Article Title
コロナが変えた、新興国の金融政策ツール
梅澤 利文
2020/10/28

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

日欧米をはじめ先進国では非伝統的(伝統的は政策金利)というよりは主要金融政策手段(ツール)となった感がある中央銀行による債券購入(主に国債)が新興国にも徐々に広がりを見せ始めていることをご紹介します。ただ、新興国の債券購入には様々な政策目的があることから、市場への影響などに違いがある点に注意が必要です。



Article Body Text

IMF国際金融安定性報告書:コロナで新興国の金融政策に新たな動き

国際通貨基金(IMF) は2020年10月版の国際金融安定性報告書(GFSR)でコロナ感染拡大時における新興国の金融政策を取り上げています(図表1参照)。

主な新興国では金融政策として9割程度が政策金利(利下げ)を活用する一方で、新興国の中央銀行による資産購入(APP)プログラムも20行程度見られます。IMFはAPPについて、為替の減価が限定的でありながら国債利回りの低下を促すとして前向きな評価をする反面、出口戦略を含めリスクを継続的に評価していく必要性を指摘しています。

 

 

どこに注目すべきか:新興国債券購入、市場機能、国債引き受け

日欧米をはじめ先進国では非伝統的(伝統的は政策金利)というよりは主要金融政策手段(ツール)となった感がある中央銀行による債券購入(主に国債)が新興国にも徐々に広がりを見せ始めていることをご紹介します(図表2参照)。ただ、新興国の債券購入には様々な政策目的があることから、市場への影響などに違いがある点に注意が必要です。

新興国のメインの金融政策ツールは依然政策金利であることは、コロナ後約9割の新興国中央銀行が採用したことでも明らかです。新興国の政策金利に利下げ余地が大きかったこと、インフレ率も(例外はあるが)概ね低水準なことなどが政策金利の引き下げを後押ししたと見られます。

IMFの集計では18の新興国中央銀行が債券購入政策を実施したと述べています。ただ目的を見ると大きく3つのタイプに分けられます。

まず、先進国の量的金融緩和(政策金利がゼロ近辺のため国債購入で量を供給し長期金利低下を意図する)同様の運営がポーランド、ハンガリー、チリなどに見られます。なお、ポーランドの政策金利は現在0.1%です。

政策金利が十分にプラス(もしくはゼロ金利)でも、コロナの混乱で上昇してしまった金利を調整する(市場機能)目的で債券も購入されました。具体的には、インド、南アフリカ、インドネシア、フィリピンなどがあげられます。

最後のタイプは、正直に財政赤字のファイナンス目的と明確に説明したうえで中央銀行は国債を購入しているケースです。具体的にはガーナ、グアテマラ、インドネシア、フィリピンの4ヵ国です。調達先の「市場」を見ると発行市場もしくは発行市場と流通市場の併用ですが、発行市場からの調達はタブーとされている中央銀行による国債引き受けです。

新興国の債券購入は、ほとんどの場合コロナの影響で導入されましたが、IMFは(意外なほどに)新興国の債券購入政策に好意的な評価をしています(為替介入には否定的)。ただし、債券購入政策の問題は中央銀行の信用維持と出口戦略で、特に期限を定めない債券購入政策に警戒感を示しています。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
シニア・ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●投資信託は値動きのある有価証券等に投資するため、基準価額は変動します。外貨建資産の場合は為替変動リスクもあります。したがって、投資者の皆さまの投資元本が保証されているものではなく、基準価額の下落により損失が生じ、投資元本を割り込むことがあります。運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性、特定の目的への適合性を保証するものではありません。記載内容は作成日現在のものであり、予告なく変更される場合があります。また、過去の実績は、将来の運用成果等を示唆・保証するものではありません。
●投資信託は預金等ではないため、元本および利回りの保証はなく、預金保険機構または保険契約者保護機構の対象ではありません。また、登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料の内容は、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を目的としたものではありません。
●当資料に掲載されている内容に関する著作権その他の知的財産権は、原則として、当社、ピクテ・グループまたは正当な権利者に帰属します。無断での使用、複製、転載、改変、翻訳、配布等は禁止されています。マーケット・データのご利用に関する詳細は、当社ウェブサイト 「会社情報」の「運用・方針等」内の「マーケット・データ利用規約」をご参照ください。

手数料およびリスクについてはこちら



関連記事


日銀、3月会合で示したことと、示さなかったこと

FOMC3月会合の注目の3点と、議長の意外な発表

中国、底堅い年初の主要経済指標と今後の注意点

米2月CPI、市場予想通りながら注意点もみられた

日本の25年10-12月期GDP上方修正と今後の展望

2月の米雇用統計、どこまで悪いとみるべきか