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FOMC3月会合の注目の3点と、議長の意外な発表
梅澤 利文
2026/03/19

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概要

FRBは3月のFOMCで政策金利を据え置き、反対票はミラン理事1人に減少した。中東情勢やインフレ動向、関税の影響など不確実性が高まる中、年内の利下げ見通しは1回が維持されたが、据え置きを支持する声も根強い。パウエル議長はインフレ鈍化を利下げの条件としつつ、バランスの取れた姿勢を示した。議長職の今後についても言及した。FRBは当面、新たな情報を待つ慎重な姿勢が続く見通しだ。




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3月FOMC、市場予想通りの据え置きながら、反対票は1人にとどまった

米連邦準備制度理事会(FRB)は3月17日~18日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、市場予想通り政策金利(フェデラルファンド(FF)金利)の誘導目標を3.50%-3.75%で据え置いた(図表1参照)。今回のFOMCで反対票を投じたのは1人(ミラン理事:0.25%の利下げを主張)に縮まった。今回同様に据え置きとなった前回FOMCでは2名(ミラン理事とウォラー理事:ともに利下げを主張)が反対票を投じた。

声明文の主な変更箇所は失業率が安定と指摘されたことと、中東情勢が米国経済に与える影響が不確実性要因として加えられたことだ。

年内の利下げ回数は1回が維持されたが、利下げのハードルは低くない

3月のFOMCの結果として据え置きは既定路線だが、筆者は次の点に注目していた。①反対票の数、②ドットチャートやFOMC参加者の経済見通し、③パウエル議長の会見でのトーン、である。

①に注目したのは、軟調だった2月の米雇用統計を受け利下げを支持するコメントがボウマン理事などからあったためだ。ただ今回の投票結果を見ると、据え置きでFOMCはまとまったようだ。

②に注目した背景は中東情勢が不透明な中、経済や利下げの見通しにどう影響するのかを確認するためだ(図表2参照)。2026年の利下げ想定回数は図表1、もしくは図表2のFF金利見通しから、昨年12月のFOMC同様に年内1回の利下げ見通しが維持された。しかし、ドットチャートで分布をみると、年内据え置きを支持する参加者は7名と、年内利下げ1回の7名と拮抗している。年内2回以上の利下げを支持する参加者が合計5名いるため中央値は年内1回利下げに位置するが、据え置きを支持する声も根強いとみられよう。

声明文には追加利下げの余地が残ることも示唆されるが、今回のFOMCの発表内容全体を通せば利下げのハードルは低くない。例えば、図表2に示した経済見通しから利下げの厳しさがうかがえる。中東情勢の悪化などを受けインフレ動向を示唆する米個人消費支出(PCE)物価指数の見通しは総合、コアともに26年を中心に上方修正された。注意したいのは、エネルギーなど変動の大きい項目を除いたコアPCEも上方修正されていることだ。中東情勢悪化を受けエネルギー価格がPCEを押し上げるだけでなく、コアにも押し上げ要因があることが示唆される。

おそらく、FOMC参加者の中には関税の影響などを懸念していると思われる。2月の消費者物価指数(CPI)の財項目で、衣料品や一部家電製品などの品目に関税の影響がみられた。財項目全体の価格の伸びは小幅だったが、これは中古自動車価格の下落が他の品目の伸び抑えたためだ。そのうえ、足元では中古自動車の卸売価格は上昇傾向に転じているようだ。また、コアCPIの大半を占めるサービス項目の価格も航空運賃など変動要因を除くと下がりにくい状況が続いている。

これに加えて、ガソリンなどエネルギー価格が足元急上昇している。物価への懸念は簡単には解消しないかもしれない。

経済見通しでGDP(国内総生産)成長見通しは上方修正された。上方修正の詳細な背景はわからないが、生産性の改善などを反映したようだ。ただし、中東情勢の不確実性は織り込みにくいなど不確実性も残されていると筆者はみている。

パウエル議長の会見のトーンはややタカ派寄りだがバランスをとった面も

③のパウエル議長の会見でのトーンは市場の反応からややタカ派(金融引き締めを選好)よりと判断したようだ。パウエル議長は追加利下げの条件としてインフレ鈍化、特に、関税によって押し上げられてきた財のインフレ減速の重要性を指摘したことなどはタカ派的だろう。

ただし、同時に、パウエル議長は財価格の鈍化が確認されれば追加利下げを支持しやすくなることや、足元の物価の高止まりは特殊要因による可能性を指摘するなどハト派(金融緩和を選好)的な面も見られた。不確実性を前にバランスを保ったとみるべきだと筆者は考えており、パウエル議長は、タカもハトも入り混じったトーンではないだろうか。中東情勢の先行きが不確実な状況で金融政策は先走りせず、新たな情報を待つ姿勢を選択しているように思われる。

パウエル議長の会見でのサプライズはご自身の今後について明言したことだ。パウエル議長はFRB本部の改修工事を巡る司法省の調査が完全に終結するまで、理事にとどまる意向を示した。議長としての任期は26年5月だが、理事の任期は28年1月末まで残されている。これまでの慣例ではFRB議長退任に伴い、理事の任期が残っていても、辞任するのが通例だが、残る可能性を示唆した。

また、議長任期(26年5月15日)までに後任議長が決まらない場合、暫定議長として残る可能性を示唆した。パウエル氏は22年、2期目の承認待ちの間、臨時議長を務める経験をしているだけに、議長職が空席となった場合の対応に問題はなさそうだ。今年1月にパウエル議長は「政権による脅しと圧力」と訴える捜査が続く限り、抵抗を続ける姿勢をビデオで訴えるという異例の対応を行った。この問題の決着がついたとは言い難い。仮にパウエル議長の影響力が残るのならば、ややタカ派と解釈されそうだ。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
シニア・ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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