Article Title
インフレ率の一過性の上昇に対する考え方
梅澤 利文
2021/10/04

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー

概要

欧州中央銀行(ECB)主催のフォーラムで、日米欧の中央銀行総裁が金融政策について語りました。注目はインフレ動向で、基本的に各総裁は最近のインフレ率上昇が一過性と認識しています。しかし思うように下がらないどころか足元上昇圧力を強めるインフレ率に苛立ちさえうかがえました。また、インフレ率上昇の影にエネルギー価格の上昇が見られます。



Article Body Text

ECBフォーラム:主要国・地域の中央銀行総裁がインフレ率を巡って討論

欧州中央銀行(ECB)主催の金融シンポジウム「ECBフォーラム」が2021年9月28日、29日にオンライン形式で開催されました。

2日目の討論会には米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長をはじめ、ECBや日本銀行、イングランド銀行(英中央銀行)の各総裁が参加し、金融政策やインフレ率の動向などを議論しました。

どこに注目すべきか:ECBフォーラム、インフレ、一過性、天然ガス

欧州中央銀行(ECB)主催のフォーラムで、日米欧の中央銀行総裁が金融政策について語りました。注目はインフレ動向で、基本的に各総裁は最近のインフレ率上昇が一過性と認識しています。しかし思うように下がらないどころか足元上昇圧力を強めるインフレ率に苛立ちさえうかがえました(図表1参照)。また、インフレ率上昇の影にエネルギー価格の上昇が見られます。

まず、インフレ率全般についてはFRBのパウエル議長のコメントを振り返ります。討論会でパウエル議長は足元のインフレ率の上昇は供給制約と非常に強い需要が招いた結果で、全て経済再開に伴うものと述べています。したがって、それには始まりと途中、終わりがあると説明しています。やや苦しい説明にも聞こえますが、インフレ率上昇は一過性であるとの姿勢を維持しているようです。

しかしながら、パウエル議長は配送の遅れなど供給網の問題が改善せず、少し悪化しているのは苛立たしいとも指摘している点が注目されます。供給要因による物価上昇の長期化に内心穏やかではないのかもしれません。

パウエル議長は8月のジャクソンホール会議で金融緩和の長期化を示唆しました。その時はトリム平均(物価指数の構成項目のうち変動が大きい項目を取り除いて算出)などを示して、物価は落ち着いていると説明しました。しかし、通常であれば極端な変動項目を除いているため安定的に推移することが多いトリム平均が上昇しています(図表1参照)。供給要因による物価上昇には金融政策だけでは対応できない側面も想定されるだけに、苛立ちが続きそうです。

ECBのラガルド総裁は基本的にパウエル議長同様にユーロ圏のインフレ率上昇は一過性と説明しています(図表2参照)。さらにラガルド総裁はインフレ率上昇が経済全体に広がっている兆候はなく、中期的には継続しない一時的な供給ショックに対し過剰な反応をしないと述べ、緩和的な政策の維持を示唆しました。

ただ、英国も含め欧州では天然ガス価格の急上昇に直面しています(図表2参照)。英国の送電施設火災により発電需要が高まるという短期的な要因もありますが、各国が脱炭素に向かう中、発電燃料を石炭や石油から温暖化ガスの排出が少ない天然ガスに切り替えていることが最近の天然ガス価格上昇の背景と見られます。再生可能エネルギーへの切り替えに比べ、石炭などの使用を停止する動きが早すぎたというバランスの問題なのかもしれません。

ラガルド総裁はエネルギー価格の上昇以外に、ドイツの税制変更などテクニカルな要因もインフレ率を押し上げたと説明し、一過性のインフレ率上昇が自身の想定より長いことは認めつつも、金融引締めを急がない考えです。ただ、長期化するインフレが賃金上昇を加速させることになりはしないかに注意を払っている様子で、今後の注目点となりそうです。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら



関連記事


7月米CPIと金融政策の今後の展開

ブラジル、インフレ率低下の明暗

インド中銀、タカ派姿勢を示す

強かった7月米雇用統計の解釈

OPECプラス、やはり小幅増産にとどまる

豪中銀の政策金利は定められた軌道を巡るわけではない、とは