーロ圏の経済指標、特にインフレ動向からエネルギー価格による押し上げは見られるが、他のセクターへの波及は今のところ限定的なようだ。

それもあってか、ECB主要メンバーの最近のコメントは据え置き支持で概ね一致している(図表3参照)。3月会合後にはタカ派(金融引き締めを選好)のナーゲル・ドイツ連邦銀行総裁が4月に利上げが必要となる可能性を示唆した。しかし、同じドイツ出身でタカ派のシュナーベル理事は様子見を支持している。市場も経済指標と、ECBのコミュニケーションから4月は据え置きがコンセンサスだ。

一方、6月の会合では利上げが市場のコンセンサスだ。ECBは3月の理事会で「現状(基本シナリオ)」、「悪化」、「深刻」の3通りのシナリオを示し、中東情勢の悪化度合いに応じて政策対応を変えるという内容の説明を行った。悪化、深刻と状況が悪くなるにつれて物価は上昇し、より引き締めが必要になるイメージだ。足元の状況は、「基本シナリオ」と「悪化」の間にあると判断しているようだが不確実性は残る。米国とイランの交渉の先行きが不透明だからだ。両国の交渉をECBがどのように判断するかは4月会合の主要な注目点だろう。仮に、ECBが悪化に近いと判断する場合、筆者は年内2回程度の利上げを想定するだろう。


梅澤 利文
梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
シニア・ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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