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盛り上がる1月の米雇用統計に、若干の注意
梅澤 利文
2026/02/12

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概要

2026年1月の米雇用統計では、非農業部門の就業者数が市場予想を大きく上回り、失業率も4.3%と低下した。特に教育・医療部門の雇用増が顕著で、建設や小売も回復傾向だったが、情報や金融部門は雇用減が続いた。賃金も堅調に伸びているが、雇用コスト指数の伸びは鈍化し、労働市場の回復には一部やや懸念も残る。全体として米労働市場は堅調ながら、今後の動向には注意も必要だろう。




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1月米雇用統計は非農業部門就業者数が大幅に増加するなど全般に堅調

米労働省が2月11日に発表した1月の米雇用統計で、非農業部門の就業者数は前月比13.0万人増と、市場予想の6.5万人増、前月の4.8万人増(速報値の5万人から下方修正)を上回った(図表1参照)。民間部門のみの就業者数は前月比17.2万人増と前月を大幅に上回った。

1月の失業率は4.3%と、市場予想、12月分(ともに4.4%)を下回った。23年から25年にかけて続いた緩やかな上昇基調は落ち着きつつある。

1月の平均時給は、前月比0.4%増と市場予想の0.3%増、前月の0.1%増(速報値の0.3%増から下方修正)を上回り堅調な伸びを示した。前年同月比では3.7%増と、市場予想、前月と一致した。

1月の米雇用統計で就業者数は伸びたが部門別の偏りに注意が必要

1月の米雇用統計は予想を上回る強さだった。就業者数は民間部門主導で大幅に伸びた。2025年12月の求人件数など、2月になって公表された他の米労働関連指標がやや軟調であったことから警戒感もあっただけに過度な懸念は後退した。米短期金融先物市場などに織り込まれた市場の利下げ見通しを見ると、6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での追加利下げの見込みが低下するなど市場にも影響を与えた。政策金利の動向を反映しやすい2年国債利回りも前日比で0.1%程度急上昇した。しかし、時がたつにつれ前日からの上昇分は半分程度に縮小した。米労働市場の急回復を消化しきれていない面もあるようだ。

1月の米雇用統計の内容を確認しよう。

まず、就業者数の伸びを部門別にみると(図表2参照)、1月に回復が確認される主な部門は教育・医療が13.7万人増と突出している。同部門の伸びを過去10年でみると月平均で約4.5万人、昨年1年間に限っても約5.8万人と、雇用の伸びを支えてきた部門であることに間違いはないが、1月の数字はやや高いように思われる。

他の部門ではデータセンターの建設ブームを受け建設業でも雇用が伸びた。また、年末商戦の序盤が堅調だった小売部門は25年12月の低調さから1月は回復した。一方で、図表にはないが情報部門や金融部門は1月も雇用の伸びがマイナス圏で、両部門のマイナス幅は拡大するなど軟調だった。1月の就業者数の全体の数字は伸びたが、部門別の広がりには疑問も残った。

失業率のじり高傾向に収束の兆しも見えるなど堅調な内容だった

1月の米雇用統計で労働市場に最も安心感を生み出したのは失業率の低下だろう(図表3参照)。昨年12月のFOMCで示された26年の失業率の見通しは4.4%、長期見通しは4.2%であった。1月の失業率の4.3%は水準として適正だ。ただし、図表3にあるように、失業率は23年前半から上昇傾向だった。25年11月の4.5%をピークに、2ヵ月鈍化が続いたことで、上昇傾向に対する懸念はやや後退したとみられる。

そのうえ、労働市場の活況度を反映しやすい労働参加率(16歳以上の人口に対する労働人口の割合)が上昇する中での失業率低下を好意的に評価する声もあるが筆者も悪いとは思っていない。

ただし、求人件数などに反映される労働需要については盛り上がりに欠ける一方で、解雇も比較的抑制される中での失業率の安定では、懸念が完全に払しょくされたとは言い難い。米労働省が発表する求人件数は先週発表された最新のものでも12月分とやや古いので、求人サイトが算出する同様の高頻度求人指数をみると、求人動向は昨年11月~12月は回復傾向だったが、年初からはやや伸び悩んでいる。仮に求人数が失業者数を十分にカバーできなければ失業率が再上昇する可能性も考えられる。もう少し様子を見たい。

米雇用統計で示された賃金データは堅調で、1月の平均時給は、前月比0.4%増と市場予想の0.3%増を上回った。賃金の上昇は労働市場の回復を示唆している可能性がある。

ただし、時期はずれるが、2月10日に発表された25年10-12月期の雇用コスト指数(ECI)は前期比で0.7%増と、市場予想、前期(ともに0.8%増)を下回り、賃金上昇圧力の鈍化が示された。繰り返すが、米雇用統計の賃金データである平均時給は1月分で、ECIは昨年10-12月分でずれはある。ただし、単月の改善で賃金動向を語るべきではないだろう。

11日に発表された米雇用統計は網羅的な指標であり、米労働市場の動向を知るうえで重要であると筆者も考えている。ただし、今回同時期に発表された他の指標との方向性の違いには一応の注意は必要だろう。もっとも、米労働市場の大幅な悪化は示唆されていないことから、米国の年内の利下げ回数は、労働市場の調整が軽微なら、1回程度で済む可能性もあると筆者は考えている。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
シニア・ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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