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- 中東情勢混乱の中、メキシコ中銀は利下げを決定
メキシコ中央銀行は市場予想に反して政策金利を0.25%引き下げ、6.75%とした。中東情勢の混乱やインフレ率の上昇など不安定な状況下での利下げは市場に意外感を与えた。インフレ率が物価目標を上回ったのは最低賃金引き上げやエネルギー価格の上昇が影響したようだ。経済成長率は低く、今後も外部環境や米国との通商交渉の不確実性は続くが、追加利下げの余地は限られるとみている。
メキシコ中銀、中東情勢の不確実性が高い中でも利下げを選択
メキシコ銀行(中央銀行)は3月26日、過半数の市場予想(据え置き)に反し、政策金利を0.25%引き下げて6.75%とすると発表した(図表1参照)。メキシコ中銀は2月の金融政策決定会合(会合)では据え置いており、利下げは2会合ぶりとなる。市場では半数近くは追加利下げを見込んでいたが、中東情勢の混乱を前に様子見との見方がやや優勢だっただけに、ややサプライズだった。
通貨ペソは昨年の利下げ局面では上昇傾向だった。依然高金利であるうえ、米国との通商交渉は米国からの圧力を受けながらも、無難に切り抜けたことなどが、ペソを押し上げた背景とみられる。ただ、足元ではペソ安に転じている。
メキシコ中銀はインフレ見通しを上方修正する中で利下げを決定した
中東情勢の混乱を受け、3月の会合では、日米欧の中央銀行は総じて様子見(据え置き)姿勢であった。一方、南米ではブラジルに続いてメキシコも利下げを決定した。ブラジルは利下げ前の政策金利が15%と高水準であったことと、事前に利下げを明確に示唆していたため違和感はなかった。一方、メキシコ中銀の今回の利下げには疑問が残る。以下では、最初に疑問点を整理したうえで、利下げの理由を確認する。
メキシコのインフレ率は鈍化傾向から、最近はじり高傾向に転じている(図表2参照)。2月メキシコの消費者物価指数(CPI)は前年同月比で4.02%上昇、エネルギーなど変動の大きい項目を除いたコアCPIは4.50%と、ともにメキシコ中銀の物価目標(3%±1%)の上限である4%を上回っている。
また、メキシコでは2週間に1回、隔週CPIが公表される。3月24日発表分の総合CPIは前月の4.13%上昇から今回は4.63%上昇へと急加速した。メキシコ中銀の声明文でも隔週CPIを参照しており、非コア部分が今回の急上昇の背景と指摘している。品目をみると、果物・野菜などの農産物とエネルギー価格が前回から大幅に上昇している。中東情勢の悪化が価格に反映された可能性がある。
メキシコの物価がじり高となっているのは非コア部分だけではない。年初からの最低賃金引き上げも押し上げ要因と考えられる。
このような中、メキシコ中銀が声明文に示したインフレ予想を見ると、26年1-3月期から7-9月期まで小幅ながら前回から上方修正した。非コア部分が押し上げ要因と見込んでいるようだ。ただし、26年10-12月期以降(28年1-3月期まで)のインフレ予想は前回から据え置かれた。中東情勢の混乱の長期化は織り込んでいないということだろうか。
今回の声明文で、足元のペソ安進行に言及してはいる。しかし、昨年の大幅なペソ高だったことからメキシコ中銀はペソ高水準とみている。ペソが高値圏なのは確かだが、さらなる追加利下げとなれば、ペソ安圧力への懸念もあると筆者は考える。
こうした中、メキシコ中銀の今回の会合における投票結果は賛成3、反対2(据え置きを主張)と拮抗していた。ぎりぎりの判断だったことがうかがえる。
メキシコの景気下支えが利下げの背景だろうが、利下げ余地は限られよう
メキシコ中銀が利下げを決めた背景は、ペソが高値圏であることに加え、これまでの景気回復の鈍さに加え、金利の引き締め水準を挙げている。また、今後については外部情勢を注視すると指摘している。メキシコのGDP(国内総生産)は25年10-12月期が前年同期比で1.8%増だった(図表3参照)。この結果、25年通年の成長率は0.6%増(速報値)と低水準で、利下げの必要性はうかがえる。
メキシコ中銀の自然利子率(政策金利の目安)推定値から判断して、現状の政策金利の水準は若干金融引き締め気味とみられる。メキシコ中銀は今後の政策運営方針として、追加利下げの可能性を示唆しているのは、中立水準に戻す余地があると判断しているからだろう。ただし、それでも中東情勢の不確実性が高い今回の会合での利下げに対し、筆者の疑問は残っている。
なお、メキシコは米国との今後の通商交渉を控えていることも先行きの不確実要因だ。特に、今年7月に予定されているUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)見直しが重要だ。メキシコは米国が課した232条などによる自動車部品等への関税についてはUSMCA原産地規則を満たせば追加関税が無税となるなどの恩恵を受けてきた。
USMCAの見直し協議に先立って、今月、米国とメキシコの間で実務レベルの協議が開始された。今後、仮に3カ国で内容見直しが合意されれば、協定は42年まで延長される可能性がありメキシコは合意を目指したいところだ。しかし、トランプ大統領は、USMCAは米国にメリットがないとして離脱をちらつかせている。今年も米国との通商協議はメキシコにとって重い課題だ。中東情勢に加え、通商交渉の不確実性を前に、メキシコ中銀は早めの景気下支えに動いたのが今回の利下げの背景のようだが、今後の利下げ余地は少なく、利下げペースは鈍化すると筆者はみている。
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