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日銀、3月会合で示したことと、示さなかったこと
梅澤 利文
2026/03/23

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概要

日銀は3月の金融政策決定会合で政策金利を据え置き、声明文で利上げ姿勢を維持した。中東情勢の不透明感や円安圧力がある中、追加利上げ時期は明示されなかったが、日銀の発表内容からは、4月会合での利上げの可能性が残されたとみられる。追加利上げの時期に不確実性が残る中、今後の賃金動向や企業の値上げ、物価見通し、日銀メンバーの発言などが注目される。




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3月の日銀金融政策決定会合、不確実性を前に市場予想通り据え置き

日銀は3月18日-19日に開催した金融政策決定会合(会合)で、市場予想通り、政策金利である無担保コール翌日物レートの誘導目標を0.75%で据え置くことを決定した(図表1参照)。今回の会合では、1月会合に続き高田審議委員が物価安定目標はおおむね達成され、海外経済が回復局面にあるもとで物価の上振れリスクが高いとして現状維持に反対し、1.0%への利上げを提案したが、反対多数(8対1)で否決された。

日銀は声明文で現在の実質金利が低水準な中、日銀の見通し通りに推移するなら、「引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えている」との表現を維持した。

日銀、追加利上げ姿勢を明確に維持したものの時期は特定させず

3月の日銀会合終了後、為替市場では小幅ながら円高が進行した。足元再び円安となっているのは週末の中東情勢の悪化、米金利高などが背景とみられ、3月会合の発表内容は円安を加速させなかったようだ。なお、中東情勢の不確実性が高い中、日銀は次の利上げ時期などを明確に示さなかったが、筆者も示すべきでないと考える。

金融市場では、日本国債利回りの会合後の動きは小幅な上昇にとどまっている。短期金融市場が織り込む4月、6月会合での利上げ確率に大きな変化はなかった。中東情勢を前に、利上げ姿勢は維持しつつも、足元では日銀は様子見と、市場は判断したようだ。その判断にあたり注目されたと思われる主な点を以下に示す。

まず、政策金利を据え置く一方で、声明文に利上げ姿勢を示唆する「引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えている」を、中東情勢が混迷する中でもしっかり残したことだ。植田総裁は中東情勢悪化の日本経済への影響について、①原油価格の高騰による交易条件の悪化で景気が下押しされる可能性、を指摘する一方で、②原油価格の上昇が基調物価を押し上げる可能性も指摘している。①、②双方の可能性がある中で、利上げ姿勢を維持したことは、円安圧力に対しある程度の抑制となった可能性も考えられる。

また、植田総裁は中東情勢の悪化が基調物価を上振れ、それとも下振れのリスクとなるかについて「前者(上振れリスクを懸念)が人数としては多かった印象」と述べ、物価上昇抑制を重視するタカ派(金融引き締めを選好)の一面をのぞかせた。 

筆者は日銀の追加利上げの時期を4月会合か6月のどちらかと見込んでいたが、今回の会合後でも決め打ちはできなかった。中東情勢が混迷する中でも、日銀が4月追加利上げの可能性を残すコミュニケーションを行ったからだ。もっとも、会合前に円安圧力があったことからある程度のタカ派バイアスは想定の範囲内だった。その意味では、6月の可能性がやや高いのかもしれない。

中東情勢が最大関心事だが、国内にも注目イベントが目白押し

日銀の追加利上げの時期について、3月会合から特定するのは難しかった。しかし、植田総裁の会見などから注目すべきイベントもいくつか指摘されたので以下に整理する(図表2参照)。

まず、賃金動向が注目される。利上げのタイミングについての質問に対し、植田総裁は春季労使交渉(春闘)における賃上げの状況や、企業による値上げの動きなどを点検したいと述べているからだ。26年春闘は3月17-19日に大企業の回答が示され、集計結果が今週順次発表される。これまでの結果から、25年を小幅下回る水準となるとの見方が多いようだ(図表3参照)。

より注目されるのは中小企業の賃金動向だ。ただ集計結果は先となるため、4月月初の日銀短観や、6日の日銀支店長会議などでヒアリング結果を通じた中小企業の賃金動向に要注目だ。仮に中東情勢が賃金上昇を抑制するならば、日銀は利上げに慎重なペースとなる可能性も考えられる。

次に、企業による値上げの動きを確認する意味では3月の消費者物価指数(CPI)にも注目したい。原油価格の上昇はガソリン価格を早々に押し上げた。しかし、原油価格上昇の影響はプラスチックなど幅広く、影響の広がりには注意したい。ただ、3月段階での価格への反映は限定的かもしれない。一方で、日銀短観には企業の物価見通しなども発表されることから、こちらにも注意が必要だ。

日銀メンバーの講演など発言機会にも注目したい。前回の利上げ(25年12月会合)前に、植田総裁が名古屋での「挨拶」(挨拶といっても実態は金融政策の方針説明)で利上げの地ならしをした経緯がある。日銀は市場との円滑なコミュニケーションを重視していることから、市場の織り込みが不十分な現在の状況で4月利上げを目論むなら、事前予告に近いアナウンスも想定される。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
シニア・ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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